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(5-10)神内先生との出会い【 45歳の自叙伝 2016 】

◆ Information
 【 45歳の自叙伝 】と題しておりますが「 自然に生きて、自然に死ぬ~ある凡夫の一燈照隅 」が本来のタイトルです。この自叙伝は下記マガジンにまとめています。あわせてお読み頂けましたら幸いです。and profile も…

◆(5-10)神内先生との出会い  登場人物、その他

 … ヒーリングの講師( 気功師・真理を学ぶ会旧サトルの会 )として、宇都宮で「新 波動性科学入門」をテキストに講義をしていたが、講義を終えたその夜に脳内出血で倒れてしまった。波乱の四ヶ月の入院後、母が代表を務めるパドマワールドの講師として活動を再開していた。

神内先生 … 日立OBの研究者。薬王石を使った放射能汚染対策を研究していた。以降、様々に教えをいただいた。

佐藤会長 … 父と一緒に、薬王石を世に広めようと長年腐心を重ねていた千葉の男性。放射能汚染対策で神内先生を紹介してくれた。

東日本大震災

 平成 23年 3月 11日 金曜日。この日は青山でヨガを行っていた。午前中のヨガを終えると、母と私はそれぞれの予定もあって、そそくさと会場を後にした。自宅に戻り、妻とテレビを見ていると、突然の大きな地震に見舞われた。

 その長く大きな横揺れは、時化(しけ)た海に揺られている船のようにさえ感じた。とっさにどこか遠くで大変な事態になっているな…と直感できた。慌てて外に出てみると、電柱や信号機が今まで見たことがないような揺れ方をしていた。少しおさまってからテレビをつけると大津波警報が発令されていた。津波の到着予定時間が伝えられ、しばらくすると三陸や仙台の海岸に物凄い津波が押し寄せる中継映像が映し出された。それはとても恐ろしい戦慄の光景だった。もうこれ以上記述するまでもないが、東日本大震災である。
 
 すぐに東北の会員たちが気になった。特に地震直後に発生した福島の原発事故による放射能被害は、目に見えない被害への対応であり、不完全な情報にもやきもきさせられた。そして、この放射能汚染は関東へも広がり、まったく他人事ではなくなってしまった。
 
 事故後、会員から「薬王石は放射能に効かないのか?」と尋ねられ、父は「黒石(薬王石のこと)は放射能も消せるよ!」と即答していた。私は「また確認も取れていないことを平気で話してるな…」と直感的な父の言動にまたアレルギーを持ったのだが、この展開は、その後の貴重な出会いの布石となった。

国産の粘土鉱物を焼結した「薬王石」


◇  ◇  ◇

新宿のホテルにて

 3月11日から数ヶ月。佐藤会長の紹介で、薬王石を使用した放射能対策を研究していると言う、神内先生にお目にかかった。小雨降る、少し寒い日だった。新宿のホテルのラウンジでその会合は始まった。諸先輩方が会話を進める中、私は神内先生の話にとても興味を惹かれていった。それはこれまで父がしてきた理論構築に対して、神内先生が上手に聞き返しながら、父の矛盾点をつまびらかにし、重要な事項を整頓しているように見えたからだった。初めて父に対して理路整然とやり取りしている人物を見て、久しぶりに気持ちが湧いていた。

2011年 10月 5日 新宿のホテルで会合

 ちなみに私は、神内先生に何某気に留めてもらえたらと、その時携えていた『唯識でみる般若心経』という本を、あえてテーブルに置いていたのだが、これは結果的に神内先生との接点の一つとなり、その後のやり取りのきっかけになった。そして神内先生とのメールは始まった。


◇  ◇  ◇

神内先生とのメール

◆ 10月 5日 私 ⇒ 神内先生

神内先生
 直江義明です。今日はお足元も悪い中、貴重なお時間を本当にありがとうございました。もっといろいろにお話を伺いたく思いましたが、またの機会に是非にお願い申し上げます。父も倒れてからというもの場の流れを俯瞰するのが疎くなっているようで先生にも失礼があったかと思います。お見苦しい点どうぞお許しください。

 私は父たちの行なおうとしている事を否定する気は毛頭無いのですが実際に事を成すにあたり、クリアすべき事柄をもっと詰めて見る必要があると思っておりまして、冷めた目で見ているように映るのか、父には「やる気がない」などと思われているようです。

  もっとも、過去10年ほどあの石に関わっておりますが、いろいろに思いがけない効用もあることも否定できず。あの石がいつか陽の目に当たれば良いなと思っています。これからも先生のご指導、ご鞭撻を賜りたく、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2011年 10月 5日 

