色空間

SDRとHDRの大まかな違いや、伝達関数であるOETFやEOTF、いわゆるガンマについて述べてきた。
映像のダイナミックレンジとして考えた場合にSDRは狭いのか広いのかも全開触れた。

ここで新しい単語、色空間について見てみよう。
色空間とは画を作る際に使用する色と明るさの範囲を合わせた物を指す。
たとえばSDRで想定しているのは放送用規格(bt.709/bt.1886)であれば0.01~0.1-100cd/m2が標準である。もう少し言えばディスプレイの最低輝度と最大輝度で、最大輝度のみ100cd/m2にしておこう、というのが実際の映像制作における事実上のスタンダードとなっており、これがSDRの標準的な色空間である。
HDRの場合、SMPTE ST2084ならば最大10000cd/m2、ARIB STD-B67ではおおよそ1000cd/m2となる。SMPTE ST2084では黒側は最低0.005cd/m2程度で良い、ともされている。
ちなみにこれらはそれぞれ配信やパッケージ向け規格、放送向け規格として用いられている。

とはいえSDRで100cd/m2といっても、映像制作者はその中で広いダイナミックレンジを保とうと創意工夫をしていることは言うまでもないし、そこがカラリストとしての腕でもあると言っていい。

ところで色空間とは今見たものが全てだろうか?
答えはNOで、様々な色空間が提案されている。
カメラメーカーはカメラメーカーごとに色空間を定義し、SDRでもAdobeRGBやProPhotoRGBといった規格が存在している。
これらはbt.709や1886といった、SDR規格を大きく超える情報を想定した0-100%のRGBやYUVの信号である。
単純にそれに対応した表示機器が存在しない、というだけで、業務用であれば例えばカメラメーカーの色空間に対応したモードや、必要に応じてLUTを用いてそれに対応することも可能である(表示しきれるかどうかは別だが)

ちなみに映像系で最も幅広いダイナミックレンジと色域をカバーするものはなにか、というと定義が難しいが、一つ例を上げればCIE-XYZやACESが挙げられるだろう。
st2084/rec.2020も相当に広い色空間であるが、これらはそれすら上回る色域を持っていたりもする。機会があればいずれ言及したい。

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