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Anizine

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。
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記事一覧

仕事をする関係:Anizine・写真の部屋

またまた平林監督のマガジンの尻馬に乗るホース・ライディング案件です。関係ないですが、horse riding っていうのはイギリス英語で、米語では horseback riding と言います。皮肉っぽいイギリス人が「アメリカ人は『乗馬』という言葉だけを聞いても馬のどこに乗るかがわからないから、彼らは horseback riding と言う必要があるんだ」と言っていました。心底バカにしてますよね。 無駄な知識が増えたところで本題に戻りますが、平林監督は「その人に好かれたか

平林監督と五明さん:Anizine(無料記事)

尻馬に乗って、また平林監督の話です。彼は元々ストラテジーの人だったのですが、ある程度仕事をしてきたことで昔の「ガツガツしたムード」が少し薄れてきたように感じていました。一応先輩なので先輩ヅラをしてみようと思います。ヅラって顔の方ですよ。頭頂部ではなく。 今日、銀座の森岡書店でグランジ五明さんの展示を観てきました。五明さんというのはスゴい人で、心から尊敬しています。最近とても気になるのはネットなどで「質問をしまくる人」を見る機会が増えたことです。特にThreadsはフォローし

3/4チップス:Anizine・PDLB

あるフリーランスの友人が言っていたことです。 「会社員にはもう怖くて戻れない。会社がつぶれたりリストラされたらそこで終わりだから。就職したときに経営状態がよかったとしても、時代が変わる中で、数十年前に選んだ会社に自分の運命を預けるなんて恐ろしい」 フリーランスになってわかったのは、自分の全収入が途絶える可能性に何も手を打っていないのは無防備過ぎるということです。 昔なら「あら、いいところにお勤めね」という信頼があったはずの会社がいくつも経営破綻を起こしているのはご存じの

写真は仕事になるか:Anizine・写真の部屋

noteのフォロワーが5万人くらいいるのでご存じの方も多いはずですが、平林監督の言葉にはいつもドキッとさせられます。 これ、言い方がとても難しいのでみんな触れにくいところなんですが、最近よく「フリーランスで仕事をしたい」という内容の投稿に、でもまったく稼げない、とか、2万円と約束したのに払ってくれない、などというのを見かけます。でもそれは当然なんです。 自分が好きなことを仕事にしたいと思ったら、他の人も多分そう思っていて、その膨大な人々の中で自分にはどんなアドバンテージが

趣味と仕事:写真の部屋・Anizine

漁師ではないのに釣りをする人は「魚を釣ること」を楽しんでいるのでしょう。それが趣味というものです。 私にはいわゆる趣味と呼べるものがなく、絵を描いたり文章を書いたり、写真を撮ったりという、こどもの頃から好きだったことのすべてを『仕事』に変えてきました。そこには趣味であることへの物足りなさがあったのだと思います。あるとき、友人が仲間のオリジナルTシャツを作っていました。「ああ、そういうのも面白そうだな」と感じたのですが、趣味でする気にはなりませんでした。ブランドを作り、ロゴや

ヤンゴトある:Anizine

やっていないことや、できない理由を他人から聞かされるのが嫌いなんだなあと、ふと思いました。周囲の「あっという間に軽々と何でもやっている尊敬すべき人々」に慣れてしまっているからこそ、自分もそうでなくてはならないと反省します。いつやっているんだろうというほどの圧倒的スピードで次々と何かを作っては発表する人がいて、その労力は凄まじいものだと想像できます。 たとえばその「展覧会をやります」という投稿に「僕は学校の課題で忙しいので行けません」などとコメントする人がいます。作る労力と観

批判は何も生まない:Anizine

歌う人がいて 歌を聴いて救われる人がいて 歌うことで自分が救われる人もいて 素敵な歌があるよと教えてくれる人がいて いい歌を教えてくれてありがとうと言う人がいて 私も歌ってみようと勉強を始める人がいて、 そして、

