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優しい人の格闘技の向き合い方 ハードル(障害)の話

 今日も今日とて柔術は楽しい。大会の翌日はやりたいことがたくさん出てくるので、コンディション的には休んだ方がいいのについつい練習に行ってしまいます。ここはむずかしいところ。とにかくケガに気を付けます。

 今日は、競争意識の低い人、優しい人がどういったマインドで格闘技と向き合うのか。自身の経験を基にまとめてみました。


1.格闘技に向いている人のメンタル

 格闘技は相手をやっつけるものです。暴力的な人が向いているとは思いませんが、最低限の競争意識(コンペティティブネス)や負けず嫌いな気質、自己顕示欲、承認欲求、闘争心、相手の嫌がることをやるマインド、といったものが必要にはなります。これらが全くないゼロ人はさすがに格闘技はやめた方がいいかもしれません。特にスパーリングのある格闘技は。
 しかし、男なら(今の時代この言い方はアウト?)誰もが強さへあこがれるものではないでしょうか。個人差はあれど、この気持ちはみんな持っているものだと思います。少しでもこの気持ちがあるなら、十分格闘技は向いていると思います。

2.格闘技は弱い人のためのもの

競争意識の低い人、優しい人

 「強くなりたい気持ちはある。でも、相手を倒したり、やっつけたり、壊したり、痛めつけるのは苦手。勝ちにこだわりすぎてギスギスしたくない。試合は怖い。同じジムの人を殴ったり極めたりできない。優しすぎて相手のことを気にして本気になり切れない。競争心が弱い。気が弱い。優しい。スパーで相手に悪いと思ってしまう。」

 こんな人は少なくないと思います。格闘技ジムにいると麻痺しますが、人を殴ったり投げたり極めたりするのは躊躇するのが普通です。語弊を恐れずいうと格闘技は、やっていない人からすると異常なものです。

 では、普通の人は強くなれないのか、というとそんなことはありません。格闘技は強い人だけのものではありません。むしろ、格闘技は弱い人のためのもの だと思います。強い人は格闘技なんてやらなくていいので。

 ここでの「強さ」とは、単純な格闘技の競技力だけではなく、弱い自分に向き合う精神力、積み重ねる継続力、人間力、根本的な体力、環境を作る力、行動力、人を巻き込む魅力、などあらゆるものを含んだ「強さ」です。

3.競争意識の低い人の格闘技への向き合い方

 この項は、根っから戦うのが好きでスパーで相手の嫌がることを躊躇なくできる人には必要ないかもしれません。

 私自身は競争心が強い方ではなく、争いごとが嫌いで、学生時代の部活でのレギュラー争いなどは本当に苦痛だった記憶があります。自分がレギュラーになるよりも仲のいい同級生の活躍のほうが嬉しかったです。ケンカも一度もしたことはありません。格闘技をやっていても練習相手を殴るのは嫌でしたし、サブミッションを極めるときもどこか悪いような気がするときがあります。そんな自分がどういうマインドで格闘技を続けてきたのか、を伝えていきます。参考になればうれしいです。

①技術にフォーカスする

 ありきたりですが「敵は相手ではなく自分自身」のマインドです。相手が憎くて試合をするわけではないのです。フォーカスするべきは自分自身の技術です。やるべきことを積み上げるだけです。「はじめの一歩」の主人公一歩のボクシングへの向き合い方のようなイメージです。
 あとは、相手を倒すことよりもコントロールすることにフォーカスするのもいいです。寝技であれば、サブミッションは相手のコントロールの延長にあります。十分に相手をコントロールできた状態で出すサブミッションは危険が減ります。腕十字は「腕十字固め」という抑え込みなのです。コントロールする意識を持つと、極めを躊躇してしまう人もスパーがやりやすくなると思います。打撃も同様。相手を壊すよりも、距離とプレッシャーと適切な打撃を意識して相手をコントロールすれば必要以上に打ち込まなくても練習になるスパーができます(自分は無理でした)。

②自分の強くなりたい気持ちを確認する

 自分がなぜ格闘技を始めたのか、その時の気持ちを思い出しましょう。健康やダイエットのためもあったかもしれませんが、そこには「強くなりたい」気持ちがあったと思います。その気持ちを大事にしましょう

③相手のハードル(障害)となることは義務

 これが今回の記事で一番書きたかった内容です。 

 スポーツ(練習・試合・競技・柔術・武道)とは、「ハードル(障害)を越えることを楽しむもの」です。個人競技でも団体競技でも球技でも対人競技でもそれは同じです。水泳は水やタイムがハードル、野球は相手チームの投げる球や守備や打ってくる打者がハードル、格闘技に関しては相手の攻撃やディフェンスがハードルになります。相手のハードルになること、それはスポーツにおける義務とも言えるでしょう。これをしなければスポーツは成り立ちません。

 相手は倒すべき敵ではなく、スポーツを楽しむ材料となるハードルを提供してくれるパートナーです。そして自分も相手のハードルとなる義務があります。お互いがハードルになってそれを越えるのを楽しむのが格闘技です。

 この考え方をするようになってから、スパーや試合で罪悪感を感じたり、躊躇することが減りました。

相手が戦うことを放棄したらスポーツは成り立ちません。相手のハードルになるのは義務です。

④取り組み方を変える

 強くなりたいけど、どうしても格闘技の相手を倒す部分が苦手な方はこういったアプローチもアリです。

・打撃なしの競技に転向
・スパー無しの競技に転向(合気道、古武道系、キックボクササイズ、柔術の打ち込みだけ参加)

 自身もジムの人と打撃のスパーをするのが苦手でした。試合はともかく練習でジムの人の顔面を殴るのがどうにも苦手で、マスでもほとんど当てないスパーになってしまいました。寝技と違って、組んでコントロールできないので自分には難しかったです。「打つのも打たれるのもお互い様」の精神でやればいいと思うのですが、どうしても苦手な人もいるでしょう。

 それもあって今は柔術に専念しているのですが、自分にはこっちの方が色んな意味で合っていると感じてます。

 相手を殴る覚悟がある人しか格闘技はできない、ということはありません。自分なりのやり方で格闘技を楽しんで強くなりましょう。

⑤知識を付ける、実力をつける

 練習のマナー(ケガのリスクの高い技、必要以上の痛め技を避けることなど)を知っておくことも大事です。やってはいけないことが明確になればスパーに集中できます。また、相手を十分にコントロールできる実力をつけることができれば、躊躇する気持ちは減ると思います。例えば、子ども相手にスパーするときは余裕を持ってできているはずです。

まとめ

 何度も書きますが、格闘技は強い人だけのものではありません。競争心が弱い優しい人でも強くなれます。ケガに気を付けて、技術に集中して、一生懸命スパーしましょう。それが相手のハードルになります。相手のためになります。相手へのリスペクトと感謝を忘れずに練習すれば、相手があなたに対して嫌な感情を持つことはほとんどないでしょう。(もしそれで嫌な感情を持たれるとしたら、あなたに問題はありません、相手の問題です)

 「自分は気が弱くて格闘技に向いてないんだ」となってしまう人、そんなことはありません。少しでも強くなりたい気持ちがあるなら格闘技には十分向いています。格闘技向けのメンタルの持ち主でもコツコツ練習しなければ強くなれません。逆に競争意識が弱くて優しい人でもコツコツ積み上げることができれば強くなれます。格闘技は弱い人のためのものです。

 自分なりの格闘技の向き合い方を見つけて格闘技を楽しみましょう。

2023/11/7 アンディ

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