エコな船底塗料 〜効率化と環境保全の両立に向けて〜
つい先日に日経新聞を読む機会があり、最新技術の話題も出ていたので、紹介することにします。
日本ペイントホールディングスが、海洋汚染を防ぐことを目的とした新しい塗料を開発したとのことです。国内で初の環境賞に輝くほどの大きなインパクトのある技術トピックです。
近年の海上輸送の増加に伴い、環境負荷の低減を実現できる船底塗料が求められてきました。そのニーズに真正面から応えています。同時に8%以上の燃費改善も狙えるとのことです。
海洋環境の背景について
従来の船底塗料は防汚剤が徐々に溶け出すことで、船の推進力を落とす海洋生物などの付着を防ぐものが主流でした。このとき、非常に小さな樹脂も一緒に溶けていくので、マイクロプラスチックの排出が問題視されてきました。
海洋汚染に関しては、プラスチックごみの問題がよく取り上げられますが、船底塗料のようなマイクロプラスチックも同じく悪影響を与えているのです。
近年では、海洋汚染防止に関する企業単位の取り組みが求められています。船体においては、燃費改善と環境負荷低減の両立が必須となっており、今回の技術はそんな難しい課題を達成したという形です。
防汚剤ゼロの船底塗料
日本ペイントホールディングスが開発した「アクアテラス」は、世界初の完全防汚剤フリーの自己研磨型防汚塗料で、重金属防汚剤、防汚活性物質やシリコンを一切含みません。
海洋環境に優しいだけでなく、船体に掛かる抵抗を減らすことで、二酸化炭素の排出量削減にも貢献します。ここが今回評価されたポイントです。
日本ペイントホールディングスは、塗料が形成する膜の分子構造を工夫して新たな機能を持たせる開発に数年前から取り組んでいました。加水分解によって塗膜表面を平滑に保ち、海洋生物が付着しにくくします。
新塗料の価格は高くなる可能性がありますが、コスト削減を進めれば実用化から5年間で数百隻規模の需要があると見ています。
環境保全と技術革新を求めて
世界経済のグローバル化によって、海上輸送のニーズは高くなっています。世界の船体数はここ10年間で2割も増加しているそうです。船底塗料の市場は年間で数千億円規模と言われています。
日本ペイントホールディングスの世界シェアは、現在のところ10%に届いていませんが、新塗料を足がかりに中長期的にシェアを上げていきます。
6年後には新塗料の実用試験を開始するとのことで、これからの課題も残されていますが、実用化すれば注目されること間違いなしの技術革新だと思います。
現状の海洋汚染の結果は変えられませんが、今回の技術をキッカケにして、またいつかの綺麗な海に少しずつ戻ってくれることを期待したいです。
おわりに
今回は新たな技術のトピックとして、環境負荷を低減する船底塗料の開発について紹介しました。
どの技術もそうですが、単に効率化を求めるだけの時代はもう終わったような気がします。効率化と環境保全の両面をクリアしていくことが、現在の標準的なハードルと言えそうです。
今後もこのような技術革新の話題を、定期的に提供できたらと思います。
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