◆ 10月 6日 神内先生 ⇒ 私

直江様
 早速のメール有難うございました。また、私の方が厚木に出向く必要があったなあ〜と少し反省しております。ところで、昨日お約束した、水に関する本ですが、 ウェスト マリン著 戸田 裕之訳 水の神秘 (原著は Universal Water ) サブタイトルに 科学を超えた不思議な世界とあります。出版社は、河出書房新社です。

 また、添付ファイルにて私の履歴書風小文を送ります。この小文は、今から三年ほど前、私がかつて勤めていた日立製作所中央研究所(国分寺市)からの依頼で、OBからの便りとして、研究所の所内誌向けに書いたものです。私の経歴と思いが書かれています。ご参考までに。

 そして、この所内誌が発行されたその直後リーマンショックが発生し、また今年は、3.11Disasters となりました。我々を取り巻く環境がこれだけ劇的に変化する中で、「どうしたらいいのか?」とずっと考えてきました。その一つの手段がバチカン展です。その本心は放射能対策であり、そして、次にすすんでゆくことにあります。このため All Japan をどうオーガナイズするかがポイントであると思っています。

 直江君は何に興味を持ち、何をやろうと思っているのですか?

2011年 10月 6日 

◆ 10月 7日 私 ⇒ 神内先生

神内先生
 直江義明です。メールありがとうございました。こんな時間に失礼致します。 早速、先生ご紹介の「水の神秘」をamazonで調べてみました。読み応えがありそうな本ですね!近々に購入してみます。先生の小文も拝読させて頂きました。また、昨日頂戴しましたA4の用紙も、もう一度読み直しました。 先生のご業績には心から敬服致しました。恐縮しております。自分も一緒に「新しいJapan Brand」の為に何が今出来るのか考えたいと思います。

 さて、今回は佐藤さんと石を通じてでございますが、実は私たちの活動の大半はヒーリングと呼ぶ施術を通じて、来られる方の痛みを取り、悩みを聞き、その縁ある方に寄り添って、お互いに心を成熟に向かわせられるように様々な取り組みを行なっています。

 しかし様々にご縁がありますと、やはり人の死というものを避けて通れません。私たちはその「死」と言うものに対してもきちんとした答えを迫られる事が多々あります。その対応如何ではお互いの心を苦しめ、縁者をも巻き込み壮絶な想いを致します。

 だからと言って、私はその解決の為に妄信的に宗教団体に入り特定の信条にのみ頼ることは考えておりません。それは宗教団体に属していながら「死」を前にその信条を投げ出した方を幾人か見て来たからで、もっと幅広く学問的な理解を踏んで、また体験を積んで行かないと「死」に向う本当の理解と強さは生まれないと思いましたし、場合によりその特定の信条が人を思考停止に追いやる向きもあるように思え、ときに危険に映るからです。

 そう言うわけで、今の最大の関心事は「死」です。私はこの「死」の解決が等しくどんな人にも人生に於いて最重要課題と思っています。そして、その解決の為にはそれなりの体験とそれを裏付ける理解を積み重ねる必要があると考えています。

 チベット密教では「死」は敗北ではなく、大いなる解放の時であり、命の永遠性を知り、本当の豊かさを与えてくれるチャンスなのだそうですが、この「死」の意味を理解し受け入れれば、恐怖や無智に基づくエゴや縄張り争いは消え去り、各々の命の尊厳を知り、今を修行の一瞬一瞬として真剣に生き、いづれ調和の取れた世界に変わる!…と。

 私の目標と考えるのはひとつにこうした「生死を越えた視座の獲得」です。よってヒーリングはその入口に過ぎず、各々自分に向き合うきっかけと言う位置付けであり、ゆくはセルフコントールの為のヨーガを行ってもらい、さらに瞑想とその学問的理解を軸に多くの人とその目標を達成していける現代版「僧伽(サンガ)」を築きたいと思っています。そしてこのひとりひとりの「心の成熟」の為、あらゆる智慧を結集したいとも思っています。

2011年 10月 7日 

◆ 10月 7日 神内先生 ⇒ 私

直江義明様
 メール拝受。ちょっと本質的な質問をしてしまいました。私は若いころ、大学生のときかな、これから何をやろうかなとかなり真剣に考えました。 その当時、数学、物理学にはとても興味を持っていました。でも結局仕事として選んだのは情報、コンピュータでした。そして、この選択はわたしにとって、結果的には、とてもよかったと思っています。

 貴君が関心を持っているテーマが持つ意味の大きさは、大変なものです。例えば、私も今、具体的に直面しています。すなわち、 My mother passed away just before my visit to Vatican last September. そして、毎日何回か、般若心経を recite しています。

 私は貴君のテーマについて、貴君のように真正面からとらえようとしたことはありません。しかしその対極にある、「生きる」というテーマについてはかなりのものを、考え抜き、実践してきたという思いはあります。これを、どうとらえるか、どう向き合うか、どう学ぶか、などさまざまことを考えることが大切であり、いろいろとトライすることが必要であると思います。このメールが、若い直江義明君の役に立つことを祈って!

