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連続体力学に基づいた物理計算の話 -1-

自分が主に専攻している材料力学の分野では、変形する物体を「連続体」と呼ばれる形態として扱います。

連続体とは、物体の位置と質量を表す「質点」や、物体の並進・回転運動を考慮した「剛体」に加えて、物体の変形を考慮した存在と言えます。

こうした物体の変形を扱う学問として「連続体力学」があります。連続体力学は固体だけでなく、流体の分野にも適用できる古典的学問でもあります。

今回はそんな「連続体力学」について、しばらく連載する形で話をします。初回は連続体に対する変形の問題の位置付けと、変形の問題を数式化した「構成則」を説明します。


力の変数の扱い方

まずは分かりやすいように、固有の物体(固体)を想起して、変形という物理現象を見ていきます。

変形を見る際の重要な視点として「力の変数」「運動学的変数」があります。まずは力の変数について。

物体内部における仮想的な断面に生じる「内力」を定義します。内力については以前も書いたように、垂直応力とせん断応力の2種類が存在します。これらを合力として表現したものが「表面力ベクトル」になります。

表面力ベクトルは位置は同じでも、断面の方向(断面に対する法線ベクトル)が異なれば、自ずとその内容は異なります。つまり、無数にある断面の取り方に応じた力のベクトルと言えます。

このような応力状態を整理したものが「コーシー応力テンソル」です。詳細は次回以降で説明します。

運動学的変数の扱い方

物体(固体)の変形・運動を考えるために、運動学的変数について見てみます。ここでは1次元の棒状の物体を想起します。

連続体力学では位置(点)について、物体内部の位置に着目した「物質座標」と物体外部の位置に着目した「空間座標」の2種類があります。

変形は初期配置から現在配置にかけての変化として捉えます。変形を無次元量として評価するには「ひずみ」が一般的に使われますが、他にも「ストレッチ」という表現があります。

以上の「力の変数」「運動学的変数」を繋げる存在を主に「構成則」と呼びます。具体的には応力とひずみを関連付ける数学的表現であり、実際の物理現象を力学モデルに落とし込んだ際に必要になります。

ちなみに、力と変位を繋げる存在は「運動方程式」になります。これも同じく力学モデルで登場する数学的表現と言えます。

変数同士の関連付け

応力やひずみの応答関数を表す「構成則」は、主に連続体内部の任意の点に対して設定されます。一方で、連続体力学を論じるには「点」の物理現象の他に「全体」の形を捉える必要があります。

点で扱うベクトルやテンソルは座標系次第で数値が変わります。座標系に依らないスカラー量(エネルギー)による定式化や、仮想仕事の原理から全体を物理現象を捉えていきます。

出典:https://japaneseclass.jp(仮想仕事の原理)

仮想仕事の原理は「点」の力学を「全体」の力学に拡張しますが、主に構造解析で使用される「有限要素法」に応用されています。

全体に拡張することは、積分(体積分)の操作に相当します。特に連続体力学の場合は変形を伴うため、積分領域が時々刻々と変化します。

おわりに

連続体力学は数値解析(主に有限要素法)のベースとなる理論(学問)です。初回は物理現象をどのように定式化して、どのように複数の式を繋ぎ合わせるかについて示しました。

次回は点の力学を評価する際に必要な「テンソル」について、定義や運用方法などを説明します。

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