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かたりべ

こんにちは!「函館在住者」のたにです。
一か月半、西部地区を回り、少しづつこの街の、人の輝き、町の美しさ、一方静かなちょっぴりの寂しさを感じてきています。
今、函館はすっかり雪をまとい、別の顔を見せだしています。
以前までの話はこちらから

夜になった西部地区元町を歩く。

坂道の木々はイルミネーションで光に照らされ、道が光に包まれ昼とは違った顔を見せています。
一歩引いて、見てみると、まるで山に光が上がっていくようにも感じます。
。坂に入り込んで次の光を探しながら街を歩いてみます。

ここはちょうどいい。

田舎道を夜一人で歩くのは寂しいし怖いです。都会を夜一人で歩くのは騒がしく疲れます。
しかし、西部地区の夜は歩くことを楽しくさせてくれる気がします。
光の多さ、人の少なさ、街のきれいさがちょうどいいのです。

歩くたびに出会う教会はそれぞれ自分の光を外にこぼし、安らぎを求める私たちを中にいざなおうとしてくれます。
今の時期はイルミネーションをしている教会もあり、光に癒されるものもあれば、その神々しさにやや威圧されるものもあります。
そういった光を見ていると、他の光はどんなものなんだろうと気になり、まるで宝探しのような気分になります。

そうなるとどんどん夜の散歩が楽しくなります。

光に呼び寄せられた教会では讃美歌が外に漏れだし、まるで別世界にいるような気分になります。歌に吸い込まれ中を少しのぞきました。
歌の美しさから、貞操を守った若き聖女が美しく歌っているのだろうと美しい世界を見てみたいと期待しましたが、ちらりと目が合ったおじさんがすごい勢いで手招きしてきたのでなんだか少しがっかりしてしまい、外を出ました。

教会を出て少し歩くと結婚式場を見つけました。
窓から少し見えた休憩中の新郎新婦の笑顔がきれいで、自分も少し幸せをおすそ分けしてもらうことができました。

この日は見る光が全部きれいで、その光は全て別世界の物のように感じました。

また少し歩くとガラス張りの店を見つけました。
「ギャラリー村岡」写真家の展示スペースかなと思い入ってみます。

中に入るとそこにはたくさんの作家の作品が置かれていました。
精巧に作られた銅板版画、透き通るグラス、溶け込んでしまうような琥珀、色鮮やかな蝋燭。まるでここは宝箱の様です。

話しを聞いてみると、ここは函館近郊の作家の作品を集めて売っているそう。
店主の村岡さんは、一つ一つの作品、作家について丁寧に教えてくれます。

物作りは作られた物を単純に見るだけでは完結しないと思います。
作る段階のストーリーや、そこに込められた意味をしっかりと受け取ることで、初めて価値を体感できるのではないかと自分は思います。
だからこそ村岡さんのような、「かたりべ」は非常に大切な存在だと思います。

村岡さんは昔、函館のこの地の美しさに魅了され移住してきて、1990年にこの店を始めたそうです。
そこからずっとこの函館の地を見守り続けてきました。
歴史的な、価値ある古い建物、昔に作られた趣向が凝らされた古民家。それらが意味もなく壊されたり、この地に、全くこれまでの歴史の文脈とは異なる、目新しい建物が立てられたり。
村岡さんは昔、大事な建物たちを守るために戦ったこともあるそうです。しかし、そうして大切に想った建物も壊され、とても悔しかったと言っていました。
需要があるものに対して物を作る、建物を立てる。
需要がなくなったらそれらの意味はなくなりごみと化してしまう。
そんな文脈をもたない物が蔓延るこの世の中が、この西部地区を食い散らかしていってしまうのではないか。
昨今の古民家カフェブームは、新しいものに触れてきた人達からすると古いものが新しく見えるからのものである。古い建物がまた文脈をみられずに新しいものとして使われていくのはどうなんだと。そう村岡さんは不安げに語りました。


確かに。と思いましたが、古い建物のイノベーションや再利用はそういった眠った歴史を思い返させてくれるものであるし、使う人もその歴史を受け止めてくれる人たちなのでそれほど心配はないのではと思い。ブームではあるかもしれないが、一旦接触してもらえ、良さや文脈を理解する人を増やすいい機会になるのではないか?しかし、確かに何も知らない人がこの建物が欲しいと文脈を無視したことを始めることもあるし、邪魔だからと壊すこともあるのか?

なんだかすっきりせずにもやもやと数日過ごしていると、街の建築家の富樫さんと話す機会がありました。
彼は古民家のリノベーションをいくつも行っている方で、前に記事で書いたICHIGoICHIeの建物を改築したのも富樫さんでした。

彼の話を聞くとなんだか不安は少し和らいだ気がします。

富樫さんのリノベーションの仕方は、建物の歴史を徹底的に調べ、文脈を理解し、依頼人のそれまでの物語(相手の事もコミュニケーションをたくさんとり徹底的に理解するそうです)と繋げてリノベーションするというもの。
話しを聞いていると、できた家は依頼人にとって新しい一方、なんだか懐かしく感じるのかもしれないなと感じました。

彼は自分のリノベーションの事を「糸と糸を繋げる」と言っていました。
これこそが、一番必要な事なんだと思いました。

使う人は素人です。
しかし、こうした「かたりべ」が繋ぎとめることで、全く新しいものではなく、文脈に沿った新しいものができるんだと感じました。

そうやって建物を改築し、また多くの家に命が吹き込まれれば、人が多くなり、文脈に沿った「新しい」歴史ができていくのではないかなと思いました。

富樫さんは新しい価値を作りたい。とおっしゃっていました。

これまでの歴史を無視しない。リノベーションからイノベーションがこの街に起こる。
そんな未来を想像するとこの街の将来がすごく楽しみに思えてきました。

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また、水曜日と土曜日の週2回更新するので是非覗きに来てください!

前回の僕の記事はこちら

⭐︎お店情報⭐︎
ギャラリー村岡
営業日時: 10:00~19:00
定休日:水曜日(祝日の場合は翌日)
住所:函館市元町2-7
アクセス :市電 十字街より徒歩6分
駐車場 :周辺に有料駐車場あり
TEL:0138-27-2961

SMALL TOWN HOSTEL Hakodate
私たちが情報を発信する函館旧市街(西部地区)の中心地で、ローカルの案内役を務める宿泊施設”スモールタウンホステル”のご予約はこちらから
https://bit.ly/3kR3Vwo

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