連続体力学に基づいた物理計算の話 -2-
物理学では「質点」と「剛体」と「連続体」という3種類の物体の扱い方が存在します。
特に、連続体は物体の質量、運動(並進と回転)、そして形状変化(変形)を考慮します。質点や剛体はより扱い方を簡略化した存在と言えます。
こうした物体の変形を扱う学問として「連続体力学」があります。連続体力学は固体だけでなく、流体の分野にも適用可能な古典的学問でもあります。
前回は連続体力学の位置付けの話をしました。変形の問題を数学的に表現するものとして「構成則」がありまして、主に物体(連続体)の応力とひずみを関連付けたりします。
今回はもうひとつの導入の話として「テンソル」について話をします。テンソルは物理的な情報の範囲を考慮した形の変数と呼ぶことができます。
テンソルの物理的意味
ある物理量が大きさに加えてn個の方向(情報)を持つとき、それをn階テンソルと呼びます。物理量の本質的な特性を知るための手段と言えます。
例えば、質量や温度などは大きさだけでその内容が定まります。方向は基本的に含まれません。このような物理量は「スカラー量」と呼ばれており、0階テンソルに分類されます。
一方で、力や変位などは大きさとひとつの方向が含まれます。このような物理量は「ベクトル量」と呼ばれており、1階テンソルに分類されます。
スカラー量とベクトル量については、物理学でよく登場する話として「速さ」と「速度」の違いが度々挙げられます(上記の説明を参照)。
さらに今後で登場する応力やひずみは、主に大きさとふたつの方向を含みます。行列として表すことが多いですが、これらは2階テンソルの扱いになります。
テンソルの表記上のルール
主に基底(正規直交基底)を交えて話を進めます。ベクトル(1階テンソル)について書いています。
総和規約に関するルールは独特ですが、長くなりがちなベクトルの演算を手短に書けるので便利です。クロネッカーのデルタや置換記号は何かと登場することが多い印象があります。
2階テンソルですが、任意のベクトルを別のベクトルに写像する線形変換作用素として扱われます。また、ふたつのベクトル量からひとつのスカラー量を作る機能もあります。
つまり、2階テンソルの理解は線形変換作用素としての機能を知ること、物理的意味を入出力されるベクトルから考えることが必要です。
テンソル積の定義は上記の通りです。最終的に2階テンソルは行列表現に帰着しますが、正規直交基底と2階テンソルの機能に基づいて、その成分を計算すると次のようになります。
$${{e_i}\cdot{Ae_j}={e_i}\cdot{(A_{kl}({e_k}\otimes{e_l}))e_j}={e_i}\cdot{(A_{kl}{\delta_{lj}}{e_k})}=A_{kj}({e_i}\cdot{e_k})={\delta_{ik}}A_{kj}=A_{ij}}$$
テンソルの扱い方については、今回はまだ導入部分ですので、次回以降も解説を続けることにします。
おわりに
今回はテンソルに関する扱い方の話をしました。連続体力学は物理量として扱う範囲が大きさだけに留まらないため、テンソルが理解に役立ちます。
今回は1階テンソルによる論理展開が中心でしたが、次回は2階テンソルからの深掘りを進めます。
特に、応力とひずみを繋げるには2階テンソルの扱い方は必須事項です。テンソルに関する重要度はより増していきます。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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