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【読後感想】児玉雨子『##NAME##』

noteをはじめて、最初に記事らしいことを書いた『ハンチバック』が、1番読まれている。たしかにあれは刺激的だった。純文の新人賞作品で75点だ。芥川にもノミネートされたね、獲れるかな。僕は納得できる。しかしだ、他の作品も読まないでこんなことを言うのは無責任だ。
というわけで、他の候補作も読んでみよう。って、言っても全部はたぶん無理だ。時間的制約なんかじゃない。買うまではしない。もちろん読める機会があれば進んで読もう。とは思っている。

で、これですよ。佐藤究の『幽玄F』が読めるとあれば、買いだ。そこに、今回の児玉雨子『##NAME##』が創作である。あっ、これノミネートされた作品だ。なんかラッキー!!
※佐藤究さんは、あれよ、あの『テスカトリポカ』ですよ。強烈だったわ。

という訳で読んだ。その感想を徒然と。

の、前にハンチバックの記事も貼っておく。読み返してみた。悪くない出来だと思う。しかし簡素だね。だけど、もう1回読みたくなった。明日はこれを再読してみようと思った。2か月と少し開けて、同じ題材で記事を書きばどう変わるだろうか。楽しみだ。

※スキ数は少ないが、ビュー数は900近い、僕の記事のなかではお化けだ。

いつものとおり、前説が長い。
それそろ本題に入ろう。

2023年
 ヤバイ本
 純文学
 70点
 2.5h

75点にするかかなり迷った。
またヤバイ本でいいのか、シビレル本か、考える本か……うーん迷った。

まず率直に、かなり今の本であることは確かだった。Twitterを使わない僕にはかなり分からない世界観が蔓延していた。マニアックで深かった。

また『ハンチバック』の話をして悪いが、対比したいところがあった。たぶん『##NAME##』の方が深い。マニアックだ。『ハンチバック』の世界観は浅い。と、こんなこと言えば角が立ちそうだな汗
だけど、パンチ力は断然『ハンチバック』の勝ち。あれは、かなりヤバイ。

要は、難しかった。日本語じゃない言語で書かれているんじゃないかと疑うレベルで分からないところがあった。分からない言語だった箇所があったんだ。はじめに付箋を貼ったのはココ ↓

「私はこういう活動を本格的に始めたのが結構大人になってからで、最初から世界をばっさり分けて、私のは解釈、あくまでたくさんある解釈のひとつって肝に銘じて2次BLを描き始めたから、こういうのにショック受けてやめちゃう気持ちが正直わからへん。作者は紛れもなく絶対神やし原作は正史、あ、正しい歴史の正史、やけど、頭の中で想像するのは自由やん。現実とはちがうけど、嘘でもあらへんしな、想像って」

文藝2023年夏 児玉雨子『##NAME##』 p333抜粋

背景も説明せずにこれだけ読んでも分からないとは思うけど、別にいい。文学は日々進化? 変化? しているんだね。純文学は自由で結構なんだけど、もう、これこそ字慰では? とか思ったりする。もっともっとあるが、読者の私は置いてきぼりをくらいそうになる。なんとかしがみついて読むが、少し、しんどくはあった。

なのに、こんなことを書く。↓ これは、ずるいよ。うまいと思った。

 同じ文法を使っているはずなのに知らない名前が組み合わさっているようすは、外国語というほど遠くに感じないものの暗号のように見えた。

文藝2023年夏 児玉雨子『##NAME##』 p335抜粋

それとね、「bot」ってのが分からなかった(今は分かりますよ汗)。が、この虚しさですよ。危険だとも思った。僕はやはり分からない。
「bot」、あなたは、わかりますか?

