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やっぱり4つ打ちが好き BTS、藤井風、ドージャ・キャット、Chic、STAYC(ステイシー)、MAXの6曲に心弾む理由


MAX「ブルーベリーアイズ」

「ブルーベリーアイズ」は、まずセブンスコードで始まるイントロのコード進行に耳を奪われる。4つ打ちのリズムに乗せて、ループするコーラスとエレピのコード。そのままサビまで繋いでいく。

この曲はMAXが身重の妻を思って作ったという。MAXの想いや愛と幸せがあふれ出していて、聴いているこちらまで幸せな気持ちになる。

この曲にはBTSSUGAがラップで参加している。
お恥ずかしながら、この曲でSUGAを知り、徐々にBTSの曲も聴くように。「Butter」は横目ならぬ横耳でスルーしていて、実にもったいなかった。

BTS「Butter」

「Butter」をピアノアレンジして弾いてみた。短い音型を少しずつコードを変えて繰り返す「ループ」で構成されている。(これは同日に発表された藤井風「きらり」も同じ)

そしてエモい曲にはお決まりのペンタトニックスケール。駆け上がるコーラスやサビのメロディーなど、ここぞという決め所に登場する。

とにかくキャッチーなフレーズが繰り返されるので耳に残るのは間違いない。でもそれだけではなく、サウンドクオリティも半端なく高いのだ。ビョンビョンいうシンセベース、リフを刻むリード楽器など音色のエディットから、ダンス、MVの見せ方まで計算し尽くされている。世界を席巻しただけあって、一分の隙も無い。

BTSは緻密に練られた「売れる・魅せる音楽」のお手本のよう。藤井風「きらり」と似たような音作りとサウンド構成にハマり、たちまちスルメ曲となった。

藤井風「きらり」


藤井風「きらり」はBTS「Butter」と同じく、短い音型に少しずつを変化を加えて繰り返す「ループ」で構成される

重めのバスドラで始まり、クライマックスに向かって少しずつ重ねられるコード楽器、深くコーラスの掛かったエフェクトの雰囲気、そしてサビのメロディーなどキメ所に登場する「ペンタトニックスケール」も同じ。

「きらり」にはラップパートはないが、間奏から大サビの流れで緩急が付けられている。POPで小難しくは聞こえないが、実はジャジーなコード使いでピアノで弾いても実に楽しい。明るくてキャッチー、心弾むサウンドなのは間違いない。

「きらり」「Butter」のサウンドに共通するはブルーノ・マーズマイケルのようなファンク味。併せて80~90年代のSAW(ストック・エイトキン・ウォーターマン)のディスコミュージックを彷彿とさせる。とにかく音色がちょっぴりチープで明るいのが特徴だ。

ドージャ・キャット「Say So」


ドージャ・キャット「Say So」も、「Butter」と同じ手法で構成されている。4つ打ち、逆循環進行、ペンタトニックスケール、4度進行のオンパレードだ。(音楽専門用語の説明は割愛。気になるワードはネットで調べてみてください。文章で読むより、音で聴いたほうがわかりやすいです)

彼女がモチーフにしたと思われる(と勝手に想像)Chic「GoodTimes」は1979年の作品。いかにもナイル・ロジャースなサウンドも、ドージャの手にかかれば、キュートなLAガール風POPミュージックに。

余談だが「Say So」藤井風が自分のグッズ発送の梱包作業中、BGMで流していた曲。ジャズの定番コード進行であるツー・ファイブ・ワン進行のバリエーションである逆循環進行。経過音に代理コードをよく使うのも、彼の親しんできたジャズに由来するものだと予測している。


Chic - Good Times (Atlantic Records 1979)


シック「グッドタイムス」は「Say So」を聴いて、すぐ思い浮かんだ曲。キーといい、ギターのカッティングフレーズといい、テンポ感といい「グッドタイムス」のフレーズをサンプリングしているのかと思った。

ドージャが「Say So」のMVで見せるキュートなファッションは、まるで映画「オースティン・パワーズ」の登場人物のよう。60-70年代風のレトロな雰囲気だ。「Say So」と「グッドタイムス」のコード進行は若干異なるが、モチーフにしたのかもしれない。

