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逃げてばかりの男

昔一緒につるんで芝居を作っていた連中と、久しぶりに飲んだ時のお話。
いや〜解散して20年近い月日が流れているというのに瞬時に若かりし当時に帰れる仲間。素晴らしいですね〜。


何と言っても劇団に入団してきたころまだ高校生だったやつが、アラフォーだってんだから驚きだ。


ついでに言うと、そいつが一番出世頭。本を何冊も出版してテレビ出てとまさに八面六臂の大活躍。素晴らしい。当時は一番下っ端だったのにね〜。
10人近く集まった中で芝居を続けている奴は一人だけだった。それは、それでちょっとさみしい。仕方ないけどね〜。30過ぎて芝居を続けるっていうのは、ちょっとやそっとのことじゃできない。


まっ裸でナイフ一本持たずジャングルを横断するようなもの。考えただけで身の毛がよだつ。孤高の戦士ってところだな。


座長だった男(こいつは小学生のころからの友人で、いわゆる親友。こいつと一緒に劇団を旗揚げした)が他の劇団員と話していた。


宴もたけなわになってきたころ、どんな話の流れだったか分からないが、突然私に向かって座長が 


「こいつは嫌なことから逃げてばかりいる男なんだ。」


と、私の鼻先に指を突きつけた。


なんだと!どう言う事だ!


後輩たちの前で恥をかかされ、私がほほを膨らませて憤慨していると
座長は、こう付け加えた。


「こいつの逃げ方は素晴らしい。賛美に値する。サイレンススズカ並みに凄い!他の奴らは、中途半端に逃げるから差されるんだ。こいつぐらい逃げれれば、かえって人生の勝利者だ。俺もあやかりたいくらいだよ」


と嫌味のかけらもなく、心から感服している口調で称賛?なんだか微妙。褒められてるんだか誹られているんだか。それを聞いていた他の後輩たちも目を白黒させて、私の顔と座長の顔を交互に見やっていた。

褒めるならもっとわかりやすく褒めて~。
(^ー^; )

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