 頬をくすぐる髪の毛を耳にかけてから扉をノックして「失礼します」と声を通らせる。お母さんに言われた通り、部屋に入ってにこっと笑った。カメラの前で、控え室で手渡された名前が印刷されたコピー用紙を持ち、自己紹介をする。ミラクルロード所属の石田せつな、中学1年生の13歳です。特技はピアノと英語です。シチューが大好きなので、こうして面接によんでいただいてうれしいです! よろしくお願いします。特技まではいつも通りに自己紹介を誦じて、最後の一言は、今日のためにお母さんが考えたものを追加で覚えたきた。私の声はヘリウム風船のように、ふらふらと飛んでジプトーン天井に吸い込まれていった。

文藝2023年夏 児玉雨子『##NAME##』 p337抜粋

読みながら、「はっ、なにがシチューだよ(少しして理解はしました)」と声を出してつっこみました。また、「漢字をひらく」とは、僕もよくしますが、客観的にみると、難しいものですね汗 最後の1文だけはよかった。

ごめんなさい。ここのところは特に言及があるわけじゃない。ただ、書いておきたかっただけです(これが言及かww)。

そうだ、タイトルが意味不明だって? そうだね、僕も全然こういう世界に明るくないもので、意味不明のままでしたが、ちゃんと意味はわかります(たぶん、勘のいい人はなんとなく察しがついたりするのかもしれませんんけど)。
あっ、「夢小説」ってご存じですか? うん、僕は知らなかったよ。

 あの時の私たちも児童ポルノの「児童」だったのだろうか。どうしてどんな写真や動画が法に触れるのかばかり気にして、そこに写っている「児童」について誰も言及しないのだろうか。

文藝2023年夏 児玉雨子『##NAME##』 p358抜粋

↑ これは、よかったね。だけど ↓ これは嫌いだな。いいこと? エモいこと言おうとして失敗している感がある。

 私のすみずみまで固まったバターがこびりついて、薄く膜を張っているようだった。この膜があれば、もうこれ以上世界と擦れることもなく過ごせる気がした。

文藝2023年夏 児玉雨子『##NAME##』 p366抜粋

↓ これはまた難しい。走り出しはよかった。途中、おかしくなって、さいごはよかった? わからん汗

 しっかりと立っていないと自分の存在がホワイトアウトに見舞われてしまいそうなほど、真っ白い光が私を撃ってくる。レフ板が撃ち損じた光を余さず拾い上げ、下から槍のように尖ったスペクタルの波でこちらを突き刺してくる。目を瞑れば瞑るほど終わらない。見開いて、光に消されてしまわないように目を見開いて立っていると、眼窩の裏のすみずみにまで光が入り込み眼球から水分を吸い取りながら膨張し、やがて萎んでしこりを作る。日光もストロボもすべての光は痛く、私の瞳はいつも乾いていた。そんな光を浴びせながらこちらをじっと見つめ、永遠に瞬きをしないレンズの向こう側こそ、いつだって何もない真っ暗な闇だった。

文藝2023年夏 児玉雨子『##NAME##』 p369抜粋

そしてこれね。↓ よかった。

 カメラも置かれず、たわんだ空気の中で淡々と進んでゆく面接は、いつもどこから「ここにない視線」から判断されているのがわからなくてかえって疲れた。

文藝2023年夏 児玉雨子『##NAME##』 p334抜粋

 目を話せば、あっというまに散り散りになってしまう小さな世界。誰からも覗き込まれたくなかったし、どんな美しい言葉であっても物語られたくなかった。怒りと同じで、物語ることができるのもその断片の世界を手放せる者だけだ。

文藝2023年夏 児玉雨子『##NAME##』 p371抜粋


いやあ、芸能の闇。水ダウのロケを思い出した。
それとデジタルタトゥーねえ。

まさに、今っぽい小説です。この記事もそうなように、自由でしたね。純文を、「自由」だねって言えば、なんでも説明できると安易に考えている私笑

ですが、オタクの世界……夢小説? bot? また書かれる言語もまた新鮮でしたね。チャレンジングな作品だ。過去・現在とテレコで書くのもいいが、もっとハッキリと仕切りがあってもいいのかもな、って思いました。

しかし、こういう闇? なんつうか深ーいところを読めるのは、純文だよなって思いました。読んでよかった。

さすがにあらすじもなんも書いていないので、これを貼っておく。いい記事だよ。ま、僕の方にクセがあるのは分かるが、こうも同じ本を読んだ後に書く記事が違うものなんだな~

↑ とても読みやすいですよ。こちらも是非!

最後まで読んでくれてありがとうございます。
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なお嬉しいです。よろしくお願いします♪♪
また次の記事も読んでくれたら嬉しい(過去記事も)。それではまた明日!

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