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#17 必然を生きる日々

「必然って信じる人ですか?」

先日、唐突にこう聞かれた。
転職するかもしれない企業での社長面接でのことだった。

わたしは必然や縁なんかに
物凄いシンパシーを感じて生きてきた人間なので
すぐにでも大きく頷こうとしたが
いやまて、今面接だった。しかも社長面接。
そう思い出して、でも頷きを止めることも間に合わず
なんだかすごく溜めたような頷きになってしまった。
そして、
「・・・そうですね・・・・、信じてます」
と絞り出した。

社長がどう感じたのかはわからないが、同席していた
人事のトップの方と目を見合わせにっこりと笑った。

よかった、のサインなのだろうか。


毎日更新をするつもりで2週間少し更新していたが
実は転職に向け本格的に動いていることもあり
なかなか書く手が進まなかった。
40も手前になり、自分のキャリアビジョンを再度見直すなんて
寝耳に水というか。なんと言うか。
でも、わたしの人生に必要なタイミングで
必要な出来事だと確信している。

まさに、必然だ。

新卒から数えて3社目にあたる現職は
大好きな自慢の会社。
尊敬できる仲間と共に生きてきた9年間は
その時目の前にある大きな課題に挑み続けた日々で
まさか自分が転職するだなんてこれっぽっちも思ってなかった。
でも、それはやってきた。

それでも、社長面接前までは
転職することに迷いがあった。
大いにあった。
でもその理由、つまりなぜ迷っているのかは
まるで大きく滲んで広がってしまったシミのようで
どこからが始まりで、どこまでがそうなのか
自分でもよくわからなかった。

面接の前の週、めずらしく恋人と電話で話した。
新卒から17年勤務してきた会社から一昨年転職をした彼に
何気なく面接に行くんだ、と話したところ
「会社、辞めたいの?」と直球で聞かれた。
その時わたしは、即答出来なかったのだ。
するとなんの容赦もなく
「だったら辞めない方がいいよ」と彼は言い放った。
正論でしかないが、その容赦ない感じが苦しかった。
理由が滲んでる、言葉にならないものを抱えてたのは
きっともう何年も前からで
もうこの会社じゃないのかもしれない、と感じ始めた自分を
わたしはどこかで抑え込んできたのだ。
でも、それがもう利かなくなっている。
そのなんとも言えない大っきく重くどこからなのかすら
わからないものを、上手に説明できなければ
転職する資格すらないのだろうか。
そんな事言われたわけじゃないのに、気がついたら泣いていた。

優先順位付けなよ。
あと、この社長を支えたいとかついて行きたいとか
そう思えるなら決めたらいい。

電話口の彼がそう言ってくれたことは覚えているが
問題解決で全てが平和になると思っているところを目の当たりにし
なんて男性的な脳なのだろう、彼は。と思いながら
ありがとう、とぼんやり伝え電話を切った。
その後で、寄り添ってほしいかもなんて淡い期待をもって
話し出した自分に気がついて、うんざりした。
期待は御法度、わたしのルールなのに。

この社長、すごい人だった。
わたしは面接ではじめて泣きそうになった。
雇うかどうか、よりも、
わたしの人生を真剣に考えてくれているように感じた。
こんなにもわたしの人生を大切にされた面接は初めてだった。
と、同時に
滲んでる、言葉にできない。なんていう生温さで
向き合って座ってしまった自分を大いに恥じた。
このタイミングで、この方と出会って
わたしが自分の人生と向き合う事も、全部決まっていたような
そんな気がした。

必然って信じる人ですか?という声が
ずっとどこかに残っている。


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