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バカ野郎!ひとりにしないでよ。アメリカで夫に先立たれた妻のバイブル (7)

  • グリーフケア④

③他罰的欲求
他罰的な欲求とは、誰かを責めたい欲求のことで、突然死の場合、起こったことに対して誰かを責めたり、避難したいなどの欲求が非常に強いものになるといわれています。

あれ?
…この項を書きながら苦笑い。題名を見てください。『馬鹿やろう!』ですもん。たしかに怒ってます。亡くなった夫に怒ってるんだと書きながら自覚しました。1人でさっさと逝っちゃわないでよって、心の中で叫んでます。

④公判・司法システムの影響
突然死には、事故死や殺人という場合もあります。この場合、当然ですが、司法当局が絡んできます。愛する人が殺人事件の犠牲者になった時、事件が司法で裁かれ決着を見るまでは喪の仕事を前へ進めるのはとても難しく、本来なら自分を助けてくれる警察や司法システムによって、さらに傷つけられたと感じることもあります。逆に、司法が肯定的な役割をする場合もありますが、遺族にとっては苦痛です。

⑤無力感・焦憔悴・やり残し課題の出現
突然死のインパクトは、感覚や秩序の感覚を打ち砕く破壊力を待っており、遺族の内面に引き起こされる無力感は想像を絶します。この無力感は凄まじい怒りの感覚と心の底で結びつくことも多く、やり場のない怒りを誰かに向けたくなります。怒り表出をテコにして心に巣食っている無力感を克服しようとするのは、過酷な現実や悲痛に対する防衛戦略かも知れません。

どうしようもないほどの不穏・憔悴感を感じる突然死のストレスが「戦うか、逃げるかの反応」を引き起こし、激越性うつ病(agitated depresstin)を引き起こすこともあります。強いストレス状況でのアドレナリンの急上昇がこの興奮と関係していると言われています。

やり残しの課題も突然死に見舞われた遺族にとっては大きな問題となります。故人に言えなかったこと、してやれなかったこと、そうしたやり残したことが頭を駆け巡り、大きな後悔をもたらすのです。このやり残したこと、後悔の念を解消していくための道を探し求める事はとても大切な悲観過程です。

⑥理解したいという欲求
死の意味を理解したいという欲求が強くなります。どのような死においても、なぜ死んだのかという疑問を待つのですが、突然死された遺族においては、特に意味を見出したいという欲求が大きくなると言われています。深く心が傷つくと、人は意味を探し出すことによって、心の統制力を回復しようとします。理解したいという欲求の延長戦上に真の原因を突き止めたい欲求と責任を求めたいという欲求が起こるのです。

暴力的な死の場合には、曖昧な喪失と多重喪失の二つがあります。

あいまいな喪失とは戦争やテロ行為、遭難、自然災害など遺体が見つからない場合の喪失体験のことで、死の確証が得られないまま待ち続けることは、親族にとって非常にストレスフルであり、未解決の悲嘆を抱え、絶望感や抑うつ、心身症に陥りやすくなります。多重喪失は複数の身近な人や家族がなくなる場合で、残された人はその悲しみに圧倒され、喪の過程が停滞し心が凍りついてしまいます。死別の過剰負荷とも言われていますが、苦しみは想像を超えるものです。


突然死された遺族の心をここで書きましたが、愛する人の死を受け入れる作業は想像以上に難しく、その過程を理解することが癒しにおいても大切な事だと思います。

次回は、この突然死した遺族へのカウンセリングについて書こうと思います。