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HDRとモニタの校正

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#カラーグレーディング

(HDRに限らず)モニターのキャリブレーションをさらに本気でやってみる3️⃣

今回はLightspace HTPの機能をいくつか解説しよう。
Colourspaceも基本的には同じだと思って良いので、Colourspaceユーザーも是非参考にしてほしい。

まずはDisplay Charactarization。これは受像機、モニターやテレビなどの表示特性を厳密に計測する機能だと思えば良い。
ビデオ中でも触れている通り、Lightspace HTPでの計測の中心となる機能だ

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HDR、SDRじゃ見れません?

結論から言えばHDRのままではSDRのデバイスでは見れない。

が、だからといって全く見れないわけではない。SDRとしてHDR信号を見ることは出来る。
問題はルックの再現性だろう。

先ず勘違いしてはならないのは、HDRディスプレイとはなにか、である。

st2084/rec.2020を誤差なく完全に表示し、12bit以上を出せること・・などと言えば最も厳密だろうが、今現在それが可能なディスプレイ

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HDRはSDRよりも幅広い輝度情報を持っている、という大嘘。

HDR、SDRよりも幅広い輝度情報を持っていて素晴らしいのだ、というのをよく見る。

”想定する表示系”だけ見ればその通りではある。ST2084は0~10000cd/m2を想定しているし、HLGでも今のOOTFでは1000cd/m2を想定している。

では信号としてのそれらは一体どこまでの輝度情報を持ち得ているのだろう。

ここで1枚の写真を見てみよう

四月は君の嘘をHDR化し、それがSDRディ

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SDRの標準?

SDRの標準とはなんだろうか。
これは永遠に答えなど出ることはない。
なぜなら定義がされていないからである。

標準と見なされているものはある。しかし必ずしもそれが全てではない。
bt.709について言えばガンマはレガシー(1.9相当)であるし、bt.1886であればガンマは2.4だ。
余談だがDaVinci ResolveでREC.709(SCENE)を選択すると1.9相当のレガシーとなるである

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HDRプレビュー(疑似)、出来ました

HDRのグレーディングをするのにHDRでプレビューできないと困ったことになってしまうのは言うまでもない。しかしNLEによっては専用のボードが必要であったり、そもそもSDR環境しか用意できないという例もあるだろう。

このような場合、例えばst2084/rec.2020で出力していると、プレビューが非常に薄暗く、コントラストも無いように見えてしまう。

これはst2084で0~100%までリニアな信

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HDRでプレビュー、出来ません?

HDR映像を制作する方法はいくつかある。使用するツールもDaVinci Resolve、Baselight、RioやMistikaといったプロフェッショナル向けから、Vegas ProやEdius、FCPやPremiere/AE、TVMW7などの映像編集からハイアマチュアに向けたものもある。
なお、後者については編集機能の機能の一つ、としてカラーグレーディングやカラーマネジメントが統合されているた

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明るいSDRと暗いHDR、そしてOLEDという半端物

SDRの映像もテレビで見るときに明るさを上げコントラストやガンマ、彩度を強めてやるとHDRのような画になることがある。

そもそもSDRだからといって現実の輝度を100cd/m2でクリップなどしておらず(実際にそれをすると殆ど真っ白になるだろう)、実際には映像制作上でのさじ加減一つでそれは100000cd/m2にも200cd/m2にもなりうる。

基本的にここでより広く輝度レンジを保ちつつ、必要な

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HDR映像の作り方(その2)

今回はRAW素材を使ってHDR映像を出力してみよう。
今回用いるHDR形式はst2084/rec.2020(P3-Limited) regal level 10bit HEVCとした。
これは所謂HDR10に相当する。

まずはタイムラインにRAWクリップを配置する。詳細は以下で見ると良い。
https://i.imgur.com/snVkeqR.jpg

ついでプロジェクト設定からカラーマネジメ

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HDR映像の作り方(その1)

映像規格についていくつか述べてきたが、多分にこれを見る読者が求めるのは、鮮やかで美しいHDR映像、どうやって作るのかではないだろうか。

人によっては規格を数式で理解することが大事なのだ、正しい式を覚えろ!などということもあるかも知れない。
が、個人的にはその必要はないと考えている。大事なことは概念を把握することであって、式を丸覚えする必要などない。DaVinci Resolveを作りたいのなら別

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HDRという色空間とDolby Vision

まずHDRという色空間などない。タイトルにまでしておいて何を言うのか、というところだが、HDRという色空間はない。
とは言え送出用の色空間であるst2084/rec.2020もしくはHLG/rec.2020がHDRの色空間と見なすことは出来るだろう。
特殊な例を言えばst2084/P3(DCI)というものもある。これは映像制作時に用いるものだが、例えばネットフリックス等、このフォーマットを指定する

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色空間

SDRとHDRの大まかな違いや、伝達関数であるOETFやEOTF、いわゆるガンマについて述べてきた。
映像のダイナミックレンジとして考えた場合にSDRは狭いのか広いのかも全開触れた。

ここで新しい単語、色空間について見てみよう。
色空間とは画を作る際に使用する色と明るさの範囲を合わせた物を指す。
たとえばSDRで想定しているのは放送用規格(bt.709/bt.1886)であれば0.01~0.1-

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SDRはダイナミックレンジが狭い?

HDR映像とSDR映像を比較する際に、SDRでは表現できない色、やHDRだからこその鮮やかさ、という表現をよく見る。

4K HDR anime channelとしての発言でもこの表現はよく使う。
表示系が異なるので当然のことなのだが、勘違いしてはならないのは映像信号として考えた場合に本当にそうなのか?ということである。

先の番外編でも述べたが、SDRに輝度の定義などない。本質的にはst2084

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番外編:HDRは明るい?

HDR映像、明るくて鮮やかなことだと思う者も少なくない。
しかしそれは大きな間違いである。
SDRだって明るい画はいくらでも出せる。LCDならバックライトを明るくすればよいだけだ。
色も同じ。広色域パネルで表示すればそれは色がきつくなることだろう。

そもそもなぜHDRという映像規格が生まれたのだろうか。
SDRでは広いダイナミックレンジや鮮やかな色を定義することは出来ないのだろうか。

これは何

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なぜ今もガンマで歪まされた画を見ているのだろうか

前回こう締めた。

「しかし何故ブラウン管からLCDやOLEDといったデバイスになった今もそういった補正がのこっているのだろう?
LCDやOLEDもそういった出力特性の癖があるからだろうか?
これは明確にNOである。LCDやOLEDであればリニアな出力をすることは十分できる。」

そう。もうガンマ補正を使う意味はない。
にもかかわらず今もガンマ補正は残っている。
それは人の視覚の特性が理由である。

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