さえら

書きたい欲求をただただ満たすための小部屋。 主に短編小説やポエムを書いてます。

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最近の記事

懐かしの味をさがして

本日48回目の誕生日を迎える夫・京作のために、鵡川静里(むかわしずり)は朝から市内のケーキ屋というケーキ屋を回っていた。 といっても、出勤直前の彼にリクエストされたのは、バースデーケーキではない。 『あぁ…うちはちょっと、作ってないですねー』 『すみません…』 これで、3軒目。 ネットで調べたレビュー記事から過去に販売していたとおぼしきケーキ屋4件のうち、既に3軒目に来ているが、ここでも現在は販売していなかった。 エクレア。 どちらも昭和生まれの夫婦、子どもの頃にはよく食べ

    • ようちゃんへ(私信)

      こんにちは。お久しぶりです。 元気にしてましたか? 私は今、なんとか元気です。 みんなで一緒に遊んでいたあの頃から、もう10年もたつんだね。 毎晩のように飲みながらバカ話で笑ったり、週末はいろんなところに出かけて、本当に楽しかったよね。 実はときどき、あの頃の夢を見たりします。 今回、久々にこの街に来て、それほど変わっていない風景に懐かしさを感じると同時に、あの頃のいろんなことを思い出して、なんだか信じられない気持ちでいます。 ようちゃんは、いつも頼りになるお兄ちゃんっ

      • Restart

        孤独の闇を抜けるまで 死ぬ気で息をし続ける 強さをくれたのはあなた 今日も何とか帰ってきた ここを頑張れば 光が当たると信じられるよ 支えてくれてありがとう 何があっても 生きる 生きるよ 歩んできた日々を 無駄にはしない たった今 この瞬間 自分を小さく見せていた 鎧を脱いで肌を晒す もう このままで大丈夫 ここが出発点 恐れるものは数あれど それでも ありのままでいよう 何があっても 生きる 生きるよ あなたのその笑顔 無駄にはしない 誰の目にも素晴らしい 存

        • 好きでいていいんだよ

          もう 好きじゃなくなりたいよ あきらめたら楽になれる なんでいつまでも 頭に居座るの 懐かしいメロディに 涙が止まらない いつまで経っても 求め続けてしまう 夢でなら逢えてる 声だって覚えてる まだ 好きでいていいんだよ あきらめなくていいよ 無理に壊さないで 大切な想い出 二人とも忘れれば なかったことになるね でも間違いなく 私が忘れないよ つないだ手に残る 不思議なあたたかさ ねえ 好きでいていいんだよ あきらめなくていいよ 忘れたりなんて できないでしょう

        懐かしの味をさがして

          備忘録

          あなたの好きなところ。 どんなときも、あきらめずに進む強さ。 大変な局面を何とか乗り切る、精神面のタフさ。 やるべきことがたとえどれだけ面倒でも、手を抜かず丁寧にやりきり、結果を出す実行力。 自分を良くわかっている、嫌味のない清潔感にあふれた服や小物のセンス。 くすんだ色のシャツやグレイヘアがあんな小綺麗に、違和感なく似合うって、やっぱりすごいよ。 目下への態度は厳しいようでいて、その根底には愛がある。 当事者たちには、なかなかわかりづらい表現だと思うけど。笑笑 一方、

          夏祭り

          全国各地から夏祭りがごっそり消えて、2度目の夏。 いつもはそれほど人気のない駅前通りが、夏祭りの2日間だけはキラキラのレインボーロードに変わる、その光景が大好きだった。 再びあれを見れるのは、いつになるだろうか? 『あ、藤井くんだ!青木もいるし!』 2メートル先も見えない人混みの中で、なぜ好きな人だけはすぐに見つけられるのだろう。 中2のときに、友達の千代ちゃん&淳子と出かけた夏祭り。 『ちょっと、胸見えそうになってるよ』 『マジで!?ヤバい、見せるほどないのに!』 そこそ

          熱帯夜

          2日前にエアコンが壊れたままの家で迎えた熱帯夜。 もちろん、寛げるはずがない。 修理業者にも夏休みが必要なのはわかるけど、全国的に猛暑続きのこの時期、せめて1人くらい稼働できるスタッフを用意してくれてもいいのではないか。 まあ、ここは自分の家じゃないし、家主はこの蒸し暑さをそこまで気にしてはいないようだけど。 昨年エアコン付きのアパートに引っ越す際に、今まで使っていた年季ものの扇風機を処分したらしい。 窓を開けてもほとんど風のない今夜は、いつもなら余裕で飲み干す白ワインもそ

          大好きだったあの人と寝なかった理由

          一言で表すなら、ご縁がなかった。 ただ、それで済ませてしまうには、私たちはあまりにも多くの時間を共有していたと思う。 めぐる先輩は、私がそれまで好きになった4人の男のうち、唯一手に入れられなかった相手。 他の3人とは、私が細かいシナリオや間合いを考えるまでもなく、相手からのアプローチでスムーズに交際が始まったことを考えると、レアケースだといえる。 先輩とは職場が一緒で、毎日のように仕事帰りに車で送ってもらう途中、コンビニ限定のおまけ付きお菓子を探し歩いたり、新しいケーキ屋

          大好きだったあの人と寝なかった理由

          満つる月

          ねえ あのさ 私はいつ あんな風に まんまるくなれるのかな いつだってどっか欠けたまんまで なんなら闇に消えたりもする ねえ あのくらい 光を放つようになったら 迎えに来てくれるのかな まだ足りない まだまだ足りない 不安も妬みも消えやしないよ ねえ あのさ 欠けたまんまでいいよって 誰か認めてくれないかな

          満つる月

          butterfly

          先週、久々に会う友達とランチに出かけた私の記憶に残っているのは、あの日食べたパスタの味よりも、友達から聞いた共通の知人の離婚の話よりも、ヒラヒラと楽しそうに寄り添って舞う2匹の蝶。 黄色い蝶と、白い蝶。 ちいさな2匹は、小洒落たカフェの中庭で、私たちが有機野菜のサラダとボロネーゼ、そしてデザートを食べている最中、ずっとヒラヒラと遊んでいた。 『本当に可哀想だよ、子どももまだ小さいのに』 共通の知人はアラフォーの私たちより少し若く、1歳になるかならないかの赤ちゃんがいたはず

          HERO

          『でも ヒーローになりたい〜♪ ただ〜ひとり きみにと〜っての〜』 お風呂場で熱唱しながらシャワーを浴びているのは、夫のケンちゃん。 大好きなミスチルの歌をこうして歌っているときは、彼の機嫌がいい何よりの証拠。 リビングのテレビでは、懐かしの歌番組で全く関係ない昭和のヒット曲が流れていて、ケンちゃんの歌と絶妙な不協和音を奏でている。 私はテレビの真ん前に座り、まだ首の座らない我が子・琴羽(ことは)を横向きに抱っこして授乳中。 この1ヶ月で、だいぶ上手におっぱいを飲めるよ

          旅立ちの唄〜and I love you〜

          最後のあなたの顔の記憶は、薄いブルーの不織布マスクと、いつもの鋭さをまるでどこかに置き忘れてしまったような、やわらかく濁った瞳。 人もまばらな、午前9時50分の駅構内。 店員がカウンターで伝票整理の作業に没頭しているのをいいことに、代わり映えしない品揃えの土産店の中を何周も回っている。 これからこの駅に来るはずの彼を待つことに決めたその理由は、最後にどうしても一目その顔を見ておきたかったから。 …いや、その時は正直、それを最後にするつもりなんて全くなかったのだけれど。 遠

          旅立ちの唄〜and I love you〜