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経験への開放性とメンタルヘルス

この記事を読んだら、積極的に何かしたいひとのメンタルヘルスがわかります。

こんちは、あおき(医学教育)です。

最近、「なんかしたほうがいいっす」とか「楽しんだほうがいいっす」とかいろいろ偉そうなことを言っているのですが、「なにかを積極的にしようとする人のメンタルヘルスっていいんだろうか?」ということに興味を持っています。

せっかく教育の場にいますし、いちおう心理学者でもあるので、「積極的になにかしようとする人の心理学」をご紹介します。「経験への開放性」という概念にフォーカスしてみます。

経験への開放性って?

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経験への開放性というのは、BIG FIVEのパーソナリティ特性というのがありまして、人間のパーソナリティ特性は5つの要素で決まりますよっていうのがあるんです。そのなかの1つに開放性というのがあり、経験への開放性はその下位概念です。

開放性というのは、

経験を積極的に求め楽しむ、馴染みのないものに耐えられ求める

という傾向のことです*1。

経験への開放性は、想像力があり、空想を膨らませることができる空想への開放性と新しいものを好み、様々なものを求め、新しい活動を試す行為への開放性の2つから成り立っているそうです。

想像力をもって、新しいことをしていく人のことですね。

経験への開放性とうつについて

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さて、想像力をもって、新しいことをしていく人のメンタルヘルスはいいのでしょうか?あまりよくないのでしょうか?

ウルフェンシュタインとトゥルルが1997年に発表した論文*2では、うつ病の人とそうではない人の経験への開放性が異なるかを検討しました。以前の研究では神経症傾向(精神疾患になりやすい性格傾向)や外向性(外向きな性格傾向)がうつ病に関連するといわれてましたが、この研究では、神経症傾向や外向性よりも「経験への開放性がうつ病の人で低い」ことがわかりました。

カリージョたちが2001年に発表した論文*3では、一般のかたのうつの傾向と経験への開放性がどのように関連しているかを調べました。その結果、「行為への開放性が直接うつ傾向を弱めている」、「女性の場合、空想への開放性が高いほうがうつ傾向が高い」ことがわかりました。

ということで、新しいものを好み、様々なものを求め、新しい活動を試す人のほうがうつ傾向が弱いですが、女性の場合は想像力があり、空想を膨らませることができるほうがうつ傾向が強くなるというところですかね。

なんらかの精神病理を持つ人に対して集中的に認知行動療法をおこなった結果、経験への開放性がどのように変化し、うつ症状と関連したかを調べた研究もあります*4。

この研究では、「認知行動療法を行うことで、徐々にではあるが経験への開放性が高まり、その日のうちの経験への開放性とうつ症状には関連がある」ことを明らかにしました。しかし、経験への開放性が翌日のうつ症状を予測しなかったこともあり、効果は短期的である可能性もあります。

ちなみに、NEO-PI-R*1という質問紙で経験への開放性については測定できるみたいです(これを調べるためにこの記事を書いていたっす)。

経験への開放性とウェルビーイングについて

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こちらもいくつかの研究があります。「ウェルビーイングってなに?」についてはココを見てください。

研究成果のまとめを見るのにはメタアナリシスという方法で行われた研究を読みます。スティールらが2008年に行ったメタアナリシスです、BigFiveのパーソナリティ特性について研究されていますが、今回は経験への開放性についてだけご紹介します*5。

結果として、「経験への開放性が高い人ほど、幸福感、ポジティブ感情、生活の質が高い」ことがわかりました。一方、ネガティブ感情や生活満足度とは相関していませんでした。

この研究では、経験への開放性のどの側面が影響したか(想像力なのか、新しいことをやりたい傾向なのか)までは詳しく検討してませんが、ポジティブ感情を感じつつ、幸せな、生活の質が高い暮らしができるようですね。

まとめにかえて

さきゆき不透明なこのご時世なんで、やっぱりいろいろなことを主体的に行ってく必要があるのかなあとわたし的には考えていたりします。そうは言うても、なかなか動けないなあって時に、経験への開放性って言葉を思い出してもらえるといいのかもしれません。

まだまだ具体的にこういうことをすると、経験への開放性が高くなるってのはわかってませんが、今書いている「noteで行動活性化」が何らかの役に立つような気がしています(私見です)。芸術鑑賞(オペラや美術館に行く)をする人のほうが、経験への開放性が高いという結果もあるようですね。

メンタルヘルスや心理学のアウトカムとして経験への開放性を使うだけじゃなくて、開かれた行動をすることの必要性を伝えたり、教育を通じてそんなことを学んでいくようにできたらなあと思ってますが、心理学の概念ってみんながみんなにあてはまるわけではないので、合わないなあっていうひとがもしいたら無理に取り入れなくてもいいと思いますよ。では!

本日引用した文献

*1 下仲順子 ほか(1998)日本版NEO−PI−Rの作成とその因子的妥当性 の検討 パーソナリティ研究 6, 138-147.

*2 Wolfenstein, M & Trull, T. J. (1997). Depression and openness to experience. J Pers Assess, 69(3), 614-32. 

*3 Carrillo J, M. ほか (2001). Openness to Experience and Depression. European Journal of Psychological Assessment, 17, 130-136. 

*4 Forgeard, M. ほか(2019). Changes in daily manifestations of Openness to Experience during intensive cognitive-behavioral treatment, J Pers, 87, 856-870. 

*5 Steel, P. ほか (2008). Refining the Relationship Between Personality and Subjective Well-Being. Psyhol Bull, 134, 138-161. 

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