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さらっとデザイン史2〜アールヌーボーからアール・デコへ〜

さらっとデザイン史1〜工場制手工業からアーツアンドクラフツ運動まで〜
の続きです。

アールヌーボーの世界

アーツ・アンド・クラフツ運動は国を飛び越えて職人、建築家、工芸家など、様々な人々に影響を与えました。時を同じくして鎖国をやめた日本の文化、ジャポニズムがヨーロッパに流行しはじめたことで、フランスのデザイン様式に微妙な変化が起こりだします。これらの影響は、装身具、家具調度、建築、ポスターに至るまであらゆる工芸品のデザインに及びます。そして、次第に独自に発展し、フランスを中心とし欧米の主要都市でしなやかな曲線と曲面を持った装飾、つまりアール・ヌーヴォーが大流行していきました。アール・ヌーヴォーとはフランス語で「新しいアート」という意味です。花や植物などの有機的なモチーフや自由曲線の組み合わせを新素材である鉄やガラスといった当時の新素材を利用することで表現する等様々な新しい試みがなされています。

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ルネラリックのガラス工芸 写真:JEWELRYJOURNAL

建築においても、それまでは過去の様式を発展させたものばかりだったこともあり、アールヌーボーという新しいデザインが広く取り入れられました。ガウディー建築もアールヌーボー建築の一つに添えられます。

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タッセル邸 設計:ヴィクトールオルタ(ユネスコ世界遺産) 写真:wikipedia

鉄は当時の素材としては新しく、細やかな表現も可能となるため、「新しい芸術」を表現するのにはもってこいでした。アールヌーボーデザインは地下鉄の駅など公共施設にも用いられていきます。

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Abbesses駅 写真:Merci-Paris.net

また、アールヌーボーの時期はポスターの黄金時代でもありました。ポスター専門作家の活躍があっただけではなく、画家が正面からポスター制作に立ち向かった時代は、そのあとも類を見ません。

ポスターの黄金時代は、むろんのことフランスに特有のものではありませんでした。それは、新しい年の時代にふさわしい美意識の誕生であり、それに伴うアートへの姿勢の切り替えを意味していました。

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テオフィル・アレクサンドル・スタンラン『黒猫』ポスター 
写真:wikipedia

アールヌーボーからアールデコへ

大流行したアールヌーボーでしたが、時代が移り変わるとともに、やがてデザインの最先端はアールデコへと移行していきます。
有機的なモチーフを曲線的なデザインで表現したアールヌーボーは、モリスの起こしたアーツアンドクラフト同様にとても高価なものとされたのです。よりシンプルで合理的さ、幾何学図形をモチーフにした直線的・記号的な表現が求められていくことにより生まれたのがアールデコです。

デザインの歴史を振り返ると、凝ったデザインがしばらく続いた後にはシンプルなデザインが新しく見え、装飾を削ぎ落としたデザインが生まれるという流れがあります。華美で豪華な装飾を特徴とするバロック時代の終焉からロココとネオクラシック時代への移行にと同じように、アール・ヌーヴォースタイルが世の中を席巻した後、人々は徐々に流線的なデザインから直線的なデザインへと目を向けるようになります。

当時、パリではアールデコはそれほど盛んになりませんでしたが、海を渡ったアメリカで第一次世界大戦時の好景気の影響もあり、大々的に花開きます。
アールデコスタイルの代表的な建築は、エンパイア・ステート・ビルディング、クライスラー・ビルディング、ロックフェラー・センターなどの、いわゆるニューヨークマンハッタンの建築群です。
特にクライスラー・ビルディングはニューヨークマンハッタンのシンボル的な存在で、その美しい外観から、アールデコ建築の最高傑作との呼び声も高い建造物となっています。

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クライスラービル 写真:Archlife

富裕層向けの一点制作のものが中心となったアール・ヌーヴォーのデザインに対し、アール・デコのデザインは一点ものも多かったものの、大量生産とデザインの調和を図ろうとした活動でした。
ただ、アール・デコもまた、装飾ではなく規格化された形態を重視する機能的モダニズムの論理に合わないことから、流行が去ると過去の悪趣味な装飾と捉えられることもありました。従来の美術史、デザイン史では全く評価されることもなかったのですが、1966年、パリで開催された「25年代展」以降、モダンデザイン批判やポスト・モダニズムの流れの中で再評価が進められてきています。

さらっとデザイン史3〜グラスゴー派とウィーン分離派の活動〜

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西和人/Archlife

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建築家|Archlife主宰|株式会社西和人一級建築士事務所|金沢科学技術大学校非常勤講師|日本建築士会連合会青年委員会|Hp:https://archlife.jp|Insta:https://www.instagram.com/kazutonishi_architects/