戦略コンサルタントの仮説の作り方4手法
戦略コンサルタントのアップルです。
仮説思考は戦略コンサルタントの武器の一つです。
そこで今回は、アップル自身も含め戦略コンサルタントがどのように仮説を作っているのかといういくつかの手法をご紹介します。
何かしらの課題や論点に直面し、それに対する答えの仮説を持たないといけない人は多くいらっしゃるのではないかと思います。ぜひ参考にしてみてください!
仮説思考に関する記事の振り返り
仮説思考については以前も記事を書きました。
このときの記事に書いたことは、
・仮説にはバリエーションがあって、
・様々なタイプの仮説思考を戦略コンサルタントは使いこなしている
ということでした。
具体的には、
・論点仮説
・アプローチ仮説
・答え仮説
・メッセージ仮説
・表現仮説
の5つの仮説がコンサルティングにおいては必要という話をしました。
一般的に仮説と言われているのは「答え仮説」ですが、答え仮説というのは仮説思考の氷山の一角でしかないということ、バリューを着実に出すには5つの仮説思考を総合的に駆使していくことが必要だ、というのが申し上げたかったことになります。
とはいえ、何かしらの問題解決をする以上、上記の仮説の中で「答え仮説」の重要度はとても大きいです。筋の良い答え仮説を作れるかどうかが、戦略コンサルタント、さらには経営者やビジネスパーソンのパフォーマンスを大きく左右します。
ということで、今回の記事では、答え仮説の作り方の手法をご紹介します。
仮説思考の4手法
アップルの経験上仮説思考の手法には大きく4つあります。
順に説明していきましょう。
(難易度順であり、仮説の破壊力順です)
①記事をザーッとソーシングする
何か論点が与えられ、それに対する答え仮説を考えないといけないときまず手っ取り早くできるのがこれです。
仮説を立てないといけない領域に関する記事をとにかく読みまくります。その中で仮説のヒントになりそうなキーワードを抜き出していくのです。
ポイントになるのは浴びる情報の量です。アップルもコンサルタントだったころは関連するキーワードに引っ掛かる記事(日経新聞、業界紙、ググって引っ掛かるネット記事、等)をすべてざーっとみていました。一つひとつをじっくり読む必要はありません。速読や斜め読みのイメージです。そういう意味で「ソーシング」という表現にしています。
ざーっといろんな情報をみていると、記事に書いてあることの共通性が見えてくるとともに、「あ、これちょっと面白いな」という引っ掛かる情報にぶつかります。
そういう中で仮説を紡ぎあげるのがこの手法です。
②関係者にインタビューする
社内外の関係者にインタビューするのもとても有効な手法です。
例えば自動車業界の関係で仮説を立てないといけないとしましょう。こういうときは、社内で自動車業界に詳しい人(コンサルファームだと、自動車業界のPJの経験が多い人など)、もしくは、知人なども含め、社外で自動車業界に詳しい人(自動車業界の中の人、自動車業界の業界紙の記者、など)に話を聞くのが初期仮説を立てる上で非常に有効です。
①でザーッと調べた内容をもとに、「机上調査のレベルですけど、色々調べてみた結果こんなことなんじゃないかと思ってるんですが、どうでしょうか?」という感じで質問をぶつければ、
「それは違う」
「それは正しいけど、数年前から言われてることだけどね」
「それは着眼点としては面白いと思うよ。関連してこんな話もある」
という感じでリアクションが得られ、その中で仮説のリアリティや精度が増します。
こうした人たちにインタビューする際にポイントになるのは、初期仮説とも言えないようなゼロ次仮説でもいいので、「自分はこう思うんだけど」というスタンスをぶつけることです。それをするかどうかで引き出せる情報の質は変わってきます。
③ロジックで類推する
いろんなファクトが集まってきたら、それをもとにロジックで類推するというやり方も大事になります。
「こういうファクト(事実)があるなら、論理的に考えるとAということが言えそうだ」
「Aということが言えるなら、さらに論理的に考えるとBが答えなんじゃないか?」
このように、論理の連鎖によって、
AならばB、BならばC、CならばD ※Dが答え仮説
と答え仮説を導いていくやり方です。
ちょっと抽象的で伝わりづらいかもしれませんが、このように左脳を駆使して仮説を出していきます。
仮説思考と言うと、どちらかというと「右脳」を使うイメージがあるかもしれませんが、「左脳」ドリブンで仮説を紡ぎあげていくやり方もかなりの程度あります。
「世の中は論理で成り立っている」
ので、論理の連鎖で答えに近づくのは、ある意味当たり前かもしれません。
④アナロジーで発想する
飛び道具として時に極めて有効なのがこの手法です。
Aという業界を対象に仮説を作らないといけないとき、Bという全然別の業界で起きたor起きていることをもとに、Aという業界で成立することや起きることを仮説するというやり方です。
ここでポイントになるのは、A業界とB業界に構造的な類似性があるという点です。
例えば、電力業界とガス業界。これらはいずれもライフラインの業界で、あるところ(発電所やガスプラント)から供給網(送電線やガス管)を通じて需要家に届けられるという意味で、ビジネスの構造が同じです。
構造的類似があるからこそ、例えば電力業界で起こりつつあるビジネスは、ガス業界でも起こる可能性がある、という感じで、アナロジーで仮説が立てられます。
クライアントが思いもつかないような仮説を出せるとすれば、このアナロジーによる発想でしょうか。飛び道具であるがゆえに、常にこの手法を使えるわけではありませんが、ハマったときには極めて強力です。
ただし、アナロジーで仮説を発想するためには、
①構造化する力
物事を構造的に捉え、異なる対象の”構造的類似”を気付く力
②幅広い知識・知見
様々な業界で何が起きているかという情報や知見
の2つを具備する必要があるため、それなりの熟練が求められるというのはあります。
まとめ
以上、仮説思考の4手法をご紹介してきました。
最後に、1枚の図にまとめておきます。
仮説構築の際の武器は、情報、論理、知恵の3つに分類されます。これらを組み合わせていかに早く・質の高い答え仮説にたどり着けるかが仮説思考の勝負です。
まずは、情報をとにかく浴びる手法1、手法2から始めるのがセオリーです。その上で、熟練度が上がってくると、ちょっとした情報からの類推で仮説が立てられたり(手法3)、自身の知見や知恵に基づくアナロジー思考で仮説が立てられる(手法4)ようになってきます。
今回はここまでです。
仮説思考を強化したい人に多少なりとも参考になれば幸いです!
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