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1/500、全部好き。必要なことしか書かれていない。僕の宝だ【読後感想】村上春樹『風の歌を聴け』

小説は、だいたい500冊くらいしかまだ読んでいない。たぶん半分くらいは純文学だ。僕が読んできた海外古典の大半をそう分類したことも大きい。まだ500冊くらいだけど、そのうち300冊は良作だったし、さらにその中の100冊はとても面白かった。そしてさらにその中の10冊くらいは、ほんとうに、本当に、傑作だ。

そう、『風の歌を聴け』はそれだし、その中でも1番だ。僕は、この小説が1番スキだな。再読して、今回で9回めらしいが、やはりそう思った。

1979年
 シビレル本
 純文学
 100点
 2.0h

この前の記事では、読む理由があると書いた。答えは自己療養のためにだ。小説による、療養が必要だった。僕は1年前にも同じ理由で本書を読んだ。

もちろん、僕にとっては、ということでしかないが、僕はたまに、この本を無性に読みたくなるんだ。

それに、2時間で読み終わるってのが、かなりいい。

僕はね、この本の全部が好きなんだ。もれなく全部。
(はじめから付箋は貼らないことにしていた。仮にそんなことしたら、付箋はページの枚数だけ必要になる。大事なところにマーカーを引く、いつの間にか全部引いていた。そんなバカな話はないだろう。全部大事ならマーカーなんて引かない方がいい。とか色々書いたが、初読じゃないことと、そんな野暮なことはしたくなかった。僕にとってこの小説は宝なんだ。この本に限っては、いつものように、耳目を集めるようなパンチラインなんかを叫ぶようなプレゼンはしない。したくないんだ)

大好き。だし、ほんとうに羨ましい。こういうのが、正しいデビュー作だと思う。僕と小説のスタートで、僕が小説を書く原点でもある。最強の入り、完璧な絶望・文章、ものさし、デレク・ハートフィールド、鼠。全部いい。

という訳で、100点にした。100点をとるには、少しコツがいる。長すぎてはダメなんだ。そうするとね、どうしたって、少しばかり退屈な場面に出くわすことになる(完璧な文章など存在しないからだ)。でもね、『風の歌を聴け』はね、そんな場面がないんだ。1センテンスすらない。だから、100点なんだ。もし、あと50ページでも長ければ、たぶんどこかしらに綻びのような箇所がでてくる。きっとそうだ。ようは傑作であれば、その評価の仕方はどうしたって減点法にならざるえないわけだ。だって、加点法なら青天井だろ。それじゃあ100点の連続だ。それじゃ、つまらない。

山はない。ずっとフラットだし、ある意味実験的な小説だろう。だけど、何かを探るようにも書かれたこの本は、とにかくくすぐる。ずっと、僕の、何かをくすぐるんだ。

必要なことしか書かれていない。ある意味シンプルだともいえる小説だ。

いやいや、そんなことはない。全然理解できないって? という感想があるのなら、たぶん、あなたはもう満たされているんだ。

この小説は、生きているだけだけど、何か足りない、何かが足りないんだ。と感じる僕に、その、何かを与えてくれる。

けっして、読書量が足りないわけじゃない。たくさん小説を読んだからそうだとか、そういう話をしているわけじゃない。

この小説は、はじめから大好きな人と、大嫌いな人に分かれる。

その点は、太宰の『人間失格』と同じだ。

こんなことを書いたら、『人間失格』を読みたくなった。がしかし、贅沢過ぎるね。また少し、しんどくなった時までおあずけだ。とりあえず、今日のところは『風の歌を聴け』のおかけで、だいぶよくなった。

僕は・この小説が・好きだ

犬の漫才師ではないが、僕はこの小説を読んでいなかったら、いま、小説をここまで読むことはなかっただろうし、きっと、小説も書いていなかったと思う。

初恋の人みたいだ。つぎの500冊を読んで、それでも1/1000でいられるだろうか、すごい小説は山ほどある。それが、楽しみだ。これで〆る。

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