2011年 10月 7日 

◆ 10月 8日 私 ⇒ 神内先生

神内先生
 こんばんは。直江義明です。遅くに失礼致します。メールありがとうございました。先生のお母様お亡くなりになられていたのですね。心よりご冥福をお祈り申し上げます。そして般若心経をお唱えになられるとのこと、まったく共感いたします。私もお唱え致します。

 私はこの 11月で 41歳になります。二児の子持ちでもあります。正直、あまり器用ではないものですから、過去結構無駄な事を繰り返してきました。バブルの終り頃に大学を中退し、借金などもだいぶ作りバカな事をしてきました。未だ自分の甘さのツケを背負って歩いているように思えるときもあります。

 先日、先生のお話を伺いながら、その洞察の鋭さと深さに感服しておりました。父や佐藤さんはノリと言いますか、勢いでことを進めるようなところがあるように思え、若造の私が言うのも憚られますが、危なっかしいと言うか、もう少し詰めた方が良いと言いますかそんなふうに思うことがしばしばでした。

 ですから、結局は私自身の判断の甘さ故なので蒸し返したところでせん無いことですが、過去、父には結構振り回されてきまして、どうも一枚岩になりきれないところは否めません。もっとも事を成すには実行力、突破力も必要でしょうし、様々なことは今は役回りと考えおります。

2011年 10月 8日 

◆ 10月 8日 神内先生 ⇒ 私

直江義明君
 私が何故、先回のメールで、学生時代のことを書き、また、貴君の関心事について、英語を使ったか考えてみてください。何かが見えてくると思います。

2011年 10月 8日 

◆ 10月 8日 私 ⇒ 神内先生

神内先生
 先生、メールありがとうございます。先生のご質問、少し戸惑いましたが、もう一度良く考えてみました。そしてそれは…

 思いとちがう世界に足を踏み込んだとして、また今は先が分からなくとも、今をしっかり取り組め。その取り組みが結果として良きものとなる。日本の中に留まらずにグローバルに物事を考えよ。また君は自分の思いを英語でどこまで表現できるのか。むしろ思いは表現ではなく、考え抜き、実践することが大事。

 …と言うことではないかと。これも先生の意図をくめているかどうか不安です。ただ、他にも感じたことがありました。

(文脈から)小さな変化を見逃すな。

 そこには大きな意味が込められている。先生はラウンジではお母様のことはお話になられなかった。しかも、そのような状況になりながらも先生はバチカンへ行かれた。このことは人知れずの先生の強いお気持ちであると言うこと。

 そして先生が般若心経を復唱されるその所以に思いを馳せたとき、心経の意味合いからして諸行無常のこの世界に居る己ではあるが、その現実を俯瞰してなお今を生きていくこと、また事物・命には限りがあること。そうしたことを踏まえ、先生はご自身の命までもご覚悟をされているのではないか。他方、私には今の関心事を「今を生きる智慧」に変えなさいと。

 結果、先生のご質問を受け、今思い至った風景は…「今の枠を飛び出して、もっと視野を広げ、良く考え、実践せよ、今を生きよ」このように思いました。返信が遅くなり恐縮です。どうぞよろしくお願い致します。

2011年 10月 8日 

◆ 10月 9日 神内先生 ⇒ 私

直江義明様
 さて、今度は色々な人と議論することです。このためには、直江君は次の質問を自らにして、答えをみつける必要があります。次の質問とは、私が最初のメールで尋ねた「直江君は何に興味を持ち、何をやろうと思っているのですか?」というこの質問です。じっくりと、考えてみてください。

2011年 11年 9日 

◆ 10月 20日 私 ⇒ 神内先生

神内先生
 先生、直江義明です。こんな時間に失礼致します。しばらく時間をかけ考えてみました。自分が何に興味を持ち、何をやろうとしているのか。結論はこのようになりました。

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私は自分と言う存在の証明に興味があり、
人の役に立つことを通じて自分を成長させようとしている。
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 この実社会に対しての具体的なアプローチも考えてみました。自分の具体的な興味とは何か?実際自分が出来る事は何なのか?また、自分の思いの根源的な動力が何なのかも考えました。これは前回のメールに書きました「自分の命に興味があり、その命を活かしたい」…です。先生の問いかけの真意は何であるのかも考えました。議論に必要な自分の中の答えとは?それは信念のことなのか?

