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シャーロック・ホームズの建築、AI特許、BIM/CIM、スパイダーマンのロボットの話(コンワダさん25週目)

 こんにちは、株式会社アーキロイドの津久井です。
 毎週金曜日に投稿している本連載ですが、25回目を迎えました。100の半分の半分ということで、なんとなく節目を感じています。10回目のときにも一度節目を感じましたが、次はきっと50回目で感じるのでしょう。先長いなぁ。
 さて、今週も社内で話題になった事例からいくつかを紹介します。バックナンバーはこちら

事例1:シャーロック・ホームズに出てくる建物を研究家と一級建築士が解説する「シャーロック・ホームズの建築」

―――リンク
出版社(X-Knowledge)
Amazon

―――概要
 説明不要の名探偵、シャーロック・ホームズに登場する建築を紹介する本が出版されました。手掛けているのはシャーロック・ホームズ研究家(そういう職業があるんですね…)の北原尚彦氏と一級建築士の村山隆司氏。全17事件を題材に、建物を徹底考察して設計。この本を読めば、ホームズの生きたヴィクトリア朝の英国建築がよく分かるとのことです。

「シャーロック・ホームズの建築」の表紙(出典:公式サイト)
「シャーロック・ホームズの建築」よりホームズの家(出典:公式サイト
「シャーロック・ホームズの建築」よりホームズの家(出典:公式サイト
「シャーロック・ホームズの建築」より『恐怖の谷』バールストン館(出典:公式サイト

―――この事例について
 建築を仕事にしている方、そうでなくても建築が大好きな方は建築の魅力や奥深さをご存知でしょう。それを愛している人も多いでしょう。本棚は建築の本で溢れてるし、建築を見るためだけの旅行を組む。時には家族旅行の間にだって建築見学の予定を挟み込むかもしれません。「折角九州に行くなら〇〇さんが設計した△△美術館に行こう!ちょうど道中に□□さんが設計した道の駅もあるし!」といって鼻息荒く一眼レフ片手にレンタカーを予約しても家族からは冷え切った視線。そんな方も多いでしょう。そんなみなさんに朗報です。まずはシャーロック・ホームズの本やドラマを与えて興味をもたせ、その次にこの本を与えて建築沼に引きずり込めばこっちのもんです。休日は家族で建築見学旅行が鉄板に!(ってなりますよきっと。)
 これは半分冗談で半分本気です。というのも、小説、漫画、アニメ、ゲームは、複雑、難解、高尚、一言で言ってしまえば”とっつきにくい”物事に興味を与えたり、学ぶ上で非常に優秀なメディアだからです。
 これまでも当社noteでゲームやアニメといった文化と建築を結ぶ事例を紹介してきました。1週目コンワダさんで紹介した「You+Pea」というチームは、ゲームを介して建築デザインの統合や、都市デザインに人々を巻き込む、というプロジェクトを展開しています。また、12週目コンワダさんで紹介した「モダン建築クロニクル」は、京都に点在するモダン建築を擬人化し、有名声優たちが解説するサービスです。こうした事例と同様に本事例も、ホームズ好きがこの本をきっかけに建築に興味を持ってくれるのでは!と期待膨らみますね。あと普通に中身気になります。
 また、当社自身もこうした試みを行っています。当社は誰もがWEB上で住宅を設計できるサービス「archiroid.com」を開発・運営しており、名作アニメの家をarchiroid.comで再現する記事を出したこともあります。よろしければぜひご笑覧ください。

事例2:AIの生成モデルでも特許を取れる

※こちらは2021年08月04日更新の記事です。
―――リンク
StyleGANの論文
上記論文に対応する特許公開情報
Qiitaの解説記事「StyleGANとはなにか」

―――概要
 こちらは、機械学習の生成モデルに特許が付与されているという記事です。この記事で取り上げられている生成モデルは「StyleGAN」と呼ばれるモデルで、教師なし学習に分類される機械学習の一手法、GAN(敵対的ネットワーク)の派生系です。ここまで読んでもさっぱり、という方も多いでしょう。次の画像をご覧ください。

全てStyleGANによって生成された「存在しない人間」の画像(出典:論文

この写真に写っている人は実際には存在しない人々です。にわかには信じがたいことですが、StyleGANという”AI”によって生成された人間っぽい画像であり、写真ですらないのです。

