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表参道ランチをめぐる冒険③<美味しいものが大好き⑤>

40年前に初めて「ギャレット」、つまりフランスのブルターニュ発祥のそば粉のクレープをパリで初めて食べた。アイスクリームとかチョコレートだとか甘いクレープは既に日本でも人気だったが、この「おかずクレープ」のようなギャレットは初めてだった。

ギャレット・コンプレットというのがいわば基本形で、そば粉の生地をバターで焼いた上に、ハムと卵のエメンタルチーズをのせる、という簡単なもの。イギリスと取ったり取られたりのこの決して肥沃とは言えないブルターニュ地方の痩せた土地でできるそば粉を使った主食だったそう。この料理がフランス全土に広がるときに小麦粉で焼かれるようになったのがクレープだ。

40年前というと、まだまだ日本にはないものがたくさんあった。そういう意味では海外に行く楽しみや驚きが今よりもっと大きかった気もする。クロワッサンにしろ、そもそも味が違った。当時はバターが圧倒的にフランスの方が美味しかったし、一つのクロワッサンに入っている量も違った。食べるとバターのせいで指先が光った。

あっ、そういえば、やはり日本になく、当時のフランスで見つけたらとにかく食べていたのが、バゲットのホットドッグ。金属製の先のとがった発熱している棒に半分にカットしたバゲットを切った断面の方から突き刺し温めてそこにソースとマスタード入れてソーセージを挿入して出来上がり。僕は、特にスパイシーな北アフリカの羊のソーセージ「メルゲーズ(Merguez)」のが一番好きだった。あー、どこか日本でメルゲーズのバゲットのホットドッグ食べれるところないかなぁ。

メルゲーズを使った料理といえば、パリやジュネーブにいた頃にランチで良く食べたのが、これまた北アフリカ発祥のクスクスだが、実はこちらはめっちゃ美味しい店が下北沢にある。「クスクス ルージール(couscous Roujir)」というわかりやす名前のいろいろな味のクスクスが美味しいフレンチビストロ。コロナ以前は近くの本多劇場とかライブハウスに行くと、殆ど必ず行っていたお店だ。メルゲーズ食べに行かないと!

話を元に戻そう。ぼくがいつもギャレットを食べに行くのは「ブレッツカフェクレープリー」の表参道店。旧店名「ル・ブルターニュ」の方が分かりやすかったけど。因みに「ブレッツ」はブルターニュ地方の言葉ブルトン語でブルターニュのことだそうです。昔からいらっしゃるフランス人の老ムッシュも健在で、フランスの味がするギャレット屋さんです。フランス人が焼き手の時はバターをバシッと使ってくれるので更に本場の味がします。

パリとジュネーブにいた頃に当時のMichelin星付きレストランの半分ぐらいは行ったと思いますが、特別お美味しかったトップクラスのお店以外はあまり味の記憶に残っておらず、寧ろこういったギャレットだホットドッグだクスクスだとかのB級が記憶も鮮明なのはどうしてなんでしょうね?不思議です。

あ、それと最後にもう一つ。ブレッツカフェクレープリーで食事をされたらデザートは絶対に「塩バターキャラメル バニラアイス添え」を食べてください。「神の雫」ではありませんが、目を閉じればパリからモンサンミッシェルに向かうノルマンディーからブルターニュの景色が広がります!



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