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さらっとデザイン史1〜工場制手工業からアーツアンドクラフツ運動まで〜

様々な分野で「デザイン」という言葉が世の中に溢れていますが、そもそも「デザインする」とはどのような意味なのでしょうか?
広辞苑によるとデザインとは以下の内容で記されています。

デザイン:意匠計画。製品の材質・機能および美的造形性などの諸要素と、技術・生産・消費面からの各種の要求を検討・調整する総合的造形計画。

デザインするとは単に格好の良さを追求する行為を示すものではないということです。外観が格好良くても性能が悪かったり、社会のニーズに合わなかったり、逆に社会的に求められてはいても使い勝手が悪かったり。
こちらをたてるとこちらがたたず、ではなくトータルに計画されて世に輩出される事で初めてデザインされていると言われるのです。

建築を設計する行為も「デザインする」行為に他なりません。
設計するという行為は物自体を作る行為ではなくその作り方、その道筋をトータルにコーディネートしていく行為なのです。

生産から消費に至るまでの道筋を上手に計画することがデザインするということなのです。それを成すために、何度も施主と打ち合わせを行い検討を重ね、緻密な設計図を作成していくのです。

では、デザインという言葉はいつから生まれてきたのでしょうか?

「手工業」から「工場制機械工業」へ

デザイン史の教科書も様々に出版されてはいますが、そのほとんどのものは18世紀中頃にイギリスで始まった産業革命からスタートされます。「手工業」の時代から蒸気機関の発達により生まれた「工場制機械工業」の変革期です。
産業革命以前、必要なものは必要な分だけ、自分たちの手作業で物を生産していくことが主流でした。なのでもちろん簡易なものが日用品として普及していたわけです。
その中で、複雑な技術が必要な道具は全て職人と呼ばれる方により生産されていました。

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中世の職人による靴職人の版画絵 写真:wikipedia製靴より

ただ、職人の数も限られていますので、職人の技術が必要な製品は、とても高価なものとして扱われ、一般大衆には手の届かない代物になっていました。

もう一度確認しますがデザインとは、意匠計画。製品の材質・機能および美的造形性などの諸要素と、技術・生産・消費面からの各種の要求を検討・調整する総合的造形計画を行う行為です。

まだまだデザインするという行為に至っていないことがわかります。

産業革命以降のものづくりの変容

産業革命とは、18世紀半ばから19世紀にかけてイギリスで起こった一連の産業の変革と石炭利用によるエネルギー革命、それにともなう社会構造の変革の時代を指します。
産業革命の要因は多々ありますが一番重要な事柄はワットによる蒸気機関の発明により、機械化が一気に進んだことが挙げられます。

蒸気機関

ワットによる蒸気機関 写真:株式会社IRSより

これにより、人の手によるものから機械によるもの作りに生産体制が変わっていったのです。

これまで手に入れることのできなかった安価な製品が世に大量に生産されていくと同時に、工場による生産体制は多くの雇用も生み出し、人々の生活に大きな変革が生まれます。

しかし、物づくりに関していえば状況が全て好転して行ったわけではありません。商品が安価になったことで、庶民は日用品が手に入りやすくなった反面、粗悪品が多く世に出回ることになったのです。また、かつての職人はプロレタリアートになり、労働の喜びや手仕事の美しさも失われてしまったと言われています。
急激な社会構造の変革に商品や職人が追いついていなかった、いわば産業革命期に製作された商品もまた、デザインという概念までには昇華できなかったわけです。

ウィリアム・モリスの登場とアーツアンドクラフツ運動

このような状況の中、中世の手仕事を見直し、生活と芸術の統一を目指した美術評論家であるジョン・ラスキンに感銘を受けたウィリアム・モリスは友人や知人の協力を得てモリス・マーシャル・フォークナー商会を立ち上げます。室内装飾や家具、日用品などを手掛け、丁寧で質の良い製品を目指しました。モリスは物(商品)における用と美の必要性を唱えます。

機械生産に異議を唱えたモリスは特に植物や生物にヒントを得た曲線を多用した商品を多く生産していきます。それらはいつも自然を間近にした時の生動感が漲り、かつ単なる自然主義に終わらせない様式感情を有したものでしたが、モリス商会の製品は結果的に高価なものになってしまい、一部の富裕層にしか受け入れられなかったものとなってしまいました。

クロス

モリス製作のクロスとタペストリー 写真:Wikipediaより


しかし、ラスキンとモリスにより始まった、日常の製品にこそ優れたデザインが必要だと考え実行した活動、主張はアーツアンドクラフツ運動といわれ様々な後輩者を生み、一つの潮流として広がっていきます。
各国にも大きな影響を与え、20世紀のモダンデザインの源流となっていきます。

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ウィリアム・モリス(1834-1896):19世紀イギリスの詩人、デザイナー。多方面で精力的に活動し、それぞれの分野で大きな業績を挙げた。「モダンデザインの父」と呼ばれる。写真:Wikipediaより

参考

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レッドハウス:1859年に結婚したモリスの為に友人であったフィリップウェッブが設計。漆喰塗りを行わず赤煉瓦の質感をそのまま見せた為にこの名がある。生活用品の全てはウェッブらモリスの知人により整えられ、生活を健全な工芸で満たそうというモリスの理想が実現された。この体験がモリスの工芸運動の発端となる 写真:wikipediaより

さらっとデザイン史2〜グラスゴー派の活動からアールデコまで〜

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西和人/Archlife

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建築家|Archlife主宰|株式会社西和人一級建築士事務所|金沢科学技術大学校非常勤講師|日本建築士会連合会青年委員会|Hp:https://archlife.jp|Insta:https://www.instagram.com/kazutonishi_architects/