StyleGANのブロックダイアグラム(出典:特許資料

 公開特許資料を見ると、上図のようにフローを示すものやアルゴリズムの構成を示すダイアグラムが掲載されています。この特許は米国で申請されたものですが、日本の企業がStyleGANを使ってサービス提供する際に、そのサービスが米国でも利用可能なものであれば特許侵害になる恐れがあるそうなので注意が必要です。この他にも、バッチ処理やドロップアウトといった有名アルゴリズムを含め、特許化されているAIアルゴリズムはたくさんあります。(その一例はリンク記事を御覧ください)

―――この事例について
 事業開発をする上で、要素技術の特許やビジネスモデル特許を検討するのは鉄則です。参入障壁や競合優位性に大きく関係するからです。近年のAIのブレークスルーにより多くのアルゴリズム特許が確立されています。
アルゴリズムは現代に置ける、インフラ、ファンデーション、鉱脈などと言っても過言ではないでしょう。これからの事業で裏にITソリューションがないというのは考えにくいと思います。そして事業、サービスのうらにはプログラムがあり、プログラムのベースにはアルゴリズムがあります。アルゴリズムそのものがシンプルだとしても、それを取り巻くものがどれだけ大きなものか。重要なアルゴリズム特許を多く持つGAFAといった企業が文字通り覇権を握るのも納得です。問題が顕在化していないだけで、”AIカンパニー”の大半が知らずに特許侵害を犯してしまっているかもしれません。
 前事例で述べたように、当社は住宅に関するWEBサービスの開発者、提供者です。知財に関するディスカッションをしている中でこの記事を読み、「バッチ処理も?」「ドロップアウトも?」となった次第です。今一度心に留め置きます。

その他の事例

その1:国交省/22年度BIM・CIM実施方針/大規模工事で原則適用へ

 国土交通省は直轄工事に適用するBIM/CIMの2022年度実施方針を定めました。一般土木と鋼橋上部の大規模構造物を対象にすべての工事で原則適用、詳細設計は小規模構造物を除いて適用となるそうです。23年度以降のロードマップも新たに提示し、受発注者が誰でもアクセス可能なプラットフォームを構築してデータ管理、建築生産のプロセス間で3Dモデルを共有して手戻り防止する考えです。
 ますますBIM化の動きが活発しています。これから商業施設、住宅など、民間工事でもBIMが標準化されていくでしょうか。一般住宅へのBIM導入は、建物の規模や複雑さに対してデータ作成のコスト機能が見合わない、という見かたが現段階では多いと思います。とはいえ今後、リソースとメリットが共存する情報高度化の落とし所は探していく必要があります。
 本件の他にも、日本全国の都市のデジタルツインを作るプロジェクト「PLATEAU」のように、国交省が主導で最先端にみんなを引っ張っていくのは、国のあるべき姿の一つだと感じている筆者です。

その2:スパイダーマンのスタントロボット

―――リンク
公式ページ(Walt Disney IMAGINEERING)
CNET JAPAN記事「夢の履歴書:ディズニーの「イマジニア」がスパイダーマンのスタントロボットに携わるまで」
―――この事例について
 スパイダーマンのアクションをこなすロボットの映像です。あまりに自然な人間(というかスパイダーマン)の動きで驚きました。ディズニーの中には「イマジニア」という、ディズニーのビジョンや作品を夢想して描いて形にしていく人々、部署があるそうで、このロボットも、スタンフォード大学で機械工学を学んだイマジニアのPope氏が開発しているそうです。CNETの記事で初めて知りました。お時間があればこちらも御覧ください。(CNETの記事

まとめ

 今回もお読みいただきありがとうございました。冒頭にも触れたように節目の25回目ということで、ちょっとばかり達成感を感じております。これも読んで下さる皆様のおかげです。好き勝手書いているようで、毎回ビュー数やスキ♡数を比較して、この事例回伸びてるなぁなんて風に、送り出した記事たちを愛でています。この記事の可愛さが増すようにスキ♡を押して言って下さい。それではみなさま、良い週末を!


「今週、社内で話題になった事例」 について
株式会社アーキロイドの社内で話題になった事例(ニュース、リリース、書籍、動画、論文などなど)のうち、いくつかをご紹介します。元記事の配信時期は必ずしも今週とは限りません。数ヶ月前、数年前のものもあるかもしれません。

社外にこれを発信することで、
①アーキロイドメンバーが日々どのようなことに目を向けているのか、を知ってもらいたい。
②せっかく読んでもらえるなら有益な情報をお届けするために、自分たちの情報感度をもっと高めていきたい。
という目論見があります。

メンバーも大半が30代に差し掛かってきたので、備忘録という意味合いが一番強いかも。ご笑覧ください。

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