連続体力学に基づいた物理計算の話 -5-
物理学では「質点」と「剛体」と「連続体」という3種類の物体の扱い方が存在します。
特に、連続体は物体の質量、運動(並進と回転)、そして形状変化(変形)を考慮します。質点や剛体はより扱い方を簡略化した存在と言えます。
こうした物体の変形を扱う学問として「連続体力学」があります。連続体力学は固体だけでなく、流体の分野にも適用可能な古典的学問でもあります。
前回は「コーシー応力」について書きました。連続体力学の中でも代表的な物理量です。コーシー応力テンソルを利用してミーゼス応力(降伏基準)に拡張することにも触れました。
今回は平衡方程式(力のつり合い式)と荷重境界条件式について、変形問題を見る上で基本と言える「変位・速度・加速度」の扱い方についてです。変形を考え上で重要な「状態」の分類についても追記しました。
内力と外力に関する条件式
コーシー応力テンソルを物理法則に取り込む場合に、コーシー応力テンソルが満たすべき条件式を示します。
運動の法則によれば、力のつり合いを満たす物体内では任意の場所の力のつり合いも成立します。つまり、連続体内部のコーシー応力テンソルは「平衡方程式」と「荷重境界条件式」を満たします。
連続体の運動(変形)は、運動前後の「状態」の相対量で決まります。例えば、ある物質点の変位とは、物質点の運動前後の位置座標の相対量を指します。
運動時の「状態」について(連続体力学では「配置」と呼びます)、基本的に「基準配置」と「現在配置」があります。相対量を考える場合は、この2通りのどちらかの配置を基準に他方の配置を比較します。このとき、基準側を「参照配置」と言います。
非線形問題は段階的に変形状態を追跡して、解であるつり合い状態を逐次的に求めます。このとき、1段階前のつり合い状態を参照配置とすることが多いです。
物質座標と空間座標に対する状態量
実際の力学問題を解く上で、コーシー応力テンソルは現在配置を参照する物理量であることが一般的です。
運動が定まれば、各物質点の移動量から「変位」と「速度」と「加速度」を求めることができます。変位は現在の位置ベクトルから初期の位置ベクトルの差分で決まります。同様に、速度や加速度は各種運動に対する時間変化率(微分)で決まります。
物質表示と空間表示の状態量(ベクトル)では、独立変数(関数)が異なります。連続体の変形については、任意の2点の運動を取り出して、相対的な位置関係の変化を考えます。このとき、上記の2通りの見方(両方)が重要になります。
おわりに
今回は変形問題における「力」と「状態」に関する扱い方を書きました。これまでの通り、物体の状態は状況に応じて適切に区別されます。
次回は変形問題を直に表す物理量(応力・ひずみ)について、テンソルを交えた記述を展開していきます。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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