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工学系女子を増やすために“女子枠“設定ーあなたは理工系を選択しますか?

(2022年12月20日付 朝日新聞 「工学部入試 広がる女子枠」より)


日本の政府や教育界そして産業界も、あまりに無節操だと思いませんか?

ちょっと前まで、大学の医学部で女子受験生を不当に不合格にしていたのに、今度は工学部に女子枠を設けてまで工学系女子学生を増やそうとしている。

世界の水準を気にする日本政府にとって、OECD(経済協力機構)の示した数値はちょっと、いやかなり現状そして将来を憂うべきものだったに違いない。

日本における女性の大学入学者のうち理工系に進学した人は7%、OECD諸国平均15%を大幅に下回っている。マサチューセッツ工科大学の学士課程での女子比率は48%、東京工業大学は13%だそうだ(2022年12月25日付朝日新聞)

その上AI技術の立ち遅れも危機意識に拍車をかけたのだろう。韓国や台湾と比べても大きく水を開けられている。

さらに産業界も現金なもので、多様性のあるチームの方が高い成果を上げるということが認知されてきたり、女性が開発に加わった特許の経済価値が男性だけのチームより1.4倍高いなどという論考が出るや急に工学系女子の採用に乗り出している。

いつだってそうだけど、日本は前例主義で、決して自分から変わろうとしない国だ。周りを見回して「おっと、遅れてしまった」と気がついて、慌てて行動を起こす。

だから、その政策の中身や方針がいつも拙速で欠陥だらけだ。長期展望に立って政策策定ができない。大学入試の在り方がコロコロ変わる。学校教育の内容が十分に検討されずに変わる。英語教育など世を上げて議論が交わされている割には、いまだ大きな成果が上がっていない。

それなのに、母国語である日本語=国語教育については一向に問題にしない。国語の学習時間(週3時間)が英語(週4時間)よりも少ないって文科省は一体何を考えているのだろうか。他のいわゆる先進国の母国語はどこも週5時間である(「日本語は滅びる」と警告を発する人もいるー水村美苗氏)

日本の国家計画は視野が狭く近視眼的だと言う学者もいるが、これって農耕民族だからだろうか?(一年単位でしか物事が考えられない、とか⁈) あっちこちで混乱ばかりが目につく。

ここでまたまた思い出してしまう、文化人類学者の今福龍太氏の言葉:

〈「知」は、我々の社会を創造していく真の力であるが、その時の「知」とは「知識」(knowledge)ではなく、「知性」(intelligence)であるはずだ。

「役に立つ」知識=情報は、その社会に有用か否かの基準で判断され、実利的な目的のために使われ、体制に組み込まれ、それを支える力となるだけである。そのような「知識」では、人間の命や自然の摂理については学ぶことはできない〉

オードリー・タン氏も同様のことを言っている。
「新しい働き方には知識ではなく英知が必要になる」と。

閑話休題
この「女子枠」については、「不公平」「男性差別」などの声が上がるなか、文科省は、

「合理的理由があれば、入試において、性別や年齢などの取り扱いに差異を設けることは可能とする」

と肯定的で、奨学金の新設をして支援することも検討しているとか。さらには理工系の女子学生確保に取り組む大学には、運営費交付金などの支援をするなどとまで言っている。

当の女子学生たちには、さまざまな意見があるようだ。

反対の人は、
「そうまでして女性を増やす目的が分からない。無理に枠を作るより、理系に進みたい女性を増やす工夫の方が大事」

賛成の人は、
「理系職の女性を増やすことで、会社や社会が変わることの方が大事」

私が言えることは、国や産業界の喧騒に惑わされず、自分の意思で選択することだと思う。あくまで、それを学ぶことがその人自身にとって楽しいかどうかだ、と思う。

あのスティーブ・ジョブズが言っているように:

「あなたたちの時間は限られている。誰かの言いなりになってはならない。誰かの教えにとらわれるな。それは他人に従って生きることだ。あなた自身の内なる声を周囲の意見に埋もれさせるな。最も大事なのは、あなたの心と直感を信じる勇気を持つことだ」

Stay hungry, Stay fool❣️

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