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サポーターを楽しませるサポーターでいたい【アートプロジェクトの中の人】 佐藤卓也@Teraccollective

こんにちは。東京アートポイント計画プログラムオフィサーの村上です。

今回は東京アートポイント計画卒業団体のアートプロジェクト「TERATOTERA」(2010-2020年)のボランティアによるグループ「Teraccollective(テラッコレクティブ)」のメンバーとして現在も活動されている佐藤卓也さんをご紹介します。

アートプロジェクトの運営には「どんな人」がいて「どんなこと」をしているのか。【アートプロジェクトの中の人】に伴走するプログラムオフィサーの目線で、お届けしていきます。
今回は私が聞き手となり、佐藤さんとこれまでの活動を振り返りながら、いろいろお聞きしていきたいと思います。

今回ご紹介するのは、佐藤卓也(さとう たくや)さん

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ー佐藤さんはTeraccollectiveのメンバーですが、
もともとなぜアートプロジェクトに関わろうと思ったんですか?


佐藤:「アートプロジェクトを知りたくて関わった」って感じです。
きっかけは、東北の震災です。もともと都市計画や交通計画を学んでいたのに当時広告の仕事をしてまして、津波で倒壊した実家、通っていた学校、育ってきた地域、それらが壊滅しているなか、自分は何をしているのだろうと考えました。
数年後、設計会社に転職して、仕事として東北の復興の一部に携わることになりました。そして、他にも何かできないか…と思い、(本来はここでアートプロジェクトとなるのでしょうが…)ソーシャルデザインを学び始めました。結構有名な企業の方々と活動を始めたのですが「採算が…」「効率が…」とか「結果が見えない」とかばかりで。結局、考えるだけで行動しない面々に苛立ちがつのったのです。
僕としては「何も考えずとりあえず行動してみる」みたいな面々と出会いたかったのです。
そこで色々調べていたら「アートプロジェクト」という言葉に出会った。調べれば調べるほど(当時の僕には)意味がよくわからない。採算、効率、結果なんて考えてないように見える…で、興味を持ち、検索結果でアートプロジェクトを学べるとあった「Tokyo Art Research Lab(TARL)」に申し込み、学ぶだけではなく実践の場も欲しいと思い同時にTERATOTERAの募集にも応募したという感じです。


「心地よい面倒さ」が TERATOTERA の魅力

ーアーツカウンシル東京の人材育成プログラム「TARL」の受講をきっかけに、TERATOTERAのボランティア「テラッコ」として参加するようになったのですね。
そのなかで佐藤さんは「作品を設置するための棚」を制作したり「10時間程度、移動し続ける作家たちの映像を、途切れることなくライブ配信できる方法」を用意したり、色々なムチャ振りに応えてきたと思います。
改めて当時のことを振り返ってみるとどう感じますか?

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「TERATOTERA祭り2019 〜選択の不自由〜」実施の様子

佐藤:僕の生活を大きく転換させた期間ですね。戸惑いも多かったけど、反面好奇心がくすぐられることも多くて、とても貴重な時間でした。一言で言うと「楽しかった」。
どっぷり企業人として生きてましたから(先頭を走ってた位です笑)、アートプロジェクトに触れた瞬間に価値観が崩れました。そこからずっと戸惑いです。でも参加していたのがTERATOTERAであったのが幸いでした。
ボランティアが企画して、アーティストへの連絡から実施という運営、さらにはアーカイブとしての媒体づくりと…実体験する機会が多かった。体験しているうちに「(アートプロジェクトって)こんなことかも」と思える瞬間に出会う感じです。最初は「面倒」としか思わなかったのですが、いつの間にか僕が「面倒な人」になって楽しんでいました。
「いつも笑顔で楽しそうに生きている」と出会う方々に言われますので、アートプロジェクトとの出会い、TERATOTERAとの出会いは良いものであったのだと思います。


「Teraccollective」のやりがいって何?

ーアートプロジェクト「TERATOTERA」を経て、ついにテラッコが独立するかたちで「Teraccollective」が法人化しました。佐藤さんは法人化の中心的な役割を担われていましたね。
法人化に思い切ったのはなぜでしょう?

佐藤:TERATOTERAを残したかった、TERACCO(テラッコ)の活動の場を残したかったからです。TERATOTERAに参加しているうちにテラッコのように意味不明な文化活動を面白がって関わることができる人が増えたら面白いだろうな…なんて考えるようになりました。同時に、TERATOTERAスタート時に「テラッコ1000人計画」なんてあったことを知って、実現させたいな…なんて思うこともあって。
また、僕は色々なところにボランティアとして参加する機会はあるのですが、TERATOTERAほど深く実践させてくれる場はなく、この経験の場をなくしてはダメだと思ったのです。アートのことを全く知らなかった僕が、アーティストの制作、インストールのお手伝いをするなんてことになっているのは、このTERATOTERAという経験の場があったからだと思っているからです。

ー実際に今年度、アートプロジェクトを学ぶ「テラコレ版 アートプロジェクトの0123(オイッチニーサン)」を開催しましたね。魅力的な講師陣のラインナップや、受講生が50人以上集まるなど、すごい滑り出し!
テラッコたちによる「0123」はどんなふうに作り上げられているんですか?

