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「悔しさ」は柔術に必要か。しんどくならない柔術のメンタリティ(全文無料)

 今日も今日とて柔術は楽しい。

 今日は柔術のメンタリティの話。これぞ柔術哲学なトピックスですね。長いですが、柔術をやっていてしんどくなった経験がある人はぜひ読んでみてください。自身の経験を経て感じたことをまとめてみました。


1.柔術をやっていて苦しくなる場面

 柔術は楽しくて人生を豊かにしてくれるものだと信じていますが、柔術をやっていて苦しくなる場面もあります

苦しい場面2種類

①柔術そのものに関する苦痛
→練習がきつい、試合で勝てないのがつらい、強くなれないのがつらい。ケガで練習できないのがつらい
②柔術以外の部分の苦痛
→人間関係が大半、道場や指導者とのトラブル、会員同士の不仲

2.苦しさの原因と解決策

苦しさの原因2種類

①柔術そのものに関する苦痛
→ケガも含め、「強くなれない事」が苦しさの原因
②柔術以外の部分の苦痛
→人間関係のトラブルの大半の原因は「嫉妬」にある

 実は二つとも解決策は同じです。強くなれば両方の苦痛が解決します。①はシンプルに強くなれたら解決します。②についても強くなれたら嫉妬しません

 では、「強くなれない人にとっては柔術は苦痛になってしまうものなのか?」というとそんなことはありません。
 強くなれればそれがベストですが、強くなるのは運や環境の要素も大きく、相手がいる競技なのでだれもが試合で優勝できるとは限りません。しかし格闘技は強い人のためだけのものではなく、だれもが楽しめて人生を豊かにしてくれるものです。

 そのためのマインドセットについて書いていきます。

3.芝本先生のインタビュー

 全日本柔術選手権、ヨーロッパ選手権、アジア選手権などのビッグタイトルを何度も取得した日本ブラジリアン柔術連盟殿堂入りの芝本幸司選手のインタビューがとても良いです。人によっては当てはまらないこともあるかもしれませんが。自身はこのマインドセットで楽しく柔術に取り組むことができるようになりました。そしてこのメンタリティの方が上達もしやすくなったと感じています。

【JBJJF】8月6日、全日本で復活──芝本幸司─02─「ケガの是非など、実はない。自分がどうするかだけ」 | MMAのインタビューと試合レポートならMMAPLANET

先を越された、悔しいというような感情はあまり自分には必要ないというか、そういうことを思ってしまうと純粋に強くなるための練習が私の場合はできないんです。人と比べて結果だけを追ってしまうと、すごく精神的にきつくなってしまう。あくまでも、自分のベストの成績をつねに出せるように考えています」

プラスにするかマイナスにするかは自分の考え方次第ですし、今後の結果次第ですよね。世界チャンピオンになれば、『あのケガがあったから』と言えるでしょうし、この後負け続ければ『あのケガのせいで』と言うんですよ。そういうもんじゃないですか(笑)」

「ですから、このケガが良かったのか悪かったのかということの意味なんて、実はないんです。自分が今後どうするかだけだというのは分かっているので、頑張るのみですね」

4.悔しさは柔術に必要なのか

「悔しい」と感じること自体に意味はない

 以前の自分は「上達のためには悔しさは必要」「負けず嫌いでなければ強くなれない」「悔しさをバネに頑張る」「相手に負けたくないという気持ちが大事」といった考えがありました。しかしこの考え方をしているとしんどくなってしまいました。

 実際、負けると悔しいです。試合はもちろん、練習でもやられると悔しい気持ちになります。しかし語弊を恐れずいうと、悔しさというこの感情そのものは上達のためには不要です。悔しいと感じること自体に意味はありません。「悔しい!」と気持ちを高ぶらせるだけでは上達はしません

 悔しい気持ちをモチベーションに変えて、より質の高い練習をすれば上達します。でも、悔しさを感じなくとも質の高い練習ができるなら、それがベストです

①ベスト:悔しさなしで質の高い練習をする、自分のできる範囲で強さを目指す。
 →柔術が苦痛にならずに健全に強くなれる、楽しめる。

②ベター:悔しさをバネに質の高い練習をする
 →強くなれるが、人によっては柔術が苦痛になることも

③ベター:悔しさなしで強くなることは二の次で楽しむ
 →これも柔術の取り組みの形として素晴らしい。でも強くなれないと先述の「1.」「2.」で書いた苦しい場面に遭遇することもある

