【アラスカ旅日記】 山小屋のようなホテルと久しぶりの太陽
アラスカ・フェアバンクス空港。
シアトルから4時間のフライトを経て手荷物を受け取った時刻は、深夜12時を過ぎていた。
テキサスとアラスカは3時間の時差があるため、体内時計的には夜中の2時を回っている。ぐるり昼夜逆転のジェットラグも辛いが、微妙な時間の差は体と頭が混乱する。
ついにバスケットリストのひとつだった「オーロラを見る」を叶えるためアラスカ州フェアバンクスへやってきた。
いつかはと考えていたが、不思議な偶然でフェアバンクス出身のランゲージパートナーと出会ったことが現実味を加速させた。
晴天率が高く観測確率も比較的高く、条件が良ければ市内のどこからでもオーロラが見られるといわれるフェアバンクスではあるが、滞在日程をしっかり確保しておきたかったことから7泊8日の日程を組んだ。
最初の2泊は空港近くのリゾートホテルに、後の5泊はAirbnbの民泊を利用する予定だ。
アラスカ州の面積はアメリカ合衆国第1位。広いと感じていた2位のテキサス州と比べても2倍以上というのだから広大な州であることがよくわかる。
カナダを隔て飛地となっているが、それは1867年にロシアからの申し出によりアメリカが買収したことによる。そんなロシアとはベーリング海峡を隔て目と鼻の先。アメリカも広いが、ロシアもとてつもなく広い。
訪れたフェアバンクスはアラスカの内陸にある州第2の都市で、北極圏まで160キロ、冷帯湿潤気候に属し冬季は-30度前後となる。
この極寒の地でのオーロラ観察に備え、とにかく防寒対策に心血を注いだ。
ウェア、靴、手袋、帽子などを買い揃え、念には念をいれ重ね着を想定した下着や靴下などをかき集めた。渡米の際にまとめ買いして持ってきた使い捨てカイロ、簡易湯たんぽなどもスーツケースに忍ばせた。
普段はなるべく最小限の荷物で旅をするのだが、今回ばかりは、大小のスーツケースを総動員だった。
ホテルからの送迎車を待つ間、空港の外に出ると寒さで空気がピリリと張り詰める。冬季の千歳空港で感じるあの空気に似た懐かしさと緊張感を思い出す。
細かい雪がちらついており、空を見上げると雲は分厚くオーロラが顔をだす気配すら感じられない。初日から見上げればそこにはオーロラがあるかもという淡い期待はあえなく崩れ去る。そんなに簡単ではないようだ。
チェックインを済ませ部屋に入ると既に0時を過ぎていた。相変わらず雲が晴れる気配はないため、早々に休むことにした。
2日目の朝。
早朝に目が覚めカーテンを開け空を確認する。残念ながらまだ雪は降り続いており、暗い空には月すら見えない。
予報通りではあったので早めではあったが朝食へ向かうと「メリークリスマス」の挨拶が飛び交う。
山小屋のような北国のリゾートホテルは隅々まで可愛らしく、ゆとりあるロビー、カフェスペース、図書スペース、ミニシアター、星空展示室などが充実しており、滞在中は他の観光地へ足を伸ばさなくとも、飽きることなく楽しむことができる。オーロラ鑑賞室などもあり、凍えることなくオーロラの出現を待つことができるスペースもある。ちょうどクリスマスでもあり、非日常感あふれる夢のような空間が広がっている。
ホテル滞在中は特に予定を立てているわけではないのでコーヒー飲んだり、ホテル内外を散策したりしてゆっくり時間を過ごす。
10時頃になっても空はぼんやりと明るさを増す程度で明けてくる気配がない。
緯度が高いフェアバンクスの日の出時刻は午前10:55ということで、冬至まもないこの頃は一番日照時間が短い時期でもある。天気が悪いこともあり空はいつまでも暗いが、防寒対策をしてホテルの敷地内を散歩する。
昼間も−20度、降りたての雪はさらさら、足元では一歩ごとにギュギュと雪が音を立てる。北海道でも冷え込んだ日はこんなふうに雪が鳴く。
目の前の道路を除雪車が隊をなして走っていく。雪国だなぁ。
しかしこの日も一日中雪が降り続き、空が明るくなることはなかった。
2日目の夜もオーロラ待機することすら出来なかったが、存分にこのホテルでの時間を堪能させてもらった。
3日目。
ようやく雪があがった。
フェアバンクスに来て初めて見た太陽はまるで朝日のようだったが、この時すでに昼の12時。南中時刻を迎えても低い位置までしか昇らない太陽に、やはりここが北極圏に近い場所であることを実感させられる。
極寒の長い夜、貴重な陽の光はより一層暖かく感じられる。低い太陽が作り出す空の色は実に美しい。滞在中、これまで見たことのない空の色に何度もため息をつくことになる。
ホテル滞在はこの日まで。
チェックアウトの後、レンタカーを利用してフェアバンクス郊外のAirbnbへ向かう。
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