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知の交流施設 学士会館セブンズハウス×クレーム・ブリュレを堪能【東京神保町】

私達の身の回りに当たり前にあって、日々の生活を豊かにしてくれるもの、それは建築と甘いもの。
このnoteでは、建築好きの私やま菜がおすすめしたい建築と甘いものを紹介していきます。

今回訪れたのは、前回に引き続き千代田区の神保町・神田エリア。
古くは武家屋敷が軒を連ね、明治時代には日本の大学の礎を築いたこの地に、とっておきの建築と甘いものスポットがある。


1.日本の大学発祥の地に建つ会館建築を訪問

今回訪れたのは、神保町でて程なく歩いたところに建つ学士会館だ。

元々この学士会館が建つ場所は、1877年に創設された東京大学の校舎が建っていた場所であった。
その後本郷に移転し、大学時代も帝国大学と名を変えたタイミングで校舎自体もなくなったが、大正時代に旧帝国系大学出身者(学士)の親睦・交流の為の会館が建設されることになる。

その後火災や関東大震災などの災害を経て、1928年に建てられたのが現在の学士会館の建物だ。
戦前は警察や軍の施設として使われたり、戦後はGHQに接収されて高級将校らの宿舎として使われた歴史もあるが、現在もホテル・レストラン・結婚式場等として広く親しまれている建物だ。

学士会館のデザインは当時最先端の建築様式として日本に持ち込まれたセセッションの影響が内外にみられる。
外観は明るい基壇部分に対して軽やか且つ表情豊かな褐色のスクラッチタイルが乗っていて、格式高さと優雅さが両立している。

また、上に行くに従って小さく形を変えていく開口部や、独特の形の影を落とす半円形の庇など、よく見ると可愛らしく豊かな仕掛けがたくさんあるのも注目ポイントだ。

皇居側の旧館と呼ばれる地上4階建ての部分が最初に建てられたものだが、北側から見える雁行したような5階建て部分は、1937年に増築された新館だ。

南西側の交差点からみると、地上からは旧館だけが見えるようにセットバックしていて、外観の主張は控えめなデザインとなっている。
一見すると、はじめからひとつの建物だったようにも見えるが、旧館のデザインを受け継ぎつつ、微妙に外装の表情に変化がつけられているのも面白い。

4階と5階の間の部分は本館の建物ラインに合わせて蛇腹状の装飾が施されていたりと、本館に寄り添うようなデザインとなっているのも見どころだ。

残念ながら学士会館は2024年の末に閉館が決まっていて、旧館部分は曳家して部分保存、新館は解体される予定となっている。

シンプルだけれど格式高さと優雅さを身に纏い、どこか親しみも感じる建築は、見れば見るほどいろいろな発見があった。

2.陰影豊かな空間で味わう至高のスイーツ

今回は1階の南西交差点に面したレストラン セブンズハウスで甘いものを頂く。
ちなみに学士として登録したメンバーは割引などの特典があるが、利用自体は一般の人にも開く開放している。

旧館南西側のエントランスは、元々正面玄関だったこともあり豪華な設えとなっている。
石張りの重厚感のある階段に対して、建具の押し手や階段の手摺がよく映える。

店内は、天井まで伸びる大きな大開口から自然光が降り注いでいて、内装やテーブルの彫りの深い装飾が陰影豊かな表情を見せてくれる。

この空間からは、影は光のない暗がりだけでなく、強い光があるからこそ、より豊かな表情になり得ることを実感させてくれる。

今回頂いたクレーム・ブリュレは、セブンズハウスでも特に人気のスイーツのひとつだ。

クレーム・ブリュレは注文してから少し時間が必要なメニューだ。
店内の内装を楽しみながら待っていると、バーナーで砂糖を焦がす独特の音と共に、甘い香りが漂ってくる。

お皿いっぱいに広がったクレーム・ブリュレの表面を割って、トロトロの中身とのハーモニーを楽しむのは、とても贅沢な時間だった。

甘いもののメニューは他にもいくつもあるので、訪れる度に違ったメニューをいただくのもオススメだ。
例えばこちらのガトーショコラ オペラは、フランスのオペラ座をモチーフにしたという伝統的なスイーツだ。