映画「オースティン・パワーズ:デラックス」




STAYC(ステイシー)-STEREOTYPE


STAYC(ステイシー)は、2020年に結成した韓国の6人組女性アイドルグループ。プロデュースするのは韓国の作曲家コンビ「ブラック・アイド・ピルスン」。彼らはTWICEが初めて日本の紅白歌合戦出場を決めた代表曲「TT」を手がけている。

「STEREOTYPE」にも上の曲たちと同じく「逆循環コード進行」「ペンタトニック・スケール」が使われている。BPMはK-POPらしく速めだが、サウンドデザインが80‐90年代ディスコミュージック的
昨今、K-POPのアレンジを聴いていると、80‐90年代を感じさせるものも多い。TR-808に代表されるLo-Hiなリズムトラックの音色、チープに響くシンセリードやキラキラシーケンスなどだ。STAYC「STEREOTYPE」では、これらが随所で聴かれる。

そしてコードが「逆循環進行」。これは「Say So」と同じで、いわゆるジャズの定番コード進行であるⅡ→Ⅴ→Ⅰ(ツー・ファイブ・ワン)のバリエーション。ジャズの定番コード進行であるツー・ファイブ・ワンに比べると、終止に向けての調性感が、やや弱め。そのため、調性がどこへ行くのかわからない浮遊感があり、何度繰り返して聴いても心地よい。
ブラックミュージックで多用されるだけでなく、さまざまなジャンルでよく使われている。サンプリングしてループで使うパターンも多い。

TWICE
の初期三部作など、数々のヒット曲を生み出してきた「ブラック・アイド・ピルスン」。チェ・ギュソンラドの二人から成る彼らが、どんな音楽ルーツを持つのか気になった。

インタビューによると、ラド子どもの頃からブラックミュージックに親しんできたと答えている。

――子供の頃はどんな音楽を?
ラド:黒人音楽に親しんできました。スティーヴィー・ワンダーや、マーヴィン・ゲイなどです。 

https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2123969

ラドは、彼自身もシンガーだった経歴がある。これは以前の記事で書いたが、TWICEのプロデューサーであるJ.Y.パーク、Sexy Zone「RIGHT NEXT TO YOU」の作曲者であるスティーブン・リーと同じ

最近のK-POP界で自分のアンテナに引っ掛かる楽曲は、アメリカで音楽を学んだコンポーザーが手掛けたものが多い。そして彼らは、もれなくブラックミュージックの洗礼を受けている。ラドは30代半ばだというから、おそらくモータウンあたりからジャム&ルイスなんかも聴いていそうだ。


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上記したこれら6曲の共通点は「逆循環コード進行」「ペンタトニック・スケール」。そしてサウンドの音作りが80‐90年代ディスコミュージック的だということだ。

音楽の流行も「20年周期?」


ファッションや音楽の流行は「20年周期」で繰り返されるという。


音楽も最近、耳にするものは80‐90年代の楽曲スタイルがリバイバルしているように感じる。もちろん、古い音楽スタイルをそっくりそのまま、というわけではない。主にリズムトラックを現代風にアレンジし、リミックスしたようなサウンドがよく聴かれているようだ。

デジタル機器とDAWの普及により、アレンジの幅は広がった。それでも変わらないものは、やはり「人間の歩く速さと鼓動が基本のビート」と、「コード進行」なのだ。

そして自分の耳に留まる音楽も、結局のところ「コード進行が肝」。これは子どもの頃からそれほど変わっていない。音楽を深掘りしていくことで、あらためてリズム、調性、ハーモニーという音楽の三要素への原点回帰をしたような気がする。


<おまけ>

" MIND CIRCUS " Cover Version (OriginalSong by Miki Nakatani) - Tokimeki Records feat.ひかり


坂本龍一作曲、中谷美紀が歌っていた「MIND CIRCUS」のカバー。コード進行、転調、使われている楽器の音色も期待を裏切らない展開。

子どものころ、教授の作る映画音楽に何とも言えない魅力を感じた。こういう音楽を作ってみたい、ひも解いてみたいと進路を決めたことを思い出す。
令和になっても、相変わらず「浮遊感のあるコード進行」「ペンタトニックスケール」を使った楽曲に惹かれ続けている。



ジャンルを問わず音楽に関するあれこれ

藤井風さんのこと、いろいろ書いてます



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