佐藤:0123の中心的な活動は別のメンバーが担っていますので、以降はテラコレの総意ではなく僕個人の感想になります。
テラコレは法人化したものの、今までのように年間を通じてプロジェクトを実施するための予算はありませんでした。また、運営メンバーも限られており、想いはあれどお金と人がないという状態だったのです(今もですが笑)。
そのため、今年は何かひとつに絞って活動しようとなったのです。そんななか0123に参加経験があるメンバーより、0123がアートプロジェクト参加者を生み出す場として有効だという話がありました。実際、0123受講者からテラッコとなる方も多いのです。そこから、限られた人数でも実行でき、実績と仲間を集める手段として有効では…というビジネス的な流れからスタートしています。
しかし、講師は自分達が話を聞きたいという方々にこだわり、お願いをしております。そのため、普通ならお一人だけでの講演でも成り立つ方々を多数集めるという結果になりました。実際、毎回とても興味あるお話をお聞きすることができております。運営者のひとりでありながら講師に質問をしてしまうほど笑。また、私が聞いている限りでは、受講者の方々の評価も高く「安すぎる」とのお声もいただいている状況です。
まだまだスタートしたばかりで、出てくる問題にも都度対応という状況ですが、受講者はもちろん、運営者も楽しめる良い講座になっていると思います。

Teraccollective HP「コラム」から0123のレポートを読むことができます

0123については、来年度もリアルとオンラインで実行したいと考えてますが、来年度にはアーティストと共にプロジェクトを実行したいという話は常にあります。テラコレとしての活動は、まだまだ手探りで何ができるかわかりませんが、僕としてはテラッコの活動の場をつくりたい、テラッコを増やしたいという想いは持っています。


サポーターを楽しませるサポーターでいたい

ーいろいろお聞かせいただきありがとうございます。
佐藤さんは、TARLの「思考と技術と対話の学校 スタディ1|共在する身体と思考を巡って」にも参加されていました。なにか「Teraccollective」に関わるなかで通じるものなどはありますか…?

佐藤:Teraccollectiveというより、僕のアートプロジェクトのスタートがTARLですから常に基本になっていると思います。
スタディ1では、コミュニティ、地域・人との関わりを意識しましたので、それらが僕がアートプロジェクトにサポーターとして関わるときに意識している点になったりしています。
僕が各アートプロジェクトのサポーターとして参加するときに「サポーターを楽しませるサポーターとなること」を意識しています。
スタディ1受講時の考えですが、サポーターが人と人、地域と人、コミュニティとコミュニティ…等の接点になります。サポーターが増えれば接点が増える、多様な関係性が緩やかにつながると考えました。人は楽しければそれを続ける、つまりサポーターも楽しければサポーターを続ける…結果、サポーターが増えるという考えです。僕が(サポーターとして)できることは、サポーターを楽しませるためのサポーター同士、サポーターと事務局、サポーターと作家の接点になることかな、と思っています。

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2020年度スタディ1 第4回実施の様子(撮影:加藤甫)

「サポーターが増えれば接点が増える、多様な関係性が緩やかにつながる」という佐藤さん。実際にTERATOTERAの現場に行くと、参加しているアーティストも「テラッコと話すことが何よりも面白い」と言っているのが印象的でした。そうして、アーティストと土地、住民をつなげていき、多くの人が触れられるアートプロジェクトをつくっていくことができるんだなと改めて感じました。
この記事も一つの接点として、新たなサポーターの入り口になるようなことができれば嬉しいです。


▼佐藤さんがこれまで関わったアートプロジェクト

・「体験を紡ぐ」
アートプロジェクトを社会とつなぐ新たなアプローチを探る講座
佐藤:アートプロジェクトという単位で見ていたものから、作品単体へと視点を変えるきっかけになっています。より深く作品、作家を見ることができるようになりました。

・「TERATOTERA」
佐藤:「体験を紡ぐ」メンバーの一部とは今でもテラコレメンバーとして交流しています。

・「部屋しかないところからラボを建てる」
佐藤:「リサーチ」を深めたくて受講しました。

・「共在する身体と思考を巡って」
佐藤:聴くこと(受信感度)を高めたいと思っていた時に出会った講座でした。

・「TURN」
障害の有無、世代、性、国籍、住環境などの背景や習慣の違いを超えた多様な人々の出会いによる相互作用を、表現として生み出すアートプロジェクト



▼『TERATOTERA 2010→2020 ボランティアが創ったアートプロジェクト』
TERATOTERAの10年を振り返るドキュメント


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