森や自然はメンタルヘルスをととのえるか?【研究紹介】
自然や緑、植物にふれる時間が長いほうが、メンタルヘルスもよさそうですよという研究をご紹介します。
というのも研究費関連で、自然体験をするとこころの健康や柔軟性が良くなるか?について調べようと思っていて、関係しそうな先行研究を調べていましたのでおすそ分けしたいと思います。
個人的には、森とか緑にふれることがすごく好きで、最近は職場の中庭にいたり、移動中はあえて中庭を通過するくらい、森とか緑にふれるのがいいなと思ってます。
巷でもチルアウト(chill out)しようよって、森の中で落ち着いた時間を過ごすってのも流行ってますよね。
ただ私がいいなと思っても「科学的には森とか自然とメンタルヘルスの関係ってどうなんじゃい?」ってことになりますので、研究データについてご紹介したいと思います。
ロックダウン下での自然とメンタルヘルスの関係
この論文では、都市封鎖時のスペインとポルトガルでの、「自然とかかわる時間がストレスとどのように関連したのか?」について検討しました。2020年の春に合計3,157人についてアンケート調査を行いました。
国による若干の違いがありましたが、
家から自然を眺めることで心理的苦痛やストレスによるからだの症状をやわらぐ、公園などの公共の自然環境に行くことでストレスがやわらぐ、室内で植物を育てることもストレスがやわらぐ
ことが明らかになりました。
研究では収入、住環境、年代などの影響を取り除く方法を利用して分析をしているので、経済的影響や年齢的な影響がないものとしても、自然とストレスの関係性が見いだされたといえます。
インターネット調査で行われたため、インターネットにアクセスしやすい人がこの調査に回答しているという点については気を付ける必要があります。
とはいえ、「自然を眺められる環境つくり、公園に行くこと、室内で植物を育てることによって、ロックダウンの状況下でもメンタルヘルスに良い影響を生み出せる」可能性があります。
窓から見える景色に自然があるとメンタルヘルスがよい
こちらの研究は世界77か国の2020年4月から5月の間にインターネットによるアンケート調査が行われました。参加者は6,080人でした。この調査では、窓から見える景色に自然の要素を備えていることが、うつや不安に影響を与えるかということを調べました。
この調査でも年収や年代などの影響を取り除く分析を行った結果として、「窓から見える景色に自然の要素を備えているほうが、うつや不安がやわらぐ」ことがわかりました。
窓からの眺めについては、すべてが大自然である必要はなく、自然と都市の要素が混ざっている場合でも、うつを和らげる効果には変わりないそうです。
この調査でも先ほどの調査と同様に、データの集め方に偏りがある可能性は否定できませんが、「多少なりとも家から自然環境がみえるほうがうつや不安が和らぐ」可能性が高そうですね。
森林や水辺に行くことがメンタルヘルスに良い
こちらの調査では世界18か国で16,302人の方に、オンライン調査を行いました。アンケート調査と同時に、衛星画像によって、自宅から1km以内に、森や緑地地帯および水辺があるかどうかを確認することで、自宅が緑や水辺に近い環境かどうかを調査しました。
そして、森や緑地地帯や水辺にレクリエーションとして訪問したかどうかについては、海や森などの写真を見せて、この写真に近い場所に行ったかどうかを尋ねたそうです。
その結果、森や緑地地帯や水辺にレクリエーションとして訪れた影響を取り除いた分析をおこなった場合には、自宅が緑や水辺に近い環境であることとうつや不安には関係が見いだされませんでした。
一方、「レクリエーションとして緑や水辺に訪れること自体が、うつや不安を和らげている」ことがわかりました。これは、湖や川、海に訪れたり、森などの緑の環境に訪れることが、うつや不安を和らげることを意味しています。
さらに、緑の場所を訪れる人のほうがうつ病の薬を使用する確率が少ない一方で、不安症の薬を使う人では海を訪れる可能性が高いこともわかり、結果はまちまちな様子です。
先ほど2つの研究では、家にいながらの自然へのアクセスが重要であるという結果でしたが、こちらの研究では「森や水辺などにレクリエーションとして訪問することがメンタルヘルスに良い結果をもたらす」ということが言えそうですね。とはいえこの調査でも、回答した人が偏った対象者である可能性は考えなければいけません。
この手の調査はサンプリングの問題や調査手法の問題などがあり、調査結果が本当に信ぴょう性があるかについては議論されるところですが、自宅から自然が見える環境にあったり、室内で植物を飼育すること、森や水辺に行くことがメンタルヘルスによさそうということが言えそうです。
大掛かりに森や水辺にお出かけすることは難しいかもしれませんが、帰宅途中にちらっと公園によったりとか、河川敷を歩いたりとかでも良さそうなのかもしれません。
ほかの研究では、スクリーンセーバーや待ち受け画面を自然の画像にすることで、ストレスに関連する体の反応が軽減するなども言われてます。生活のどこかに自然を取り入れてみてはいかがでしょうか?
自然の中で、マインドフルネスな経験をすることもおすすめです~。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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筆者 あおきしゅんたろうは福島県立医科大学で大学教員をしています。大学では医療コミュニケーションについての医学教育を担当しており、臨床心理士・公認心理師として認知行動療法を専門に活動しています。この記事は、所属機関を代表する意見ではなく、あくまで僕自身の考えや研究エビデンスを基に書いています。
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