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ぼくの駐在さん日記

「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」を読んだ。映画にもなったやつだ。
 なるほど、なかなかのイタズラっぷり。楽しく読ませていただいた。
 
 しかし、しかしである。こんなハートフルなポリコ(僕の地域ではお巡りさんのことを敬愛の念を込めてポリコと呼んでいる)がいるのだろうか?と首をかしげずにはいられない。


 読んだ本に感化されやすいたちなので、僕のポリコ戦争を書いてみたいと思う。


 とはいっても、ぼくは生まれた時から遠慮がちで母の母乳も「いやはや母上殿もったいのうござる。」と謙虚に飲んでいたほどの品行方正なお子様である。(幽門狭窄だった)


 そんな僕がポリコにやり返すことなんぞできるはずもなく、ただただ一方的にやられるのみの青春時代だった。


 記念すべき初補導は、14歳。中学二年生の時だった。
 
 折り目正しく好青年の僕は、近所の制服屋さんに頼んでいたスーパーアラビアン(ニッカポッカのような形をした学生ズボン。どうしてあんなのがかっこよく見えたのか今考えるとほとほと不可思議なお話である)を取りに行き、ついでに猪鹿蝶の花札裏ボタンを買って、ほくほくしながら、友達四人で街中を歩いていた。


 トレーナにツータック入りのジーンズ。至って真面目。真面目が袖から漏れ落ちるような格好である。友達たちも別段悪そうな格好はしていない。どこからどう見てもあどけなさが残りまくっているかわいらしい中学二年生である。


 僕たち4人の前に制服姿のお巡りさん(ポリコ)が2人現れた。何も悪いことはしていないが、それでもポリコと言うものは何だかその存在だけで嫌な感じがするものである。


 なんとなくうつむき加減で僕たちはポリコとすれ違った。何事もなく通り過ぎてほっとしていた。(何も悪い事してないのだから当然と言えば当然なのだが」


 その刹那、ポリコの2人が僕と僕と並んで歩いていた友人の腕を捻り上げたのだ。


 「いてててて、いてーよ!!何すんだ!!」


 突然のことで動揺しながらもポリコに精いっぱいの罵声を浴びせる僕たちをしり目に、僕の前を歩いていた友人2人は異変にきずいているはずなのに、振り向きもせずスタコラサッサと歩いて町の雑踏に消えて行った。


 あいつらだっきゃーー!!面倒に巻き込まれないための中学生の処世術とはいえ、なんだか腹が立つ(次の日学校で嫌と言うほど嫌みを言いながらコブラツイストと腕ひしぎ十字固めを決めてやったが)
 
 「いてててて、いてーよ!!何すんだ!!」


僕たちの悲鳴をよそにポリコたちは無線で何やらごそごそ話している。ややあって、僕は驚愕の光景を目にすることになった。ポリコがドラクエのマッドハンドよろしく、わらわらと町の路地裏に湧き出てきたのだった。


 「こいつらか!!」
 「お前ら覚悟しとけよ!!」


 などと、全く寝耳に水。いわれなき罵声を浴びせられ、両腕を2人のポリコに抱えられ、街中を300mほど連行されてポリボックスまで、引きずられるようにしてしょっ引かれていった。奇異の目が町ゆく人々からそそがれる。


 −あの子たち何かやったのよ
 −悪そうな顔してるわ


などとおばはんたちの小声になってないひそひそ話が聞こえてくる。


 ポリボックスに入ると僕たちと同年代らしき男の子が2人座っていた。


 「こいつらやろ!!君らからかつあげしたやつら!!」


 僕の腕をつかんでいたポリコの一人が僕の髪の毛を掴んで、男の子たちに僕の顔を近づけた。


 男の子たちはきょとんとした様子で「違います」と答えた。

当たり前である。こちとら、気ぃ良くお買いものをしていただけのひんこーほーせーな中学生である。


僕たちを取り囲んでいた10人近くのポリコたちは、拍子抜けした様子で、「あっそ」と返答して僕たちの腕をほどいた。


「あ〜。君たちもう帰っていいよ」とポリコたちは僕と友人をハエでも追い払うようにして手を振ってポリボックスから追い出した。


ちょっと待てやコラ!!!!!!!!!!
しばくぞこら!!!!!!!!!!


とも言えず。はらわた煮え繰り返しながら家路へと着いた。


オカンに言ったら、あんたらがガラの悪い目つきでうろついてるからや!!
と逆に叱られてしまう始末。藪蛇!!もう最悪!!
これが記念すべき補導第一弾である。

あ〜!!!!!思いだし腹立て!!!!!!