④ワースト:悔しさが強く柔術が嫌になってやめてしまう
 →これが最悪。②の人はこれになるリスクが高い。

 現実では全く悔しさを感じないのはほぼ不可能ですし、全く悔しいと思わない人だと強くなるのは難しいでしょう。実際は上記のように明確に分類することは難しくグラデーションがあります。①寄りな人、③っぽい人、①と②の中間ぐらいの人、みたいな感じになると思います。できる限り①に近づきたいですね。

4.技術に集中せよ

 今の自分のマインドはここです。「相手」「負けたという結果」「悔しさ」といった要素にフォーカスするとしんどくなります。人によってはそこにとことん向き合って自分を鼓舞する人もいるかもしれませんが自分はそれをやると柔術が嫌になるのでしません。

 自分は「技術」にとことん向き合うよう意識しています。負けた結果や悔しい気持ちよりも、「やられてしまった技術、うまくいかなかった攻防、失敗した技」に向き合います。その方がメンタルとしても健全ですし、純粋に強くなる練習ができて上達につながると思っています。

 試合相手も練習相手も敵ではなく、柔術というゲームを楽しむ障害(ハードル)を提供してくれる存在です。相手を憎く思ったり悔しさを感じる必要はなく、ただ「ハードルを越えること=技術」に集中すればいいのです。

パウロミヤオのこの言葉を送ります。

僕は人を相手に戦うわけではなく、その人が使うポジションやテクニックを相手に戦うんだ

5.良い比較をするべし

他人よりも過去の自分を越える

 「(他人を気にせず)技術に集中せよ」の言い換えは

「他人と比較するよりも過去の自分と比較せよ」

です。この考え方をすると嫉妬や悔しさで柔術をやることがしんどくならずに、健全なメンタルで上達を目指すことができます。

 他人の技術や取り組みを比較する(参考にする、真似る)のはいいです。「あの人はなぜ強いんだろう、その秘訣はなんだろう、どんな練習をしているんだろう」と考えることは上達につながります

 しかし他人の実績や強さや成長速度や帯を比較してもつらくなりますし、その比較は上達にはつながりません。

 「昨日の自分よりうまくなっているか」という心持ちで柔術に取り組むのが推奨です。

6.まとめ

「強くなる」(できる範囲で強くなることを目指す)
「技術に集中する」
「他人よりも過去の自分と比べる」

実は全部一緒のこと。

 こちらの記事を読んで、苦しい思いをすることが減ってより楽しく柔術へ取り組めるようになったらうれしいです。

2024/4/3 アンディ

追伸 やっぱり他人との比較や悔しさも必要?

 世界のトップを目指す柔術家、チャンピオンを目指すプロ選手は、他人との比較や悔しい感情も必要かもしれません。競技者として自分の強さがどこにあるかを客観的に見ることは大事です。限られた現役生活の中でトップを目指すには、悔しさや焦りによって自分を鼓舞することもあるでしょう

 「選手は悔しさが必要で、趣味でやってる人は悔しさが不要」という単純な話ではないですが、各々で自分なりのメンタルセットをしていく必要があるのだと思います。

 ただ、一般的な柔術家が強さを目指しつつ柔術を楽しんで人生を豊かにしていくのならば、本記事で書いたようなマインドセットの方が健全だと思います。少なくとも自分には合っていました。それに芝本先生がこのようなマインドで強くなってあることが、強さを目指す上でもこの考え方が有効だと証明されていると思います

参考記事:

芝本幸司かく語りき!トップ柔術家の名言から読み解く幸せになる方法 | 三角絞め研究所 (triangle-choke.tech)

【JBJJF】8月6日、全日本で復活──芝本幸司─02─「ケガの是非など、実はない。自分がどうするかだけ」 | MMAのインタビューと試合レポートならMMAPLANET

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