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1日5分の継続が日本を変える 〜ケーキの切れない非行少年たちを読んで〜

本屋で購入した「ケーキを切れない非行少年たち」という書籍。いつかテレビで紹介されていたのか、なんとなく自分も記憶にある一冊である。

非行少年(少女)と一言で言えばそれまでだが、そこに隠された別次元の背景に光を当てている。今回はそんな一冊を紹介したい。

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著者について

著者は精神科医で、公立精神科病院の児童精神科医、少年院の法務技官として勤務されていた。児童精神科医の頃に診察した発達障害を持つ少年との出会いが、著者のキャリアに大きく影響を与える。

その少年は再三にわたり非行を重ねていたが、結論から言うと「認知機能」が弱いために、従来の診察方法では対応できない問題を抱えていた。基本的な治療で用いられる「認知行動療法」は、認知機能に問題が無いことを前提としていたため、発達障害や知的障害に問題がある場合の効力は立証されていない。

ベストな治療法を見出せず、著者は悶々とした思いを抱くように。この経験が、非行少年と認知機能の関係に触れる契機になる。医療少年院と呼ばれる矯正施設での経験である。

発達障害や知的障害を持つ子どもたちが加害者となることを、著者は「教育の敗北」と呼んでいる。それは、本来守るべき発達障害や知的障害を持つ子どもたちを、最悪な結末に導いてしまうことを揶揄しての言葉でもあると思われる。

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認知機能の弱さが非行を生んでいる

タイトルにある「ケーキが切れない」という文言は、著者が紙に円を書いてケーキに見立てて、3等分に切り分ける問題を受刑者に出題した時の体験である。実際に表紙にも受刑者が書いた答えが掲載されているが、一目で信じがたい答えであることがわかる。

ケーキの切り方

著者はこの事実から、認知機能が弱いことで犯罪を自力で抑止することができないという可能性に注目した。実際に個人差はあれど、実際に非行少年たちを観察していて、著者は5つの特徴があるという。

・認知機能の弱さ:見たり聞いたり想像する力が弱い。
・感情統制の弱さ:感情をコントロールするのが苦手。
・融通の利かなさ:何でも思いつきで行動する。
・不適切な自己評価:自分に問題があると考えない。
・対人スキルの低さ:コミュニケーションが苦手。

ただ一方で、認知機能が弱い人の全てが非行に走るかというと、そうではない。その分岐点になるのが、学校などの教育の現場で認知機能の弱い人のケアができるかどうか、ということだと述べている。

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学校で確実なケアを行うこと

著者が言うには、小学2年生の段階で彼らは勉強についていけなくなり、中学生で決定的になるのだそう。初見では勉強不足ぐらいの印象にしかならないが、これが認知機能の弱さに起因しているのであれば、それに準じたケアが必要だ。

ただ、実際は難しいというのが正直なところ。それには同感せざるを得ない。学校は一人ひとりを見ると言うにも限界があるので、どうしてもクラスという集団単位で勉強も生活もコントロールしようとする。

また、学校で知能検査を実施することもあるが、そこで仮に一部の検査で異常に低い結果が出たとしても、総合的に問題なければ見過ごされてしまう。そんな実用的な問題も抱えている。

実際にここまで因果関係を見出した著者はすごいと思うが、社会にどのように反映させていくかについては、まだ道半ばのようである。

自分もこの著書を読むまで、この仮説を考えたことすらなかった。まだ世間的な認知度も低いように思う。

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1日5分で日本を変える

認知機能を鍛えること。これが1日5分で日本を変えると標榜する理由だ。認知機能を構成する5つの要素(記憶、言語理解、注意、知覚、推論・判断)にそれぞれ対応する行動(覚える、教える、写す、見つける、想像する)のトレーニングを行うというもの。

現在の学校教育では、認知機能の躓きをもつ児童には何らかの対応もできていないのが現状である。そこで、朝の会などのホームルームで時間を5分ほど設けて日々実行していくことが鍵となる。

この案には自分も賛成であり、集団単位で進めるからこそ、取り入れやすい手法であると思う。やることも決して難しいことではなく、教員側も特に事前準備は必要ない。実用化に向けて動いてくれることを期待したい。

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おわりに

今回のことで、非行少年に対する見方というか、考え方を変えるキッカケになれたと思う。実際に犯罪者との個人的な関わりは無いものの、実際にこのような相関関係がハッキリしている以上、教育的な観点で対応策をきちんと練られることを期待したい。

また、教育は学校に限った話ではないので、少しでもこの事実が市民の中で定着されていければ、少しは違う結果が現れるかもしれない。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。なるべく毎日更新する気持ちで取り組んでいきます。あなたの人生の新たな1ページに添えたら嬉しいです。何卒よろしくお願いいたします。

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