 今回の先生の問いかけは、自分の思いの棚卸しをするに始まり、自分の生い立ちや親からの影響、過去の出来事を振り返ったり、くだらない自分の欲求を垣間見たり…と様々でした。

 このようなことは過去自分なりに幾度と行いましたが、今回は敢えて自分の思いを一旦否定し、疑ってみることもしてみました。その中で何か残ったもの、そしてシックリくる言葉を選んでみたところです。

 先生には余計な文言も書き連ねてあるかと思います。率直な問いかけにも関わらず、時間も掛かってしまいました。もしかしたら的外れなのかも知れないと言う、どこか恥ずかしい思いもあります。

 ただ、「自分と先生には嘘はつくまい」…とは思いました。お忙しい中、お待たせして本当に申し訳ありませんでした。既にタイムアウトかとも思いましたが返信させて頂きました。どうぞよろしくお願い申し上げます!

2011年 10月 20日 

◆ 10月 25日 神内先生 ⇒ 私

直江君
 メール有難うございました。すぐに、メールに返信出来ず、失礼しました。先週はずっと法要旅行のため、東京を離れ、東海、関西、北陸、中部に行っておりました。前にお話ししましたように、私の母が、九月、丁度イタリアに出発する前日になくなり、葬儀にでれなかったので、今回四十九日の法要セレモニーを行うとともに、あちらこちらのお寺に行ってきました。そして、般若心経を自分であげてきました。いい旅でした。

 いろいろなメッセージに触れました。永平寺では、道元禅師の「慕古心」、芦原温泉では、おかみの「旅の七つの喜び」、信州では「すてきな笑顔」に出会いました。

 ところで、貴君のメール、very good です。そして、より具体的なことに対する Thoughts and Acts が貴君にとっての The First Step になると思います。私のそれは、今、放射能対策にあります。

2011年 10月 25日 

◆ 11月 17日 私 ⇒ 神内先生

神内先生
 夜分に失礼致します。昨夜のインド料理大変美味しかったです。本当にご馳走様でした。ありがとうございました。

 あの後、帰りの道すがら父は何かをずっと考えているようでした。今まで父に物申す人は皆無だったと思われ、結果、確かにこれまでは父が一人で理論構築をしてきたのも事実ですので、今回は恐らくは先生の見識とその洞察力に感服して、いろいろに頭の中を整理していたのではないか?…と思いました。

 私はと言うと、そんな父のいつもとは違った姿に、ある種の安堵感のようなものを感じておりました。先生の話を聞く姿に父へのアレルギーが少し解消されたような、距離をおいていた父が少し近くなったような、そんな感じがありました。このあたり、本当にありがとうございました。感謝いたします。

2011年 11月 17日 

◆ 11月 18日 神内先生 ⇒ 私

直江君
 貴君のお父さんにインパクトがあったようですね。いや、貴君に大きなインパクトを与えたようですね。とっても、嬉しいことです。当然、私にとっても、有意義なミィーティングであったと思っています。

2011年 11月 18日 




続きは以下の記事です。


ひとつ前の記事は…


この自叙伝、最初の記事は…


この記事につきまして

 45歳の平成二十八年十月、私はそれまでの半生を一冊の自叙伝にまとめました。タイトルは「自然に生きて、自然に死ぬ~ある凡夫の一燈照隅」としました。この「自然に生きて、自然に死ぬ」は 戦前の首相・広田弘毅が、東京裁判の際、教誨帥(きょうかいし)である仏教学者・花山信勝に対し発したとされる言葉です。私は 20代前半、城山三郎の歴史小説の数々に読み耽っておりました。特に 広田弘毅 を主人公にした「落日燃ゆ」に心を打たれ、その始終自己弁護をせず、有罪になることでつとめを果たそうとした広田弘毅の姿に、人間としての本当の強さを見たように思いました。自叙伝のタイトルは、広田弘毅への思慕そのものでありますが、私がこれから鬼籍に入るまでの指針にするつもりで自らに掲げてみました。

 記事のタイトル頭のカッコ内数字「 例(1-1)」は「自然に生きて、自然に死ぬ~ある凡夫の一燈照隅」における整理番号です。ここまでお読みくださり本当にありがとうございます。またお付き合い頂けましたら嬉しく思います。皆さまのご多幸を心よりお祈り申し上げます。



タイトル画像は miyuchuchouさん より拝借しました。
心から感謝申し上げます。ありがとうございます。


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