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小児リハビリテーション序章。始まりの始まり

長年、本当に長い間、高齢者医療にかかわってきた。介護保険が始まる前から、寝たきり高齢者のリハビリテーションに関わってきた。高齢者医療は本当にここ20年で大きく変わった。私がかかわってきたリハビリテーション治療もどんどん変化していった。


遊びリテーション。パワーリハビリテーション。レッドコードセラピー。認知症リハビリテーション。等々。高齢者リハビリテーションも時代とともに目まぐるしく開発され変化してきた。


高齢者医療とは?

高齢者のリハビリテーションとは?

高齢者における障害論で高齢者における障害とはなんぞや障害を障害でなくする方法とは?


介護保険発足当時、認知症に対するリハビリテーションなんて影も形もなく、ただただ、患者を縛っているだけだった。


それを何とか改善しなければ、認知症リハの開発は急務だった。認知症はなおらない。が定説だったので、リハビリテーションで認知症が改善する。という私の思いは当時は誰も信じなかった。


私が認知症治療を始めた15年ほど前は、認知症はまだ痴呆と呼ばれていた時代である。治療なんてできるわけがないとすべての医療人が信じて疑わなかった時代だ。若い療法士さんは驚くかもしれないが、その当時の学問では、認知症患者は理学療法不適応とされていた。


そんな時代に、療法士が認知症に何かできないものか?と文献を読みあさっていたのだ。そうせざるを得ない状態だった。2000年に開始された介護保険により、初めこそ、病院と在宅の中間施設として機能していた介護老人保健施設だったが、ほんの数年で、認知症患者で溢れかえるようになった。認知症を何とかしないと理学療法を受けてもらうことすらできない。


寝たきりを歩けるようにしても、認知症を残したままだとかえって介護量が増える。と看護師や介護士から苦情が殺到した。


その時から、私と認知症の戦いが始まった。毎日が認知症リハビリテーションの模索だった。だって、学校でも勉強会に行っても「認知症は治らないもの」として教えているのだから、「何とか治療を」なんて考えているやつは、当時は変人以外の何物でもなかったからだ。


「どうせ無駄だ」「趣味でやってんだよ」「馬鹿じゃねーの」


と私に対する陰口や揶揄が病院内外問わず、私の周囲では、飛び交っていた。しかし、早期認知症であれば、改善できると確信できるだけのn数が現場レベルでも徐々に取れ始めた。


これはいける。そうにらんで、新しいエビデンスが出るたびに患者さんに遂行してもらった。


患者さんのADLは改善していった。完全にオムツで寝たきり状態だった人が、歩いてトイレ動作自立になっていった。ひと月に数えられないぐらいこけていた人が、何か月も転倒しなくなった。年を重ねるごとに認知症治療の成果や精度は確実に上がっていた。


しかし、どうにかこうにか現場レベルで患者さんを改善させても、エビデンスレベルが低いかぎりは、世間の認知症は絶対に治らない。認知症にかかったら最後。もう終わり。という見方は一向に変化しなかった。


それが、東北大の川島先生の脳トレ、国立長寿健康医療研究センターのデュアルタスクと徐々に認知症トレーニングの効果が立証されて来た。その時の嬉しさときたら、本当に言葉にできないほどだった。


近年発表された「ブレインhQ]の研究成果はそれらに匹敵するぐらいの衝撃だった。


「やればできるんですよ。諦めたら、そこで試合終了です」


とわたしが言い続けてきた患者さんたちに胸を張って、私は間違ってなかったといえる。


文句ひとつ言わず、私の非薬物療法を受けてきてくれた患者さんたちに、心から「ありがとうございます。」と言える。


認知症症状が改善して「ありがとう」と無数の感謝の言葉を患者さんやその家族からいただいたが、エビデンスレベルが低いうちは、「もしかして偶然なのかも」「私のオーダーした治療法による改善ではなく、ただ単に家から集団に出ただけで改善したのかも」と私のオーダーした治療とは別の要因による改善なのか?と疑心暗鬼の中やり続けてきた不安が一つ、また一つと解明されていく。


こうやって、認知症リハビリテーションのエビデンスレベルが上がれば、もしかしたら、寝たきり患者さんが今よりもっと、もっと減らせるかもしれない。


そんな思いで、高齢者医療にかかわってきた。日々悩み、患者のために何ができるのか。


高齢者にとっての理学療法とは?
高齢者にとってのリハビリテーションとは?
を考え抜いてきた日々だったように思う。


しかし、今回私は、この夏で高齢者医療から去ろうと思う。


そして、新たな一歩を踏み出そう!!


この夏。平成最後の夏。私は長年かかわってきた高齢者医療の世界を卒業し、新境地ともいえる「小児リハビリテーション」の世界へ飛び込む。


40才を超えての大大大チャレンジである。ワクワクが止まらない。


先週、リハビリテーション治療現場に見学に行ったときの子供たちの顔が忘れられない。


高齢者医療で長年頑張ってきたが心機一転、私は小児リハに転向しようと思う。


高齢者リハビリテーションがあまり世間に認知されていなかった時代に、高齢者医療の道に入った。何もない道を手探りで歩いてきた。そうして高齢者の治し方はある程度研鑽を重ね造詣を深めた。高齢者リハビリテーションでやれるだけのことはやった。高齢者リハビリテーション治療の極意や秘儀もある程度は身に着けた。


しかし、それらすべてを捨て去り、私は新たなステージへと駒を進める。
いざ鎌倉へ!!!


いざ小児リハビリテーションの世界へ!!!!!

さーやるぞーーー!!!

2018年夏。回想録第一章。二章につづく。

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