お金が世界政治そのものだ

「イングランド銀行が近代のすべての銀行の原型です。その背景には国際商業の発展があったわけです。17世紀イングランド銀行から19世紀の金本位制の時代あたりまで、完全に貨幣フェティシズムに支配されたのが近代と言う時代ではないかと思います。それが20世紀に入ってから銀行業界は中央銀行の形をとってカルテルを形成し、さらに金本位制が放棄されて、貨幣は紙幣と言う法定通貨になっていた」


「その結果として、悪い意味で貨幣制度が政治化した。つまり中央銀行は、私利を図って私的に信用創造する銀行の特権を守るための政治的制度と言えるし、そのうえ租税国家を従属させている影の主権者としても政治化しています。今の銀行は国家をくまなく管理する政治的主権者であり、しかも金融資本のグローバルなカルテルの形で、特定の国ではなく、人類全体の主権者になっています。このグローバルな金融の支配が21世紀の現実なのです。」


「この問題がはっきり表面化しているのはEUにおけるユーロの危機なのです。EUのユーロにおける通貨統合は、貨幣は商業の手段に過ぎないと言う哲学の帰結です。ユーロによって各国のナショナルな通貨を廃止した結果、各国の財政は国際金融資本の利害に完全に従属することになってしまった。これが各国の国民の怒りと不満を招いている。ユーロは商業を促進する金融の道具ですが、金融と財政は同じものではない。財政の次元では、通貨は富を分配する手段の要素を持たざるを得ない」

お金はそもそも政治的なものであったという出自を知ることで、僕たちは21世紀の本当の政治的な問題を正確に捉えることができる。お金こそが最も政治的なテーマであることを多くの人が知ることが、世界が民主主義的な世界へと進む最初の一歩であり、最後の一歩であるようだ。さて、ぼくたちが進んでいく方向はどのようなものなのか。関さんの話にさらに耳を傾けよう。

関曠野『なぜヨーロッパで資本主義が生まれたのか』

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