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#子育て

「母親の嘆き仮説」の検証

「母親の嘆き仮説」の検証

わたしたちヒトの子供はいろいろな人に世話をされて育ちます。両親だけでなく、おばあちゃん・おじいちゃん、近所の人、保育園や幼稚園もそうでしょう。しかし、霊長類の全体で見るとそうした種はそれほど多くなく、ただひとり母親のみが子育てのほとんどを担う種が多いようです。そのため、多くの霊長類では、母親が亡くなると、幼いコドモも共倒れになります。この点に関してはこれまで多くの研究がありました*1。

しかしそ

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結婚はつらいよ

結婚はつらいよ

「若手研究者」と呼ばれるくらいの年代にいる私のまわりでは、数年前から結婚ラッシュが続いています。かくいう私も、結婚というワードが気になって、ついつい、いくつかウェブ記事をたどり、結婚とはなんぞや……と考えながら、インターネットの海を漂っていたりするのでした。

さてそんな先日、「狩猟採集で暮らしている人々は、子を産み育てるという目的に応じて約4年ごとにパートナー(結婚相手)が変わる制度をとっていた

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【書評】オランウータン―森の哲人は子育ての達人

【書評】オランウータン―森の哲人は子育ての達人

ヒトにもっとも近縁なサル (大型類人猿) に、チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータンがいます。このうち、前3種はアフリカのみに生息しているのに対し、オランウータンは東南アジアのインドネシアとマレーシアのみに生息します。アフリカの大型類人猿に関してはこれまでにさまざまな解説書が日本語で出版されているのに対し、オランウータンに関して書かれた専門的な解説書は、英語のものばかりでした。(オランウータ

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母親に力を与えるもの【書評】

母親に力を与えるもの【書評】

この記事で紹介するのは,枕になりそうな分厚い二分冊の書籍『マザー・ネイチャー』です*1.実を言うと,この本は購入後しばらく私の本棚のなかで眠っていました.それをある日,母子関係の進化について講演をする必要から読みはじめたところ,じつにおもしろくて,いろいろな部分にシャッシャッと線を引きながら,一気に読み終わってしまったのでした.

ヒトの母子関係を進化と生物学の観点から解き明かしていく本書は,これ

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【書評】オランウータンとともに

【書評】オランウータンとともに

今回紹介する書籍『オランウータンとともに』*1は,1970年代のはじめ頃から,野生オランウータンの長期研究を世界で初めて行なった女性研究者の自伝です.リーキーズ・エンジェルと称された3人の女性研究者*2のひとり,ビルーテ・ガルディカス博士は,これまでほとんど研究されておらず,謎の類人猿とされてきたオランウータンの調査に挑みました.

師であるルイス・リーキーとの出会い,インドネシアの熱帯雨林ですべ

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