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ローマにある、歴史の玉手箱。Palazzo Massimo - n.2/2

大理石から、フレスコ画に移っても、これですもん。海中での海戦を見ているようで、躍動感に満ちています。

タコが、魚とエビを仕留めているシーン。魚はウツボかしら。歯を向いて抵抗しているのを、タコがむんずと掴み押さえ込み、さらに、エビにまで足を伸ばしています。

魚のモチーフは良く登場しますが、こちらは釣りの様子。船の先端からひき網漁をしていたり、オールを漕いだり、イルカに乗っていたり(!?)、イキイキと描かれています。

展示されている、ひとつひとつに力があり、見ていて、とても楽しいです。

かと思えば、ニッコリ顔の可愛らしいサイらしき動物。

ギリシャ人やローマ人の、想像力の豊かさには、舌を巻きます。そして、それに伴う、充分な技術。ほんの一部を見ただけでも、いかに文化が高かったのか、容易に想像できます。

こんなに美しい赤のお部屋もあります。個人宅の小部屋。

古代ローマ時代には、まだ『絵画&額縁』という装飾は存在しません。真っ白い壁を四角に分け、直接に塗っていきます。

フレスコ画と似ていますが、蜜蝋に顔料を溶かし、熱で固まる蜜蝋を熱で溶かしながら描く、イタリア語でエンカウスト(encausto)と呼ばれる技法が用いられています。

蜜蝋がベースなので、色に光沢があるのも特徴です。

円柱に影があり、立体的に見えるように描かれています。すごいです。古代ローマが崩壊すると、絵画や彫刻、ブロンズ像の技術はすっかり失われ、ルネッサンス時代まで待たなければなりません。

人間は進化する? このような卓越した作品を目の当たりにすると、人間は退化することもありえるのだと、身につまされるようです。

さて、最後に楽園へとご案内しましょう。この部屋は360度、四方の壁が、木々に覆われ、果物が実り、花々が咲き、鳥が飛び交っています。

人の手による絵なのに、この空間に入ると、まるで自然に身を置いているようで、空気まで美味しく感じます。

ローマ郊外に建っていた、ヴィラ・ディ・リビア(Villa di Livia)で発見されたものです。リビア・ドルシッラ。古代ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの奥様の邸宅です。

発見されたのは、1863年のこと。邸宅の東側のお部屋で見つかりました。

初代皇帝の時代ということは、紀元前の絵が、1800年以上の時を経て、再び、陽の光を浴び、人間世界へ現れたということです。

人間の一生なんて、ほんの一瞬です。そして、わたしたち人間は、その一瞬を繋げて、何世紀も生き続け、いまに至ります。

あまりにも広大過ぎて、時間が把握できなくなります。ルネッサンス時代の絵が、つい最近に思えてしまいます。

花があらゆる方向に向いていて、花びら一枚、葉っぱ一枚、とても丁寧に描かれています。

バラの花と、マーガレットかしら。そこにスズメとハトのような鳥が留まっています。

皇帝の奥様のお部屋の装飾を任せられたほどなので、かなり腕の良い職人だったのでしょう。修復はしていますが、それでも、当時の筆のタッチが分かるようです。

風の流れに合わせてなのか、鳥が留まったからなのか、枝がしなっていて、動きがあります。

静止画のような止まったような絵ではなく、動きがあるから、この部屋にいると心地がよいのかもしれません。

たわわに果物が実り重いのでしょう、枝が下へと傾いています。

かと思えば、果実を食べる鳥。

ざくろの実。昔からあったんですね。

鳥が枝に留まろうとしているのか、羽を広げ飛んでいる瞬間を捉えています。鳥の翼の研究をしていた、レオナルド・ダ・ヴィンチのずっと先駆けです。枝のしなっている描写も、まるで写真で捉えたようです。

緑をベースに、鮮やかな草花や果実の色とのコントラストがよく映えます。

邸宅から剥がして、修復をしたのち、1998年からローマ国立博物館にて展示されています。

皇帝の奥様リビアが自然を愛していたのが、よくわかります。

今も昔も雑踏と騒音のローマの生活に疲れ、郊外に行けぬ時など、きっとこの部屋で自然の疑似体験をして、心を休めていたのでしょう。

テルミニ駅のすぐ近くにある、ローマ国立博物館。いかがでしたでしょうか? ボクサー、石棺、楽園。この3部屋を訪れるだけでも、十分に価値のある博物館です。

第一回目の冒頭でも書きましたが、ここは、たまに訪れては、感嘆をもらしつつ、恍惚に浸る、お気に入りの場所です。ぜひ、みなさまも機会があればお立ち寄り下さい。

今回は前回から間が空いてしまいました。実は数日前から日本へ滞在しています。

イタリアへはクリスマス前に戻るので慌ただしいですが、久しぶりの日本を楽しんでいます。

今日はクロアチア戦を見たので寝不足です。負けてしまいましたが、いい試合でしたね。楽しませてくれて、ありがとう。

次回は職人インタビューのシリーズを投稿予定です。少し間が空くかもしれませんが、お待ちください!


最後までお読みくださり、
ありがとうございました。
また次回にお会いできたら嬉しいです。

Museo Nazionale Romano
Via Sant'Apollinare, 8 - 00186 Roma
火曜日〜日曜日 11:00〜18:00

切符:8ユーロ
1枚の切符でTerme di Diocleziano、Palazzo Altemps、Crypta Balbi、Palazzo Massimoの4箇所を訪れることのできるタイプは1週間有効で12ユーロ。



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