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教え魔とお見合い:Anizine

「教え魔が出てくる話題をチョイスしてはならない」と、信号待ちの老人は言った。もし面倒なことになっても、不用意にその手の話を出してしまったことを反省すべきだ。

教えたがる人は相手よりも知識を持っていると思っているから、「わからないなら教えてあげましょう」と腕まくりをして近づいてくるのである。教え魔が出てきやすい話題とは何か。スポーツなどは特にわかりやすい。以前も書いた記憶があるけど、若い女の子がプレミアリーグのことを話していた。その彼氏がすかさずありとあらゆる知識を披露するのだが、彼女はマンチェスターに留学していたときプレミアのトップ選手と付き合っていたという。イギリスにすら行ったことがない耳年増の彼は、彼女の方がプレミアに詳しかったことと、昔の彼氏の話を同時に知らされるというオフサイドトラップに引っかかってしまった。面白がってはいけないけど。

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「僕が知り合いを紹介しますよ」という人の話を真に受けてはいけない。だいたいそういう人は友人でもない知り合いを「便利な名刺ファイル」みたいに扱っていて、何かの時に役に立つとしか思っていない。想像できるだろうけどそこで(勝手に)ピックアップされた人はそんな話を持ちかけられてもおそらく何もしてくれないと思う。人に何かを頼む、頼まれるというのは互いの敬意を前提としたデリケートな作業なのだ。そこをミディアムになる立場の人はまるで理解していない。

最高の野菜を育てている人は最高の腕を持った料理人と契約して最高の料理にして欲しいと真剣に思っている。そこに「あ、僕の知り合いで野菜を作ってる人がいるよ」「シェフの友だちがいるよ」とインスタントに割り込むことの無神経さに気づかないのだ。

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Anizine

¥500 / 月

写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。