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福井在住の高3が1987年、マガジンハウス『POPEYE』と出逢って

この文章は私の父が3月、突然送ってきたメール内容です。『POPEYE』編集部の方と能勢邦子さんにも読んでいただき、本人の掲載許可を得ています。


「じぶんのじんせい」
2024年

ことしに入り
福井まで北陸新幹線が開通したとの
嬉しいやら苦々しいやらの
ニュース

福井を離れ早や37年

この人生いろいろとあったなぁ~と思いにふける55歳

37年前
福井県にある工業高校を晴れてギリ卒業
東京・新宿にある
それなりのマンション管理会社に就職

バブル経済の真っ只中
人手不足もあり
就職したマンション管理会社では
初の高校新卒者をとの動きに
上手く乗り就職を果たす

漢字は書けない、読めない
漢字は自分の名前がギリ書けるレベル
算数は更に小学生低学年レベル

九九も七の段から怪しいレベル

それは今も変わらない

高校三年生の秋
就職試験の為、東京へ
どうせ受かる訳もないだろうと就職試験を受ける

時代が良かったのか
福井県〜東京迄の在来線のサンダーバード号~新幹線代や
ビジネスホテル代も会社持ち

一日目は会社関係者と東京観光
二日目に面接と簡単な筆記試験
帰りにおみやげを貰う今では考えられない好待遇

筆記試験の内容は
将来の夢を原稿用紙1枚に書きなさいの内容のみ

一日目
会社関係者と東京観光
ビジネスホテルに宿泊

ホテルではやる事が無く
親切に冷蔵庫に入っていた缶ビールや缶チューハイを全て呑み干し
足らなくなり向かいのコンビニへ買い出しに向かった

浴衣姿で向かったら
ホテル従業員に注意されるが
睨みを利かして颯爽と買い出しに向かう

面接の為、福井から着て来た学生服以外は持参していない
まさか学生服で缶ビールを買い出しに行くほど
非常識では無い

部屋に戻り一気にビールを呑み干し
深い眠りにつく

二日目
筆記試験を平仮名ばかりの
語学力で乗り切り
軽快な足取りで面接会場へ

面接官は3人だった
在り来りの質問を受け
最後に面接官から笑顔で
話しが有った

『〇〇君は、高校でインターハイ・国体と二年連続出場!
頑張ったね!

しかもかなりの酒豪だね!
ホテル冷蔵庫のビールや缶チューハイを全て呑み干し、
缶ジュースには一切手を付けず
なかなかの高校生だね 将来が楽しみだね』

と・・・

今思えば面接官は笑顔で無く、苦笑いだったであろう

面接官に対して、

『ありがとうございます! 頑張ります!』

と答えるしか出来なかった

飲酒の釈明はスルーするばかりであった

何故、ビールや缶チューハイを呑んだのがバレたか分から無かったが、
ビジネスホテル代は会社持ち
今考えたら分かりそうなもんだが、
当時は分からず無料で飲み放題だと思っていた

面接を無事に終えてはいないだろうが

福井への帰路
新幹線車中

懲りる事も無く、
車窓に流れる富士山をつまみに
缶ビール片手に
浜田省吾の『東京』を口ずさむ

学校にバレたら
退学だろうな…
いつも以上にビールが苦く感じたのは
この先、会社から学校に飲酒の連絡が来る事を
心配していたであろう心理からか

心配をよそに、
なるようになるさと
売り子に手を上げ
二本目の缶ビールをゲットした

サンダーバード号に乗り換え
福井に戻り
残りの高校生活をいつも通り勉強する事無く
それなりに満喫していると
先生から職員室に呼ばれ
丁寧にも封筒が学校宛に届いたと
東京の会社から連絡があったとの事

合否を聞く前に
飲酒面接がバレて華々しい高校生活にもいよいよピリオドかと
覚悟していた

東京の会社から『採用』との先生からの説明

採用と云う言葉を知らず
すぐさま、
すみませんでしたと謝罪した

先生はキョトンとしていた

その後、採用の意味を先生から丁寧に教えて頂き
安堵した

社会人とは難しい漢字を使いたがるものだ

いずれにしても
学校初の
東京の優良企業からの内定をゲットしたのだ

ビジネスホテルでの飲酒は
一切触れられておらず

合格と入社の日付
3月27日のみが記載されていた

学校紹介の就職試験
その前日に面接する会社の経費で飲酒

平仮名ばかりの将来への夢

どこに魅力を感じたのか
分かる事も
考える事も無く

恐らくひらがなばかりの夢の中に
希望を見つけたのだろうと
勝手に解釈した

職員室を出て教室には戻らず
学校前の書店へ
漢和辞典を購入する事無く

東京での遊び方をリサーチする為
雑誌POPEYEを購入した
17歳の冬

どうせ就職しても3ヶ月もてば上出来だ
場合により3日程度
早ければ入社式の午後にでも
クビになるだろうと確信していた

字も書けない読め無い
九九も怪しい学力

素行不良も甚だしい
高校生の面接での飲酒

年が明け
18歳を迎えるには
何の自覚も反省も無く

雑誌POPEYEを優雅に読みながら
ビール片手に浜田省吾の『東京』を
口ずさみ新年を迎えようとしていた

なるようにしかならない
出たとこ勝負でやるしかないなと
親が寝静まったのを確認しつつ
二本目の缶ビールを手にした

面接の帰りの新幹線
右手に見て居た富士山

左手に見える3月まであと3ヶ月足らず

左手に見えた富士山を
会社をクビになり
すぐさまUターンし右手に見るであろう
自分の人生を
なる様にしかならないさと
苦笑いで応援するしかなかった

何の根拠も努力も無く
夢を膨らませる事無く
漢字の勉強もするわけも無く

POPEYE片手に浜田省吾の『東京』を口ずさみ

一気に缶ビールを呑み干し
すぐさま
三本目を冷蔵庫に取りに行った17歳師走

大嫌いな紅白歌合戦も終わり
新年を迎えようとしていた

2024年3月19日

北陸新幹線開通により
在来線のサンダーバード号が
福井~敦賀間の運行が最終だったとのニュース

37年前の自分の幸運を思い出す

とりあえず
37年前、入社式のあと
すぐにクビにはならず
Uターンもする事無く
東京~横浜の街を満喫している

今年6月に会社の旅行で
福井へ37年ぶりに凱旋する予定

新幹線ルートが変わり

北陸新幹線

富士山はつまみに出来ないが
浜田省吾の『東京』はくちづさむ事は出来る

たぶん
これからも
なんとかなるだろう

こううんをいのる

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