四角い立体として丁寧に積み重ねられた断面と、煌めくように輝く表面のチョコレートは、見ているだけで惚れ惚れしてしまう。

店内は、1階といっても半階高い位置にあるので、通りの喧騒からは少し距離を置きつつ、微かに外の気配を感じることができる。

大きな開口から微かに感じる街の気配を味わいながら甘いものを頂く時間は、まさに至福のひと時だ。

お店をでると再び、赤い絨毯、人造石の柱、精巧な白いレリーフ天井などの見どころ満載のエントランス空間がお出迎えしてくれる。
せっかくなので、少しだけ建物内部を散策した。

石材を鋲で打ち付けたようなデザインの柱は、気品を漂わせつつも、軽やかで優雅な雰囲気を纏っている。
こちらもセセッション運動の影響を強く感じるデザインだ。

光の演出もバラエティに富んでいて、こちらの内部廊下はステンドグラスのような光壁による演出が素敵だ。

他にも自然光、間接照明など様々な光の取り方で表情豊かな空間を彩っているので、訪れた際は是非注目してみてほしい。

【学士会館 施設情報】
設計:高橋貞太郎+佐野利器(旧館)、藤村朗(新館)
住所:東京都千代田区神田錦町3-28
行き方:神保町駅より歩いて約3分
竣工:昭和3年(旧館)、昭和12年(新館)
営業時間(セブンズハウス):10:30~19:00
備考:登録有形文化財
公式Webサイト:https://www.gakushikaikan.co.jp/

3.あわせて訪れたいおススメのグルメ建築

せっかくなので、学士会館周辺のとあわせて訪れたい神保町近辺のグルメ建築についても紹介したい。(神保町には本当に素敵な建築が多いが、ここでは食事もできるおススメ建築として2建築を紹介する)

まずはじめに紹介するパレスサイドビルディングは、皇居のお堀の目の前に立つ地上9階地下6階建てのオフィス・商業等の複合施設だ。

不整形な敷地に対して2つの巨大なヴォリュームを雁行して配置し、入隅部にエレベーターやトイレなどのコアが配されているのが特徴で、オフィス計画で生じる意匠・構造・設備の問題を一体的に解決する建築は建築当時より大きな話題となった。
日本的な繊細さと工業製品の合理性を併せ持った外装や、人や車の流れを受け流しつつ景観のアクセントとなる円柱コア近未来感溢れる内部の造作光と影による多彩な空間の表情など、どこをみても一級品の傑作建築だ。

そんなパレスサイドビルでは地下階を中心に和・洋・中、カフェと様々な飲食店が軒を連ねている。

例えば地下1階に中華料理店、赤坂飯店 本店は、パレスサイドビルの中でも歴史の深い老舗の人気店だ。
名物担々麺や麻婆豆腐など、本格的でありながら日本人の舌にも合う歴史の積み重なった味を、レトロな内装と共に堪能できるイチオシのランチスポットとなっている。

【パレスサイドビルディング 施設情報】
設計:林昌二/日建設計
住所:東京都千代田区一ツ橋1-1-1
行き方:神保町駅より歩いて約5分、竹橋駅より歩いて約1分
竣工:昭和41年
その他:営業時間、定休日等は店舗による
第9回BCS賞
第1回BELCA賞

続いて紹介する小学館ビルは、白山通り沿いに建つ地上10階地下3階建ての小学館の本社ビルだ。

塊感のある巨大なボリュームの建物は、順梁と逆梁を交互に組み合わせた凸凹スラブとコンクリート壁を利用した躯体放射冷暖房が採用されていて、不規則な勤務時間になりがちな出版社に対して快適な効率的な環境性能をもたらしつつ、堅牢でフレキシブルなオフィスを実現している。
内側に絞られた低層部の外壁は建物を地震から守る構造計画によるものだが、街行く人にも優しい歩道空間を実現していて、意匠・構造・設備がハイレベルで融合しているのが伝わってくる。

1階のCafe Lushは、神保町名物のカレーや特別コラボメニューがいただけるカフェ・レストランとなっていて、迫力の躯体やこだわりのデザインを体験しつつ、お腹も満たせるオススメのグルメスポットだ。

【Cafe Lush/小学館ビル】
設計:日建設計
住所:東京都千代田区一ツ橋2-3-1
行き方:神保町駅より歩いて約2分
竣工:平成28年
営業時間:
 平日 9:00~21:00
 土曜日・日曜日 10:00~18:00

建築と甘いものの第11回は、前回に引き続き神保町エリアの建築と甘いものを紹介しました。
どの建築も素晴らしい体験と味を楽しめる名建築なので、皆さんも機会があれば是非訪れてみて下さいね。

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