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ルネッサンスへの助走と、フィレンツェの商人達。 n.2 - 輸入毛織物組合の巻。

今回は第2回です。前回はこちらから。

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組合所属の政治家達の間で、議題に上がっている。

この御堂は、かなり古いからメインテナンスが必要ではないか。

工房が増え、国の人口も増えている。
そろそろ建て替える時期なのではないか。

財を築いた、ベニスの商人ならぬフィレンツェの商人。ベニスの商人の主人公は高利貸しのユダヤ人だが、フィレンツェの商品はフィレンツェ人でキリスト教信者。

儲けたお金で私利私欲に走ると、最後の審判の日に、神からの裁きに合い奈落の底に突き落とされてしまう。国や民衆が喜ぶことに、還元しようではないか。

輸入毛織物組合が、率先してサっと挙手します。

私たちにやらせてください。

さぁ!フィレンツェ一大事業のはじまりです!

輸入毛織物組合の大事業

大聖堂の目の前に、白と緑のコントラストが特徴の、八角形の洗礼堂が建っています。この洗礼堂のスポンサーとなったのが、1100年代後期にはすでに存在していたイタリア語で「カリマラ(Calimala)」と呼ばれる輸入毛織物組合です。

空間の美しさとは?
にも登場した洗礼堂。

老舗組合だけあり、フィレンツェ産業総連盟のような役割も担っています。

洗礼堂に自然光を取り入れるために改築したり、ルネサンスの幕開けと言われている、1401年の洗礼堂の扉のコンクールの主催者でもあります。

お前は、神を信じるか?
はい。もちろんでございます。
では、お前の心を試してみよう。
お前は、自分の息子のイサクを殺せるかな?

旧約聖書のお話しです。悪代官のようなセリフを発するのは神様です。アブラハムの信心深い心が本当か試しています。

生贄になる羊を脇に寄せ、
愛する我が息子よ!
息子の首に刃を向ける。

刃を突こうとしたその瞬間!
天から天使が降りてきて、

待て!

アブラハムを止める。

これはコンクールのお題『イサクの犠牲』のエピソードです。

名の馳せた職人達がこぞって作品を発表し、最終選考では2点の作品が残ります。

ロレンツォ・ギベルティとフィリッポ・ブルネッレスキの一騎打ち。

左側がロレンツォ・ギベルティ
右側がフィリッポ・ブルネッレスキ

みなさんなら、どちらを選びますか?

勝者!ロレンツォ!

自信たっぷりだったフィリッポ、敗北。

なんだって!? ロレンツォが選ばれただと?!
フィレンツェなんか、もういいや。
ローマへ行こう。

以前にも登場した、フィリッポ・ブルネッレスキ。傷心のままフィレンツェを離れ、ローマへと移ります。

数年後に、フィレンツェのクーポラ建造のコンクールが開かれ、そのときも目の上のたんこぶ的存在のロレンツォとごたつきますが、のちにフィリッポ・ブルネッレスキの代表作となるクーポラが完成します。

輸入毛織物組合に戻りましょう。

洗礼堂のメインテナンスやコンクールの主催者となった輸入毛織物組合。扉の上や、彫刻の台座など、重要な箇所に組合のシンボルが堂々と掲げられています。

フィレンツェへ訪れることがあれば、どこにあるか、探してみてくださいね。

鳥の種類は鷲(わし)。「強さ、勇気、遠眼、不死などの象徴」のほかに、キリスト教で福音記者ヨハネとしても表されます。

キリストに洗礼をする聖人の名もヨハネ。

輸入毛織物組合は、自分たちのシンボルを決めるときに、ふたりのヨハネも掛け合わせて、鷲を掲げたのかもしれません。

アップで見ると、すごく強そうです。

ガッツポーズしているみたい。

鷲ががっしりと足で掴んでいるものは、トルセッリと呼ばれる巻物です。

巻物には、価格、寸法、輸入元、輸出先、工房名、組合の検印が押されています。これが中世時代になされていたということに驚きます。

ミケランジェロ丘よりさらに高台に、洗礼堂と同じような白地に緑で装飾された、サンミニアートアルモンテ教会が建っています。

現在の姿は輸入毛織物組合が改築したものです。巻物をもつ鷲が、高々堂々と教会正面に君臨しています。

輸入毛織物組合の本社

輸入毛織物組合の本社は、現在は薬局になっています。

フィレンツェの政治の中心はヴェッキオ宮殿。宮殿の建つシニョーリア広場の手前に本社はありました。

さすがは老舗の組合、国会議事堂のお膝元にあるという感じです。

薬局の入っている建物全体が本社だったので、建物の四方の壁は、ぐるりと鷲のシンボルで囲まれています。目立たないですが歴史の生き証人(?)です。

観光案内のようですが、地図にするとこんな感じです。

輸入毛織物組合がフィレンツェの大切な建物のひとつである洗礼堂のスポンサーとなったのならば、ほかの大組合はなにをしたのでしょうか!?

つづく

ピン!ときた方もいらっしゃるかもしれませんね。

最後までお読みくださいまして、
ありがとうございます!



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