見出し画像

機械力学から見る剛体運動論 -1-

大学の機械工学分野を専攻すると必ず通るであろう科目のひとつに「機械力学」があります。

機械力学は系の機械動作で生じる力を扱う学問です。カムや歯車などの機械要素の力の伝達を扱う機構学、センサーやアクチュエータなどに関する自動制御学など幅広い分野に関係します。

高校物理の延長線上の内容も多いため、大学では比較的に序盤に登場する科目でもあります。計算は高校の時に比べて複雑にはなりますが、最後まで計算を怠らなければ十分に扱うことのできる内容です。

今回も数回に分けて書いていきますが、最後までお付き合い頂けたら幸いです。

機械的運動と動力学

機械力学はニュートンの力学で言うところの「剛体」の力学が主です。つまり、変形が起こらないことを前提として、物体(剛体)の運動を扱います。

機械力学で扱う問題は「静力学」「動力学」に大別されます。静力学は慣性的な運動が十分に小さい現象のことで、物体に働く力の釣り合いから挙動を求めます。一方で、動力学は物体の慣性を含めた物理的な運動に着目します。

静力学における力のつり合いとは、物体に多数の力が働いても平衡が保たれて、その物体が動かない状態のことを指します。つまり、力とモーメント(回転)の合力がゼロになることを意味します。

一方で、動力学では物体に掛かる力と物体の加速度を関係付けて、物体の運動を求めます。ニュートンの第二法則(運動の法則)を使います。

注意点として、力をはじめとした一般的な物理量は「スカラー量」「ベクトル量」の2種類に分かれます。前者は質量や面積など大きさだけの情報で表され、後者は力や加速度など大きさと方向で表されます。

機械振動の概要

機械力学で扱う系(システム)は機械内部で動く範囲が限定されているため、これらの動力学の多くは「機械振動」にあると言えます。

そとそも振動とは物体が一定の時間間隔において、平衡位置を中心として、繰り返し変動を起こす現象を指します。一定間隔で設けた区間を一定時間で物体が往復するような状態です。

例えば、ばねにおもりをつけた後に引張りを与えて離すと、おもりが上下に振動します。振動はこのように質量をもつおもりとばねで構成される系として扱うのが一般的です。

機械振動はねじの緩みを起こしたり、機械性能に影響を及ぼすなど、機械の重大な損失に繫がります。

このような機械振動を抑えるために、様々な工夫が施されています。例えば、自動車は走行時に発生する振動を抑えるために、ダンパーや防振ゴムなどを前提とした車体設計に基づいています。

固有振動と共振

機械振動の中でも、外力を加えなくても振動を引き起こす場合があります。このような振動を「固有振動」と言います。特に、物体の固有振動に類似した入力荷重が掛かると「共振」を引き起こします。

例えば、橋構造が大きく歪みながら振動して崩落する現象が、過去に何度か報告されています。これが共振に相当します。

共振を考える際の重要な作業が「固有振動数」を求めることです。橋構造の他にも、共振により洗濯機がガタガタと大きな音をたてて揺れることがあります。致命的な破損に繋がることもあるため、対策が必要です。

固有振動数を求める過程のひとつに「固有値計算」があります。数学的な話になりますが、今後で登場する機会もあると思いますので、その際に詳細を示します。

おわりに

今回は機械力学という科目について、基本的な概要と用途を説明しました。高校物理(力学)の知識と数学の知識が必要になりますが、大学で習う科目としては簡単な部類ではあります。

次回は本格的な計算を交えながら、様々な機械振動について考察していきます。

-------------------------
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
-------------------------

⭐︎⭐︎⭐︎ 谷口シンのプロフィール ⭐︎⭐︎⭐︎

⭐︎⭐︎⭐︎ ロードマップ ⭐︎⭐︎⭐︎


この記事が参加している募集

学問への愛を語ろう

物理がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?