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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
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2022年2月の記事一覧

しあさって:Anizine

英語を勉強していると面白いことがたくさんある。そしてその楽しさを中学や高校の先生が教えるのは不可能だったんだなと気づく。 あるグラマーの先生と話したとき、「僕も一度は外国に行ってみたいよ」と言ったのに驚いたことを憶えている。彼の英語が本当にロボットみたいなカタカナ英語だったのはわかっていたけど、まさか英語教師を志していた人が一度も英語圏に行ったことがないとは思わなかった。 もう一人のリーダー担当の先生はまったく反対で、若い頃に外国で暮らし、発言がヒッピー的で、発音はネイテ

ボストン生まれの俺:Anizine

中年になってから真面目に取り組む語学。「挫折」のふた文字が透けて見えるという人もいるだろうが、そうはamazonが卸さない。今回は意気込みがまったく違うのだ。 今の状況で外国に行けないならそれをいい機会だと思った方がいい。しょっちゅう外国に行っているとその場で日常会話に困らないだけで満足してしまうんだけど、それでは何の進歩もない。もうひとりの「ボストン生まれの俺」がパラレルに育つようにしたいのだ。もちろんこどもの頃から英語を話す環境にいれば問題はないんだけど、この年齢までど

過去のうすらバカ:Anizine(無料記事)

何かを学び続けないと、偉そうになる。よく出くわすのは自分が何かの分野でひとかどの人物だと思い込んでいる人で、そういう人はあらゆる局面で審査員として、求められていない見解を述べる。ほとんどが40代後半から60代のおっさんなのだ。 成功しているのならサントロペの別荘でテニスでもしていればいいと思うんだけど、若者が必死にもがいているところに出没して、「だから若いやつはダメなんだよ」とか「俺たちの時代はもっと過酷だった」とか言う。 彼らは言い終わるとどこかに消えていく。言いたいだ

ドメスティック:Anizine(無料記事)

こんな状況で外国に出稼ぎに行けないので、国内での移動にチカラを入れていこうと思っている。地方にはとてもいい商品やサービスがあるんだけど、それを全国展開する際のパッケージングに難点があり、残念に感じる場合が少なくない。少し前まではそういった案件のほとんどが何も考えずに大手の広告代理店に丸投げされ、代理店の中では「新人の腕試し」的に雑に扱われ、思ったほどの効果もなくギャラだけは東京価格でむしり取られて尻すぼみになったりしていた。「東京は怖いところだ」という不信感ばかりを植え付けら

鹿の絶命:Anizine

よく「こんな夢を見た」などと書く人がいるが、そんなことに赤の他人が興味を持つと思っているんだろうか。たとえばさっきこんな夢を見た。 ウィーンの鉄道の駅でタバコを買おうと思った。銭湯の番台っぽい高さの不思議な店に、手塚治虫の漫画に出てきそうな60代前半のオヤジが座っていた。 「マルボロのメンソール」と言うと、大理石のカウンターに置かれた箱を指さした。女性が吸うような細いタバコだったし角が潰れていた。「これじゃなくてマルボロのメンソール」と言うとまた違うタバコを置く。やや声を

住民票:Anizine

Twitterのspacesで話していたとき「住民票」の話になった。自分と同じ感覚を持った集団という意味で、それをエコーチェンバーと呼ぶ人もいる。「人がそう言っているのを聞いたから、自分もその言葉を使う」という場所に自分の住民票がないから、独自の言い方をしている。 感覚が近いと思える人はそれほど多くないはず。たとえば映画が好きだという人同士でも、ハリウッド好きとゴダール崇拝者では話が合わないだろう。ハリウッド映画にさえたくさんの種類があるんだから。同じ監督の映画であっても、

教え魔とお見合い:Anizine

「教え魔が出てくる話題をチョイスしてはならない」と、信号待ちの老人は言った。もし面倒なことになっても、不用意にその手の話を出してしまったことを反省すべきだ。 教えたがる人は相手よりも知識を持っていると思っているから、「わからないなら教えてあげましょう」と腕まくりをして近づいてくるのである。教え魔が出てきやすい話題とは何か。スポーツなどは特にわかりやすい。以前も書いた記憶があるけど、若い女の子がプレミアリーグのことを話していた。その彼氏がすかさずありとあらゆる知識を披露するの

英語を学ぶべきふたつの時期:Anizine

英語の勉強をしている。毎日3時間くらい、英文法を一から学び、外国のニュースやインタビューを見てリスニング。写真家の、撮影についてのテクニカルな動画を見るのはどちらにも役に立つので一石二鳥だ。 気づいたことがある。こどもは何も考えずに言語を習得するからいいとして、中学生って日本語もまだおぼつかない時期には、不定詞の形容詞的用法なんてわからなかったんじゃないかということだ。それが、膨大な量の日本語と英語の蓄積を持った今なら驚くほど簡単に頭に入ってくる。つまり、外国語を勉強するな

コールド・リーディング:Anizine

新人の占い師が、目の前の客のコートに白髪がついているのを見た。 「あなたは祖父母と暮らしていませんか」 とすべてがわかっているかのように自信満々に言う。これは占いではなく観察から推測する、いわゆるコールド・リーディングだが、客の答えは違った。

冷蔵庫の中の言語:Anizine

「言語とはトランプのようなものです」と、信号待ちの老人は言った。 信号が赤の間にそれだけ言っていなくなったので、あとは残された言葉を自分で解釈するしかない。言語というのは、全員に配られたカードのようなもの。手札がワンペアの人もいればフルハウスの人もいるし、ポーカーをやっている人もいればセブン・ブリッジの人もいる。つまり「最小限の要素」ってことだろうね。 ツールがあればすべての勝負に参加することはできるが、手がいいか、どんなゲームをしている場なのかは別問題。そこを誤解すると

人が「生まれて死ぬ」とは:すべてのマガジン

人が「生まれて、死ぬ」とはどういうことだろうか、と、年齢のせいか、より強く考えるようになった。(何度も書いていることだけど、見出しや書き出しだけを取り上げて感想を言われないように、ここからは4つのいずれかの定期購読メンバーだけに向けて書くことにします)