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The Planet Magazine Wombat

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ライアル・ワトソン博士によるとWombatとは世界で一番役立たずの動物だそうです。20世紀に4冊だけ丸い地球のプラネットマガジンWombatは雑誌として講談社から刊行されました。…
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#貨幣制度

貨幣に対する考えを私たちは変えられるか。それが社会に関する究極的な問いである

「究極的な問題は、貨幣を私的に所有可能な力とみなしがちな私たちの思想を変革できるかどうかなのである。古代のギリシア語で貨幣を表す「ノミスマ」と言う言葉は、本来制度を意味していた。そして、貨幣とは長らく金が象徴してきたような神秘的呪物ではなく、法のような制度であるとするならば、貨幣の力は近代法と同様に、自由、平等、公正の民主主義の原則に従って行使されなければならない。このことを認め得るかどうかに、私

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電子マネーの政治性とベーシックインカムの政治性に目覚める

「銀行の破綻がさらに深まれば預金封鎖の事態もあり得ます。これは1930年代の大恐慌の際に銀行を守るためにとられた政策です。しかし今日の権力エリートは、もっとひどいことを考えています。それは、通貨を全て電子マネーにして現金を廃止すると言うものです。リーマンショック以降、世界のメガバンクは事実上全て破産しています。破産の実情を通貨の大増刷、いわゆる量的緩和で取り繕っているのですが、そういう中でメガバン

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議会制国家は法秩序ではなく銀行が管理している通貨秩序に従属している

「19世紀以降の大衆民主主義、マスデモクラシーは、能動的な市民と言うリベラルエリートの虚構を解体させ、人々を受動的で制度によって調教された大衆、マスに変えるものでした。この人々のマスの調教には、普通選挙権と義務教育、マスコミが決定的な役割を果たしました。この政治の大衆化はあたかも民主化であるかのように見せかけられましたが、実際にはこれはエリートが人々を工業化に動員するための戦略でした」

「18世

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生産の時代は終わり、富の公正な分配が時代の課題になってきた

「生産から分配へと言うダグラスの議論は、時代にマッチした適切なものになってきている。資源と環境の危機で成長の限界にぶつかった資本主義の問題、特に金融資本が成長の限界を無視してきた結果、銀行への負債だけが増える負の成長の中で分配の不平等が極端になっています。生産の時代は終わり、富の公正な分配が時代の課題になってきたのです」

「環境の破壊と資源の枯渇は今や文明の存続を脅かしています。経済が成長するか

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経済的デモクラシー

「社会信用論は、銀行経済を廃止して政府が通貨を発行することとベーシックインカムの実施を主張しますが、ダグラスはこれを「経済的デモクラシー」と呼んでいるわけです。この政策によって資本が広く社会全般に分散し、国民全てが経済力を持つことになる。そうなると、商品を買うといった庶民の経済活動自体が選挙で投票するのと同じような意義を持つようになる。経済活動生活そのものがデモクラシーの表現になる。一方に経済があ

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精神的文化と物質経済の統合へ

「ダグラスは単にマクロ経済的合理性の視点でベーシックインカムを提示をしたのではありません。彼は雇用による所得、働かざるもの食うべからずという思想を正当化している人間観、労働観からの転換を主張しました。これが大変面白いユニークなものです。彼は技術者として生産と労働の現場を直に体験し、よく知っていました。そして自分の体験を踏まえて、生産はほとんど道具とプロセスの問題で、人間の個々の労働が生産に果たす役

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ダグラスのシステム欠陥是正のための3つの政策提言

「ダグラスは単に構造分析をしただけでなく、エンジニアらしく、どうしたら企業会計と銀行金融のシステムの構造的欠陥を是正できるかということで、具体的な政策提言を行っています。その提言は3つあります。まず、第一に銀行の私的信用創造が経済の歪みや不均衡の根本原因なので、政府が公益事業として通貨を発行して、利子なしで社会や企業に供給すべきであるとしています。一国の生産と消費を均衡させるに必要な通貨の量という

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お金が世界政治そのものだ

「イングランド銀行が近代のすべての銀行の原型です。その背景には国際商業の発展があったわけです。17世紀イングランド銀行から19世紀の金本位制の時代あたりまで、完全に貨幣フェティシズムに支配されたのが近代と言う時代ではないかと思います。それが20世紀に入ってから銀行業界は中央銀行の形をとってカルテルを形成し、さらに金本位制が放棄されて、貨幣は紙幣と言う法定通貨になっていた」

「その結果として、悪い

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どのようにして貨幣は共同体の抑制を超えてしまったか

「問題は、こうした貨幣フェティシズムに対する伝統的な抑制がどのような経緯で外れたかです。遠距離で商品を交易する国際的な商業の発展がそのきっかけです。国際商業は共同体の外、共同体間の商業ですから、共同体による抑制など働かないわけです。純然たる儲け本位の取引になる。その結果、貨幣が政治的制度として出現したことが忘れられて、貨幣は金銀銅などの単なる金属商品になる金属であり、それ自体で商品として価値がある

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貨幣の弊害をどう防いできたのか

「貨幣が流通するとは、社会的な協力の成果です。お互いに協力し合い、信頼し合うから貨幣は流通する。ただその中で、人々の社会的な信頼や協力にタダ乗りして、成果としての貨幣だけをつまみ食いする不届きな人間が出てくる。貨幣をたっぷり持ってさえいれば、自分は他人の世話にならなくても生きていけるはずだ、そういうかたちで自分は社会を超越していると思い込む人間が出てくる。こうして富者は傲慢になります。その結果とし

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アテネの直接民主主義は、参加するとお金がもらえるデモクラシーだった

「アテネでは貨幣は個人が自由に使える硬貨のかたちをとっていて、商品の購入や報酬の支払いに使えるものでした。貨幣は、水平型社会にふさわしく、自由人が共同して作り上げるポリスを平和裡に運営する手段でした。ですからギリシャでは他の文明におけるような身分や位階制が問題になることはなかった。ここでは社会の問題は初めから富者と貧者、持つ者と持たざる者の問題、とくに富者への借金で債務奴隷になる貧者の窮迫と無権利

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貨幣の出現

「貨幣の出現を歴史的に遡ると、古代メソポタミアまで遡ることになります。どうして貨幣が生まれたか。古代のメソポタミアで文字と数字が発明され、それによって帳簿をつけることが可能になった。これで貨幣が誕生したのです」

「経済収支というものの会計管理がメソポタミアで生まれました。経済生活の体系的な組織化が可能になるということです。」

「あくまで貨幣は、文字、数字の発明、それを契機にした国家の形成を条件

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関曠野『フクシマ以後 エネルギー・通貨・主権』

「私も非力ながら70年代までに果てしない経済成長の根本には利子の問題があるという結論には達していた。だが銀行マネーが負債として経済を動かしていることには考えが及ばなかった。ケインズ左派的に投資の社会化は考えたが信用自体の社会化は視野の外だった。利子と負債の銀行マネーを公共事業として発行された管理されたる公共通貨に置き換え、ベーシック・インカムによって生産と消費をマクロで均衡させるクリフォード・ダグ

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