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【#12】材料力学の強化書 〜応力ーひずみ線図を理解する〜

今回のトップ画像はベルギーの首都のブリュッセルにある教会です。数百年という長い歴史を誇ります。

さて、材料力学の話に戻りましょう。

前回は材料力学で登場する単位系の話をしました。実際の設計では数値計算になるので、この単位系を間違えてしまうと、見当外れな答えを出してしまいます。それを未然に防ぐための単元でもありました。

今回は物体(材料)の基本的な特性を調べる上で欠かせない、応力ーひずみ線図について説明します。材料ごとに固有の応力ーひずみ線図が存在するので、各々の特徴をきちんと捉えてみましょう。

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材料試験

物体(材料)がどの程度で弾性変形から塑性変形(永久変形が発生する状態)に移行するか、またはどの程度で破壊するかを知ることは、構造物の設計において非常にだいじなことです。

それらの特性は応力とひずみの関係を表す「応力ーひずみ線図」から把握することができます。応力ーひずみ線図は材料試験を行うことで得られますが、その材料試験の代表例が引張試験(下記写真を参照)です。

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上下端を掴まれた試験片に作用する引張荷重と試験片の伸びの関係から、応力ーひずみ線図を求めます。

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応力ーひずみ線図の概要

引張試験を通じて、応力ーひずみ線図が得られることが分かりました。ここからは一般的な金属の応力ーひずみ線図を見ていきます。下記の2種類の応力ーひずみ線図を理解できれば良いです。それぞれの地点で用語があります。

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左側は軟鋼(炭素を一定量含んだ鋼材)における応力ーひずみ線図です。原点から上降伏点までを弾性領域(応力が直線的に上昇する)と明確に規定しています。フックの法則に従う領域で、引張試験の場合は直線の傾きはヤング率(縦弾性係数)で定義されます。

上降伏点の先は弾性領域から塑性領域に移行します。軟鋼の場合は、応力が上降伏点から下降伏点まで一気に下がり、そこからは応力が上昇せずにひずみだけが進行します。これは軟鋼特有の特性でもあります。

塑性領域における最大の応力を示す点を「引張強さ」と呼びます。ここでは試験片が大きく変形しており、特に疲労限度や硬さと強い相関があります。

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右側はアルミニウム合金などの一般的な金属の応力ーひずみ線図です。先程の軟鋼に比べて明確な降伏点が存在しません(緩やかに塑性していきます)。

除荷した後に残る塑性ひずみ(永久ひずみ)が0.2%になる時の応力を「耐力」と定義します。耐力は軟鋼で言うところの降伏点と同様な意味合いで利用し、原点から耐力までを弾性領域と見做します。

一般的に、金属は上記のように塑性領域を伴います。このことから「延性材料」と呼ばれます。一方で、塑性変形がほとんど発生せずに破壊する材料は「脆性材料」と呼ばれます。主にガラスや鋳鉄が挙げられます。

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真応力と真ひずみ

ここまで説明した応力ーひずみ線図は、公称応力と公称ひずみを元に線図を作成しています。公称応力とは荷重を変形前の断面積で除算した値です。変形が進んで断面積が変化したとしても、変形前の断面積を基準にしています。公称ひずみについても変形量を単純に変形前の長さで除算した値となります。

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しかし、変形が大きくなると断面積や長さが大きく変化してきますので、この計算方法では力学的な矛盾が生じてきます。これを真の意味から応力とひずみを計算したものを「真応力」「真ひずみ」として定義します。

真応力の算出式:$${{\sigma}_t={\sigma}_n(1+{\epsilon}_n)}$$

真ひずみの算出式:$${{\epsilon}_t=ln(1+{\epsilon}_n)}$$

ここで、添字(t)は公称応力(ひずみ)、添字(n)は真応力(ひずみ)に対応します。

理論計算で使われる応力やひずみは、一般的に真応力と真ひずみです。複雑な変形をコンピューターシミュレーションから計算する有限要素法においても、この真応力と真ひずみが使われます。

公称応力と公称ひずみ、真応力と真ひずみは、実験と解析のそれぞれの場で使われる数値と言えます。その橋渡しとして、上記の変換式が存在するのです。

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おわりに

今回は金属を対象に基本的な応力ーひずみ線図を見てきました。弾性領域は線形なのでまだ大きな違いは出てきませんが、塑性領域では材料ごとに特有の挙動が現れてきます。

今回は最も身近な例として金属の場合(2種類)を見てきましたが、他の材料についても、興味があれば調べてみると良いと思います。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。

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