小倉青

小説を書きたいのかもしれません|https://oguraao.theblog.me

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最近の記事

落選作を振り返らない

 私はAmazonからの荷物を今か今かと待っていた。遂に「配達完了」の通知が届くや否や、すぐさま部屋を出た。階段を駆け下り、郵便受けを開け、茶色の封筒をむんずと掴んだ。この中に『すばる』が入っている。二次予選及び三次予選通過発表がなされている。  ……と、このくだりはどうでも良いので本来は書かなくても良いのだが、どうしても書かずにはいられなかったので書いた。全ての事物にはイントロが必要なのだと、私が私に言っていた。それが音楽なのだと。いや、これは文章であり音楽ではないので、本

    • 自己紹介

       小倉青(オグラアオ)  1993年11月19日生まれ。蠍座。B型。  幼稚園の頃にお遊戯会でLOVEマシーンを踊ったことを機にモーニング娘。に加入したいと夢見るも、翌年「モーニング娘。には可愛い子しか入れないんじゃないか?」と気づき、諦める。  小学校では図書室に入り浸っていた。  低学年〜中学年頃に好きだったのは『こまったさん』『わかったさん』『パスワード』『夢水清志郎』シリーズ。周囲の皆も読んでいたからそれらの話ばかりしていた。  中学年以降は『ハリー・ポッター』に心

      • 終わりたい

         一刻も早く死にたいと思うとき、『死にたい』『自殺したい』といったワードで検索をかけることがある。その検索フォームがGoogleにせよXにせよnoteにせよ、必ず相談ダイヤルが出現する。その度に思うのだけれど、希死念慮がピークに達した状態で見ず知らずの誰かに電話をかける勇気が持てる人間だったなら、こんな風にはなっていなかっただろう。絶対にこんなことにはなっていなかった。  死にたい。死ぬべきだ。死ななくてはならない。そういう思考で脳が埋め尽くされるあまり、意識を内側にしか向け

        • 梨、あった

          ※エッセイではない ※ちゃんと見返していない

        落選作を振り返らない

        マガジン

        • エッセイ
          48本
        • 小説
          5本
        • 写真
          1本

        記事

          梨、なし?【追記:梨、あり!】

           夏に入ってからというもの、スーパーやコンビニに行く度、アイスクリームコーナーを覗くようになった。ガリガリ君梨味を食べてみたいからだ。けれど、遭遇できたことは一度もない。  一体いつ発売されるのだろうか。ひょっとしたら他の地域では既に発売されていたりして。そう思い、赤城乳業さんのホームページにアクセスした。  しかしホームページを見るに、まだ発売されていないようだった。それではいつ発売されるのだろうか。予測を立てるべく、過去十年分を振り返ってみることにした。  ※以下はあくま

          梨、なし?【追記:梨、あり!】

          母子手帳を読む日

           なかなか眠れない日、心が疲れてしまった日、小説を読みたくても読めない日、ドラマも映画も観られない日……そんな日は、母子手帳を読むに限る。  この場合の母子手帳というのは、私の母と子ども時代の私自身の記録がなされた手帳のことを指す。私の名前が記されるのは『子の氏名』欄のみで、『子の保護者』欄には、おそらく一生記されない。  ぱらぱら捲ると、ものすごくセピアな匂いが立ち昇ってくる。  母は14歳の頃に風疹にかかった。  母は私を妊娠し、出産までの間に体重が10kg増量した。

          母子手帳を読む日

          後悔、混乱、困惑

           チャットレディをクビになるかもしれない。まだ始めてひと月も経っていないし、総稼働時間も十五時間ほどだけれど、終わったかもしれない。  私は本来、早寝早起き型だった。二十一時半に就寝し、四時半に起床する。これが理想であり、以前までは現実だった。それがいつからか忘れてしまったけれど、あるときから二十一時台に上手く眠れなくなった。が、眠気は訪れる。抗不安薬を服用していることも関係しているのか、睡魔はきっちり訪れる。  しかしチャットレディを始めると、余計にその時間帯には眠れなくな

          後悔、混乱、困惑

          名が変える肉体

           少し前にチャットレディになった。  今年いっぱいで退職する。退職後は死のうと考えていたが、一応、生きるという選択肢も考えなければならなかった。やはりどうしても両親の泣き顔が目に浮かぶし、小説ももう少し書いていたかった。それに、何にでも言えるが、選択肢は多ければ多いほど良い。  退職して二ヶ月か三ヶ月ほどは、リフレッシュも兼ねて転職はせず、小説を書く時間に充てたかった。しかし、それでは生きていけない。たった三ヶ月なら何とかなるんじゃないかとも思ったが、きっかり三ヶ月後に就職

