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まったくの素人が彫塑(ちょうそ)で藤井風フィギュアに挑戦する<第3回>


立体感を出すのがこんなに難しいとは


デッサンは、どこに影を付けたら立体的に見えるかを把握するための練習。だからいくつかデッサンしてみるといいよ。特徴もつかめるし。クロッキーとの違いは、影のできる場所をきちんと見ること

フィギュア作りで肉付けが上手くいきません。なかなか左右対称にバランス良く作れない。

「どうすれば上手く立体感を出せるのか」と質問したところ、義母から返ってきた言葉です。


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1月10日の時点では、こんな感じ

骨格を知ることから

わたしが頭をひねっていると、義母は骨格模型(いわゆるガイコツ人形)の頭部を出してきました。(義母はこういうものをたくさん持っています。)

頭蓋骨は目の部分に大きく穴が開いてて、そこにまぶたが乗っているの。だから、下まぶたの上に、上まぶたが被さるようになっているね。眼球も丸いから、まぶたは緩いカーブになる。黒目の部分より目頭と目尻はへこんでいるはず。自分の顔を鏡で見ながら、眉毛とまぶたを触ってみて」

「目尻の辺りまで、カーブを描きながら膨らんでいます…」

「まぶたの上は眉毛の端あたりまで骨があって、目尻からこめかみにかけてはへこんでるよね。で、この人は眉毛の上がかなり膨らんでるから、もっと粘土を足して

「ネアンデルタール人みたいにですか?」

「そうそう、この人は特に。凹凸がはっきりしてて、外国人みたいだし」


「眼窩(がんか)と眼球のバランスが悪いというか、なんだか目が難しいんですよね。風さんの目はパッチリしていてとてもきれいな目なのに、あまり似てない気がするんです」

「あんこさんは黒目が全部見えてるけど、この人はもう少し幅が狭くてアーモンド型の目だから、もう少し黒目に上まぶたがかかり気味じゃない?」

「なるほど。目の幅が広すぎるんですね」

「みんな自分の顔は覚えてるから、ほとんどの人が作っているうちに自分の顔に似てくるものなのよ」


以前から、「肖像画は作者に似る」というのが義母の持論。確かに義母の描く人物画や作った人形は、心なしか彼女に似ています。

「二重のラインと眉毛は、後から書き足せばいいし、今は適当でいいから。後は目玉を大きめに入れておくと、ちょっと人間らしくなるよ」

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制作に使うツールは3種類。市販の金属ヘラ1本に、木製の二本はかぎ針編みの針を削って作った義母のお手製。話によると彫塑用粘土は東急ハンズ新宿店でしか買えないらしい。手で温めると柔らかくなり、放置しても乾くことがない特殊な素材。何度でも成型し直すことができる。


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一番上の金属製のヘラは市販されているそう。下2本の木製ヘラは義母のお手製


なかなか似てこない


「どうすれば、そっくりに作ることができるんですか?」

「そんなのは、プロの彫刻家や人形師でも難しいわ!」

どうしてプロでも難しいんですか?デッサンを描けば、写真のように描ける人でも?」

「写真みたいに描くには、コツがあるんだもの。その人なりのコツなんだろうけど。立体感を出すための木炭の使い方とか、鉛筆での線の引き方とか」

「じゃあ、それさえもできなければ、そっくりには作れないですよね…」

「そっくりに作らないとダメなの?」

「生きているみたいに、そっくりにしてみたいんです!!」

「それはすごく難しいけど、その想いを込めるのが大事!

「そうなんですか?」

「そりゃ、そうに決まってるでしょ。『この人を描きたい、作りたい!』という思い入れがないと」

「思い入れがないと、どう違うんですか?」

愛情が感じられないんだわ。実際、『自分の子どもを描いて』とか『人形にして』とかはあったけど、描いたり作れても、モデルに何にも思い入れがないと、今ひとつな仕上がりだしね」

「でも、街角でよく『似顔絵描きます』とか、有料でやってますよね。デフォルメしたイラスト調のものをよく見掛けますが、彼らはどう描くんですか?」

あれは自分なりの解釈で特徴をデフォルメして描く方法じゃないかな。そのデフォルメの仕方も色々あるし。それがまた、その人の個性になって面白いんだけどね。スピードもいるし肖像画とは、またちょっと違うジャンルね」

「じゃあ、全く別ものなんですね」

「そうそう。でもよく見て特徴をとらえて描くという点は同じ」

「なるほど…そういうものなんですか!」

「肖像画や人形は、じっくり時間を掛けるんだから、そのモデルに対する愛情や思い入れがあるほうが、いい作品になるに決まってるでしょ」

「そりゃ、そうですね。だったら自分で作るしかない…」

「そう!この人を作りたい!その思いが強いことが大事」

「と言うことは…技術だけじゃないんですね。ワタシ思い入れは充分あります(笑)」

「わたしは、そういう風に誰かのファンになったことがないから、わからないけど(笑)だいぶ見えてきてるんじゃないの?最初なんだから完璧を目指さず、何体でも作ってみたらいいわ。材料はまだたくさんあるんだし」

「量産するのは、まだ無理だと思いますけれども…」

「まあまあ!何体でも!納得できるまでやってみて」

「ありがとうございます!この美しい手も再現したいと思っているので、よろしくお願いします!」

ということで、次回はボディの設計を教わることに。「顔は仕上げるつもりで作ってきて」とのことでした。


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風さんの顔の中で一番特徴的で難しいのはどこか?義母曰く

「目と鼻!」

だそうです。


この後、また左右の肉付きとバランスを修正してもらいました。

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まだまだ道のりは果てしなく遠いです。

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鼻と口の形を下から見上げるためのスクショ。

義母と「まるでミレー作『オフィーリア』へのオマージュのようだと盛り上がりました。


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ジョン・エヴァレット・ミレー『オフィーリア』

監督は藤井風さんを水に沈めることで、何を表現しようとしたのでしょう。「ハムレット」の中でオフィーリアは悲しみのあまり小川に身を投げて死んでしまいます。尼寺へ行け?水の中で眠る?それとも…。

2021年事始め。これから定期的に”藤井風フィギュア”が完成するまでの記録を綴ります。


藤井風さんのこと、いろいろ書いてます


画像引用:藤井風公式YouTube、藤井風公式twitter、藤井風公式Instagram


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