SDRはダイナミックレンジが狭い?

HDR映像とSDR映像を比較する際に、SDRでは表現できない色、やHDRだからこその鮮やかさ、という表現をよく見る。

4K HDR anime channelとしての発言でもこの表現はよく使う。
表示系が異なるので当然のことなのだが、勘違いしてはならないのは映像信号として考えた場合に本当にそうなのか?ということである。

先の番外編でも述べたが、SDRに輝度の定義などない。本質的にはst2084のHDRにすらそれは定義されていないとも見なせる。
所詮それは0-100%の信号であり、言ってしまえばグレーディングで100%を当てた部分がピーク輝度や色となる。そして最終的にそれらは表示機器に依存する。

同時にそれはSDRのダイナミックレンジなど映像制作時のさじ加減ひとつだということでもある。

画像1

夕日が沈む山を背景にした映像からカットしたイメージを見てみよう。
上はiPhone、下は業務用カメラで撮影したものである。どちらも同じsRGBであるが、下のほうが遥かにダイナミックレンジが広く、HDRとして使用できるものであることがわかるだろうか。
ハイライトを見ると分かりやすい。上の画像では山の輪郭が消し飛んでしまうほどに激しくクリップしているが、下の画像では夕陽の部分であってもまだ山の輪郭が残っているのが分かるだろう。
同じsRGB であり、どちらも間違いなく0-100%を使用した画である。それでもこれだけダイナミックレンジに違いがある。この究極がログやRAWであり、単純に表示系がこのイメージが持つダイナミックレンジに追いついていないというだけである。信号の時点ではSDRとHDRに本質的な差などないのだ。

しかし下のイメージではコントラストや輝度、色が控えめであるため、上を好むものも少なくないだろう。
が、一見派手で鮮やかに見えるそれも、あくまでSDRの狭い表示系でのみ通用することに注意したい。もちろん程度はあれども、本来調整するべき画は下側の画であり、映像制作に携わるなら意識しておきたいところである。

ログやRAW、またはCGやアニメであれば非常に幅広いダイナミックレンジを収めることが出来る。せっかくの豊かな表現をわざわざ潰すことは避けたいものである。

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