          名が変える肉体

          ぴょこぴょこ

           視界の隅で何かが動いたのを察知し、顔を向けると、蛙の赤ちゃんが跳躍したところだった。これと同様の現象が毎日起こっている。黄緑色が見えたら蛙の赤ちゃん。何かが跳ねたら蛙の赤ちゃん。  サイズも色もカメムシに酷似しているのに、カメムシに抱くような恐怖は湧いてこない。大雑把な違いは移動手段が飛行と跳躍であることくらいで、三メートルも離れてしまえば判別不能なほどなのに、蛙の赤ちゃんは愛おしい。蛙の大人は怖い。カメムシはもっと怖い。  蛙ぴょこぴょこみぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴ

          ぴょこぴょこ

          ザ・ファースト・ロール

           おもちゃみたいなハーフカメラを購入し、ようやく72枚撮り終えたので現像に出したら、ぼやぼや祭りだった。天候とフィルムの相性が悪かったりすると、余計に駄目だった。一部だけ載せてみる。

          ザ・ファースト・ロール

          再開

           人身事故で電車が遅延して、少し遅れてしまいそうなんですが、大丈夫ですか。  そう問われ、承諾した。私は病院の受付で働いていた。あと半年で退職が決まっているので、もう過去形にしたっていいだろう。私は十年間、そこで働いていた。その先の進退は一切決まっておらず、順調に終活について考えている。  駆け込んできたのは制服姿の若者で、息をひどく切らしていた。何も走ってこなくとも、律儀な人だな、礼儀正しい人だな、と私は密かに感心していた。  診察を終えてもまだ学生の呼吸は整っていなかっ

          爆笑しながら缶蹴りしたい

          「最近爆笑したことって、何かありますか?」と、美容師さんに訊いてみた。美容師さんは「んー」と考えた後、「ないかも」と答えた。当然ながら私もない。ないから、人の爆笑したエピソードを聞いてみたくなったのだ。  悲しい。  本当は心許せる誰かと爆笑しながら缶蹴りしたい。足を捻らないように、転ばないように、皆で事前にラジオ体操をしてから、走りやすいシューズとジャージを着て、ちゃんとやりたい。  雨天だとか気乗りしないとかなら、ボードゲームをやりたい。人狼ゲームってやったことないから、

          爆笑しながら缶蹴りしたい

          皆お母さんの話をしてる

           先日、産休中の同僚が職場に顔を出した。 「おめでとうございます」と言いながら、私は内心驚いていた。同僚のお腹はほんの三か月前までぱんぱんにはち切れそうだったのに、それがすっかり平坦になっていたのだ。あ、この人、産んだんだな、と思った。胎内で別の人間が膨張していく感覚は、一体どんなだろう、ともう何度目になるか分からない疑問を抱いたけれど、誰にも訊けなかった。私は皆よりもちょっと離れたところから「毎日大変でしょうね」と言うだけだった。意図していたよりもずっと他人事のように響いた

          皆お母さんの話をしてる

          混濁中の

           夕焼け、と言っても時刻は19時を過ぎていたから夜焼けと言っても良さそうな、ピンクに近い朱色の空に向かって、退勤した。  土曜日から声が掠れており、自分の想定している音が出ない。普通に話そうとすると無音の息が漏れ出るだけなので、なるだけ喉に力を入れず、低めの声でゆっくり話す。これで喉に痛みがあればまだ妥当と感じられるのだが、ちっとも痛くないから不思議。よほどひどい声をしていて聞き苦しいのか、電話の相手には笑われるし、同僚にも笑われるし、対面する患者さんには何度も言葉を聞き返さ

          混濁中の

          ポジティブな願い

           先日、AIに自作小説のアドバイスを求めてみた。二作送ってみたのだが、二作とも「テーマの明確化」「一貫性」「心理/情景描写の緻密化」が必要だという指摘を受けた。  その瞬間、ズボシ、という音が耳の奥で鳴った。図星。  AIは私の痛いところを的確に突いてきた。確かに私はテーマを決めたことがあまりなかった。一貫性が生まれないのは当然だ。描写に関しては、邪魔だと感じるから削いでいるのだけれど、それじゃ駄目なのだろうか。それとも作為的に削いでいるつもりになっているだけで、本当は単に私

          ポジティブな願い

          ちょうど良い

          「これから修学旅行生の団体様がいらっしゃいますので、混雑が予想されます。お早めの搭乗手続きをお願い致します」  空港内に流れたアナウンスの通り、待合室には五十人ほどの修学旅行生が列を成していた。カーペットとはいえ地面に直接座り込んでいる生徒たちを前に、物懐かしさを感じずにはいられなかった。  学校行事では何故か、私も地面に三角座りをした。不衛生極まりないが、学生の頃はそれが当たり前で、制服のスカートが汚れることも厭わなかった。場所は駅前や観光スポット前など様々だったが、前に立

          ちょうど良い