結界のK:Anizine

寿司屋の一人息子が事故で亡くなりました。店の近所で起きたトラックの横転事故に巻き込まれたのですが、あまりに突然のことでしたから、大将の悲しみを目にした常連客はいたたまれなかったといいます。 三宿の交差点でホノカを待っていたシンジはアルバイトの給料日前であまりお金がなかったので、ガストか世田谷公園前のデニーズに行こうとしていました。インテリアショップの前のガードレールに腰掛けていると、足元の植え込みに黄色い蛍光色のマジックテープで止めるタイプの財布が落ちているのに気づきました

無料記事_『伝えるための準備学』古舘伊知郎著:Anizine

プロレス、F-1、報道ステーションなど、ただの実況だけではなく、その話術で様々な出来事を「記憶にとどめること」に貢献してきたという印象がある古舘伊知郎さん。私たちがF-1の名場面を思い出すときには必ずあの声がバックグラウンドで同時に再生されると思います。 私事であり、微かな繋がりを持ち出すのが野暮なのは重々承知なのですが、昔、私はTBSの『zone』というドキュメンタリー番組の総合アートディレクションをしていました。MCは柳葉敏郎さん(のちに東山紀之さん)。出演するのは番組

劣等感から自由になる:Anizine

ソーシャルメディアでのやり取りを見ていると、あの人は自分より偉いとか、下だとか、優劣にこだわる人が多く感じます。相対的な位置はつねに変化しますが、甲子園で優勝を経験した投手がいくら自慢しようと、あそこで優勝していない大谷翔平のほうが、今や格段に上の存在なのはご存じの通りです。 「人より上だ」と言いたい人の多くは、まず自分より下の集団を見つけてから話し始めます。その都合のいい不毛さに陥らないためには絶対評価を導入することです。「私は彼よりも背が高い」というのは相対評価であり、

テントの外にいたもの:Anizine+写真の部屋

「何か怖い体験をした話をして」と友人にお願いしてみました。 彼女が25歳くらい、アフリカに行ったときの話です。野生動物が出てきそうな草原に外国人観光客用のテント村がありました。安全であるとは聞いていたものの、若い女性の二人旅なので、そこに泊まるか、街の中にあるホテルに行くかは食事のあとで決めようということになりました。 大草原に沈んでいく美しい夕陽を見ながら美味しい食事とシャンパーニュを楽しんでいると、ここに泊まるのもいいかなと思ったそうです。テントとは言ってもキャンプで

感情への刺激:Anizine

ソーシャルメディアにはいくつかのプラットフォームがあって、それぞれを使い分けています。Twitterは友人と世間話をしたり、告知のためのリンクに使い、Facebookは仕事上の知人などの動向を知るために使っています。Instagramは最近アルゴリズムが変化して、あまり以前のように知らない人に情報が届く印象がなくなりました。Threadsは「おすすめ」という無関係な投稿が出てくるので、見たくないもの、読みたくないものが次々に表示されます。 そう考えると、自分がどんな集団に属

ワイパー250セット:Anizine

以前もそうだったのですが、本を書いている途中はどんなにつまらないことであってもソーシャルメディアに書くときに躊躇してしまいます。「これはちゃんとまとめて本に書こう」と思ってしまうからでしょう。私が書いていることはグにもつかない思いつきだけですが、まずタイヤとかワイパーみたいに部分的なものが頭をよぎります。それを新鮮なうちにソーシャルメディアに書きます。 本を書き上げるためにはタイヤとボディとワイパーとシートなどが一揃い、整然と組み合わされていないといけませんが、あとからメモ

モモグラ:Anizine

中学生の頃、気に食わなかったヤツをいじめていました。「桃山」という、スポーツも勉強もできなくて、モジモジしておどおどしたモグラに似た男でした。俺たちはそいつをモモグラと呼んで、退屈な毎日の憂さ晴らしをしていたのです。そういう我々も別に運動をするわけでも勉強をするわけでもありませんでしたから、人のことなど言えなかったのですが、矛先は自分より弱いモノに向かうのが必然です。 モモグラは学校からかなり遠いところに住んでいましたが、もう数軒先だったら隣の中学に行っていたはずでした。「