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商用利用可の衣服パターンライブラリ、その他AI事例多数、の話(コンワダさん66週目)

 こんにちは、株式会社アーキロイドのコンワダです。今週も社内で話題になった事例(コンワダさん)からいくつかをご紹介します。バックナンバーはこちら

CDM Library:商用利用できる衣服のパターンライブラリ

CDM Libraryは、『CLO: DIGITAL MODELISM 3DCGではじめる新しいファッションデザイン』の関連企画として運営される、商用利用可能な型紙データ(パターン)& 3Dモデルのライブラリです。

パターンはすべて、パタンナー・ちゃま氏により設計され、HATRA・長見佳祐氏により監修されています。

ご購入された型紙は、『CLO: DIGITAL MODELISM』でCLOを学習した後の応用編の教材としても、映像制作や服作りなどあらゆる表現にも、ご使用いただけます。

新しい表現や活動のきっかけとして、本ライブラリをぜひご活用ください。

出転:BNNオンラインストアより

実際にライブラリを見てみましょう。
CDM Libraryhttps://bnn.thebase.in/categories/4959089

ライブラリを見ると8つのアイテムのパターンがありました。半分は公開前のようです。
ボトムを見てみましょう。3Dモデルと型紙の画像を閲覧できます。データの購入は「カートに入れる」から。ベーシックなメンズボトムの基本構成がわかるそうです。
もう1つ、ドレスも見てみました。シャーリングやバストダーツの構造について学ぶことができるそうです。(私はその用語からわかりません)

 実際にライブラリを見てみると、「型紙」と聞いたときに何となくイメージできるシャツやジャケットだけはありません。ドレスやボディースーツなど、素人にはパーツの構成や2D展開した状態の形状が全く想像できないものまでありました。各アイテムの紹介文には「○○の基本構造について学ぶことができます」との文言があり、ファッション初学者や、デザイン以外の部門に従事する服飾関係者などが恩恵を授かりそうです。このパターンに好きな布を当てて自分だけの一着を作ることもできますし、商用利用も可能なので販売もできてしまいます。
 パターンの公開というのが絶妙ですよね。洋服のパターン、料理のレシピ、建築の設計手法や構法は、公開されさえすれば誰にでもマネできる汎用的な手法・知見です。人間の文化的な生活に欠かせない衣食住、その歴史は想像を超えるほどに長く、どれにも”パターン”という汎用的な概念が存在しているのも同じです。パターンは共有可能な知であり、目的物を記述するノーテーションです。人類が文字を手に入れて発展したように、衣食住の文明が発展するためにはこれらの”パターン”は不可欠なものだったでしょう。しかし、ある程度発展すると今度は差異化が起こり、ハイエンドな洋服のパターンや高級料理のレシピは門外不出のものになっていきました。しかし、世界一のレストランnomaがレシピの開発過程を共有したり、このCDM Libraryが型紙を公開しているように、再びオープン化の流れを感じさせます。これまでは情報の非対称性があった領域でも、今後は知見をオープンにすることで、皆が学べて、皆で手を取ってより進化していく社会に近づいているように感じます。
 最近では国内外の有名大学が学習サイトを作り、授業動画や講義資料、チュートリアルを公開しています。これまでもネットで調べればたいていのことはわかりましたが、その情報の確からしさが不明だったり、専門的なことだと答えに行き着くことができなかったりしました。インターネットを目の前に「調べれば専門家(またはその知見が詰まった何か)から、確からしいことを学ぶことができる」という状況ができつつあります。
 一方でパターンが公開されても、みんなが専門家になれるという話ではありません。もちろん一定以上の水準に達することができるしそのためのパターンですが、だからと言って必ず失敗しないわけではありません。良い型紙を手に入れても、選んだ生地がダサかったり、縫製が難しい素材だったり。同じレシピを使っても料理の味に違いが出たり、大工の腕によって隙間風が吹いたりします。
 作り方を「知らない」のと「知っている」のは大きな違いですが、「知っている」のと「実行・実装できる」のはまた大きく違います。さらに言えば「知っている」のと「理解している」のもまた違います。ほとんどの人は1+1=2であることの証明はできないけど、1+1=2であることを知っているので、コンビニのレジでお釣りの計算ができます。パスタにチーズを振りかけるとおいしくなる理由は説明できないけど、おいしくなることは知っているので粉チーズを買います。多くのことは「理解していなくても実行すること」はできるのです。「理解する」ための行いが学問なのかもしれませんね。