ヽ《 ゜Д゜》ノ ゴラアァァァァ!!!!!


二回目の補導は、15才中学三年生の時だった。その日、品行方正で勉強熱心な中学生の僕たちは、機械工学を学ぶべく、オカンの50㏄バイク「パッソル君」を無敵の排気量にするために夜な夜なエンジンの改造に明け暮れていた。


ひと段落したところで、僕たち三人は休憩がてら缶ジュースを買って近所の公園でだべっていると、一人のポリコが僕たちに近づいてきた。


なんだか嫌な予感しかしない。


ポリコは僕たちを呼び止めて、またもや、マッドハンドマイク(トランシーバー)で応援を呼んだ。


どっぷりと日の暮れた公園。闇の中から、わらわらとポリコたちがゾンビのように集まってきた。


ひとりのポリコが僕の腕を捻り上げ、手のひらに顔を近づけて臭いをかぎ始めた。


何ごとだ?


いぶかしむ私の顔を横目にポリコは「こいつら、油のにおいするぞ!!」と言い始めた。当たり前である。ついさっきまで僕たちは機械工学のお勉強をしていたのだから。手はきれいに洗ったのだが、少し臭いが残っていたのだろう。


「なんやと!!」


何故か、他のポリコたちが色めき立った。


僕たちはまたもや、ポリコに腕をロックされて公園から500mほど先にある、どぶ川のほとりまで歩かされた。


どぶ川まで歩くとやぶの中から大きな750ccバイクが見えた。どうやら、こんどはバイク泥棒と間違えられたらしい。


「お前らこっち乗れ。それから、そっちのオレンジのジャンパーのやつは向こう行け!」


と、私と友人Aはポリぐるま(パトカー)に押し込められ、友人Bはやぶの中へとポリコにいざなわれていった。


ポリ車に押し込まれ、尋問開始。


「お前らなんで油のにおいするんじゃ!!」と問い詰めるポリコにちょっと焦りながらとっさに僕の口から出た言葉は、「卵焼き作っとっただけじゃ!」だった。


「昨日ラジコン作とったからな~」と、あさっての方向を見ながら答える友人A


「お前らあんなところでなにやっとたんじゃ!!」
「あんなところって、ただの公園ですやん。公園は僕らみたいなお子様が楽しく集うとこですねん」


いたって子供らしい神対応をする友人A君に「そうだそうだ」というように僕は小さく手を叩きながらうんうんと頷いて同意した。


「どこの学校や!!」


いたって冷静に返答している子供たちにテンションをガンガン上げてくるポリコたち。大人げない。


「〇〇中学ですけど」(本当の中学校の名前)
「嘘ばっかり言うとったら、親呼ぶど!!!」


話が噛んでいるようで、噛まないのがこのてのポリコたちの特徴だ。たのしく、僕たちが和やかな雰囲気で尋問されているとトランシーバーでなにやら、伝言が入った。


「お前らもうええ降りろ」


突然ポリ車から降ろされた。


友人Bもやぶから戻ってきていた。


「お前らもう帰ってええわ。あんまり、夜ちょろちょろしてんなよ」


と、いきなり解放。


ぼくたちは、ポリコたちを思いっきりにらんで、そそくさと速足に家路へと着いた。


ひとり、やぶに連れ込まれた友人Bに「お前、どうやった?」と聞くと、


「なんかなぁ。オレンジ色の服着たやつがバイクいじってるの見た。いうやつが、やぶんとこにおってな、俺の顔見せてこいつか?ってポリコが聞いたら、身長がもっと180センチぐらいのデカいやつやったいうてなぁ。」


ぼくたちは友人Bの話をそこまで聞いて大笑いした。


なぜなら、友人B君はクラスでも一番のチビだったからだ。中学三年生で身長がまだ145センチぐらいしかなかった。


彼がオレンジ色の服を着ていたのが悪の元凶だったのだが、僕たちの潔白を証明したのもB君だったので、プラスマイナス0ということで、誰もB君を責めることはなかった。


それにしてもポリコのやつら、色しか見てへんのかーーー!!!


たったそれだけの情報量で、いたいけな少年たちを犯人扱いすな!!!


ぼくたちとポリコの戦いはまだまだ続く。それはまた、次回の講釈。


ヽ《 ゜Д゜》ノ ゴラアァァァァ!!!!!

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