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テキサス州 ビックベンド国立公園 | 謎の光、銀河鉄道の夜

あれはいったい何を見たのだろう・・・

狐につままれた気分とはまさにこのこと、星空の中を進むそれはまるで銀河鉄道そのものだった。


テキサス州ビッグベンド国立公園

アメリカ国内にはたくさんの国立公園がある。
気候帯によりそれぞれ特色があり、ダイナミックなアメリカの自然をそのままの姿で楽しむことができる。
テキサス州は2つの国立公園を有するが、そのうちのひとつビッグベンド国立公園へ行ってきた。

メキシコ国境沿いにあるこの広大なビッグベンド国立公園は、どこまでも平らなテキサスでは珍しい2000メートル級の山を有し、かつ光害が少ない星空のメッカでもある。

岩だらけの荒涼とした景色が広がる
岩山の陰に沈む夕日
少し高い場所に移動して地平線に沈む夕日を眺める
日没は8:30

この日はテント泊。時間を気にすることなく夕日や星空を楽しむことができた。
美しい夕日を西の空に見送ると、明るい星から順に姿を表す。1時間ほどで星空を楽しむことができるようになってきた。

折りたたみ椅子に腰掛け、のんびり星空観察を楽しんでいると、北の方角に光の列が進んでいくのが目に入った。


ブレブレの写真ですが…私が撮影したもの


流れ星か火球か彗星かと思ったが、尾を引くでも煌めくでもない。
「何だろ、あれ?!」夫の視線を促してからも、光の強さや間隔が変わることなく淡々と列をなし進んでいく。まるで銀河鉄道のように。
北から東の空へと見えなくなるまでおそらく60秒、いやもっと継続していただろうか。興奮とも不可解とも言い表しがたい心境で夫と顔を見合わせた。


彗星?飛行機?ドローン?衛星?UFO?目の錯覚?


これまでも流星群を観察した経験があるし、はっきりと青く光る火球を見たこともある。連続する発光体ということで彗星なども考えたが、どう見てもこれは火球や彗星の類ではなさそうだ。

流れ星を期待して、見間違うものとしては飛行機や衛星などが挙げられるが、連隊を組んで飛ぶ空軍機とも考えにくい。進むスピードとしてはまぁ、衛星のそれに近いだろうか。けれども少なくとも15以上の光が美しい列をなしているのは一体なんだろう。

ならばドローンが一番それらしく見えるだろうか。周囲数十キロに渡る国立公園内はドローン禁止区域となっているが、何らかの理由で飛ばしているということも考えられなくもない。でも、どうも見えている距離感が遠すぎる気がする。

もしやもしやもしや、ついにUFO目撃か!
そう、ここはあのUFO墜落現場(⁈)のロズウェルからもそう離れていない場所である。個人的にはUFOを目撃したと公言し、自慢したい。夫も横で見ている。証人も確保だ。

とか何とか言いながら、はっきりした答えには辿り着けぬまま。山奥にある国立公園の中では携帯の電波もWi-Fiもないため、調べようにも調べられない。

「なんか見てはいけないものを見てしまったような気がする・・・」

わからないことがあればすぐに調べられる便利な世界にどっぷり浸かりきっている昨今、しかしこの日は不思議な世界に取り残されたまま世を明かすこととなった。

荒涼とした景色の中をゆく久しぶりの登山


翌日は朝から往復7時間の登山。
もちろんその間も世の中の情報とは途絶されたままだ。
道中も「あれは銀河鉄道としか言いようがないよね」と前日の不思議世界の話題は続いていた。
下界に出たらとんでもないニュースが世界を飛び交っていたらどうしよう。
UFO襲来、隕石落下、ミサイル攻撃だったら…?
いやそんなわけはないと思いつつ、あくまでそうやって狐につままれた空想世界に片足を入れつつ、話は弾む。

一方の久しぶりの登山、5月上旬とはいえ日差しが強い。
目の前に広がる景色は荒涼とした砂漠地帯らしいサボテンと、貴重な木々も山火事で焼けこげている。 
地味に登りが続くコースは息も上がり汗も吹き出す。追い打ちをかける強い日差しと乾いた景色。
それでも頂上に辿り着き、ほぼコースタイム通り7時間ほどの山行を終えた。

車で片道8時間もかかるのに、週末の一泊二日で登山までするには少々ハードな日程だったが、それでも不思議体験のオマケ付き旅は春のよき思い出となった。


そして答え合わせ


で、結局あの光の列は何だったか、携帯電波が入る場所に辿り着きすかさず検索したそれは「衛星列」「スターリンクトレイン」というものだった。

スターリンクとはイーロンマスクのスペースXが打ち上げている通信衛星。複数機まとめて宇宙に放たれるため、列車のように連なって見えるという。テキサス州からもスペースXのロケットが発射されているということは知っていたが、このように見える衛星群があるとは知らなかった。

このスターリンクトレインはアメリカのみならず、日本からも見ることができるという。それは時間と方角さえ予め調べておけば比較的空が明るい都会でもはっきり見えるようだ。

こうして理由がわかってスッキリもしたが、あっけなく不思議世界の住人生活が終わってしまった。
あのままUFOを見たことにしておきたかった気もするが、とりあえず危惧したような大事件は起こっていなかったことに安堵した。

アメリカの大自然の中にいると、そりゃ宇宙人もUFOも存在するだろうねという妙な納得感が湧いてくる。
しかし本当に目の前に現れたらやっぱり怖いので、夢は夢のまま大切にしておきたいと思う今日この頃である。


背丈ほどあるリュウゼツラン
生命力を感じるサボテンの花
細いながらも逞しく生きている
うちわサボテンの花は繊細な花弁に癒される

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