AIの事例

Googleが入力したテキストから自動で作曲するAI「MusicLM」を開発

 テキストから自動で作曲するAIをGoogleが発表しました。記事にはいくつかのサンプルがありますので必聴です。個人的には「relaxing jazz(落ち着くジャズ)」が気に入りました。(この記事を書き上げられないのではないかと焦っているからでしょうか。)

Galileo AI テキストからUIデザイン

FigmaのAIデザインアシスタント

GraphGPT

maket.ai

 建築の平面計画(プランニング)を生成するAIの事例です。こうした事例も多くなってきました。弊社としては当然要チェックです。

社内でテストした様子。要求を満たしていないものも出力されますが、初期検討で方向性をつかむには有用かもしれません

AIが古代バビロニアのテキストを解読、ギルガメシュ叙事詩のコピーや失われた賛歌を発見

 AIの処理によって、解明されていなかった古代テキストが解明されたというニュース。碑文の欠落箇所・損傷箇所の修復に、学者が数時間かけるところをAIは数秒でできるそうです。まさに学者越え。「理解する」フェーズをAIが担っており、学問においてもAIの存在感を強く感じるニュースでした。とはいえ、4000年以上前のテキストですし、本当のことは私たちにもAIにもわからないんだろうななんて野暮なことも思ってしまいます。

まとめ

 今週も最後まで読んでいただきありがとうございました。衣服のパターン公開について厚めに取り上げたため、他があっさりになりましたが今回も話題盛りだくさんでした。ここでもさらにこの話題に言及すると、衣服においては職能としてデザイナーとパタンナーがいて、今回の事例でもパターンを作るのはあくまでパタンナーであり、デザイナーは監修者でした。販売しているのが衣服であればデザイナーの作品ですが、パターンを販売しているのであればパタンナーのプロダクトになるわけです。翻って建築を考えてみると、建築の意匠設計においてはデザイナーとパタンナーの様なポジションはなく、かたちを発想する人とかたを起こす人に明確な区別はありません。近年では有機的な形状の建物の施工が可能になった一つの要因に”ジオメトリエンジニア”と呼ばれる人がいますが、それはパタンナーに近いのかもしれないと感じます。一口に建築といっても、欧州はデザインとエンジニアリングが分離されており、日本では設計の領域にエンジニアリングが多く含まれているので単純な比較は困難です。とはいえ、建築は物理的に関わる人の幅が広いのでたくさんのプレイヤーの中に、ファッションにおけるパタンナー的職能が点在しているのかもしれません。この疑問にヒントをくれるような事例や先例があればぜひコメントで教えてください。
 StableDiffusionとChatGPT以降、AI事例がとどまることを知りませんね。今週はGoogleがChatGPT対抗のBardを打ち出してスベるという事態もありましたが、毎週のようにこれだけにぎわっていればあっという間に忘れられるでしょう。
 先々週に「長らく空いてしまいましたが週刊投稿を再開します」的なフラグを立てて見事に、1週間スキップしました。社内で年内に第100回に到達したいよねというような話題も出て、そのためは週刊が必須ですので頑張ります。ぜひ「スキ♡」を押してください。励みになります。


「今週、社内で話題になった事例」 について
株式会社アーキロイドの社内で話題になった事例(ニュース、リリース、書籍、動画、論文などなど)のうち、いくつかをご紹介します。元記事の配信時期は必ずしも今週とは限りません。数ヶ月前、数年前のものもあるかもしれません。

社外にこれを発信することで、
①アーキロイドメンバーが日々どのようなことに目を向けているのか、を知ってもらいたい。
②せっかく読んでもらえるなら有益な情報をお届けするために、自分たちの情報感度をもっと高めていきたい。
という目論見があります。

メンバーも大半が30代に差し掛かってきたので、備忘録という意味合いが一番強いかも。ご笑覧ください。

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