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第15回:『絶対にデレてはいけないツンデレ』で、好意を示す言葉の美しさを感じてみませんか?

おはようございます、あみのです。今回の本は、神田夏生さんのライトノベル作品『絶対にデレてはいけないツンデレ』(電撃文庫)です。変わったタイトルのラブコメ作品が増えている中、このタイトルは初見から謎しかなかったです。だけど、読んでみると「好き」をはじめとする好意を示す言葉がどんなに美しいものなのかを実感できた作品でした。

この物語は優しい言葉に触れたい人はもちろん、ファンタジー要素もある作品なので、不思議な世界観のラブコメが好きな人にも凄くおすすめです。あと、若干ですが百合要素もあったりします。

あらすじ(カバーからの引用)

「勘違いしないでよね!あなたみたいな人、全然《好きじゃない》んだから!」
 そんな一昔前に流行ったツンデレヒロインみたいなセリフから、俺と蒼月水悠の物語はスタートした。
 常にツンツンしている蒼月さんはクラスでも浮いた存在。だけどある日を境に二人きりで話すようになって、冷たい言葉の裏に温かさが隠れていることを知っていく。本当は優しい子なのに、どうして彼女は誰にでもデレないのか?それは、蒼月さんが抱える不思議な過去が関係していて……。
 ———これは自分を偽る少年少女が、好きな人に「デレる」までの、恋のお話。

感想

ヒロインの蒼月さんは、シェルと名乗る魔法使いによって家族に関する願いを叶えてもらった代償として、好意を示す言葉を口にすることを封じられてしまいます。そのため彼女がそのような言葉を口にしてしまうと、「好き」という言葉は「嫌い」になってしまうように全て反対の意味の言葉に変わってしまいます。

この呪いが学校での人間関係も邪魔してしまい、クラスメートと上手に話すことのできない蒼月さんのことを面白がる生徒もいるくらいです。主人公の夜船は、そんな彼女を面白がるクラスメートに巻き込まれたことによって、蒼月さんはどうして人と話すことが苦手になってしまったのか気になるようになります。更に彼が学校で見つけた日記帳が、蒼月さんの秘密を知るキーアイテムにもなっていきます。

夜船が発見した日記帳には、卒業生であろう人物とシェルの交流の様子が書かれていました。(百合要素はこの辺)夜船は蒼月さんのことを知るため、蒼月さんは自身にかけられた呪いを解くヒントを得るため、日記帳の持ち主を探すことになります。そこで2人は、日記帳の内容をモチーフにした文化祭用の演劇を作ることにしました。

演劇作りを通して少しずつ見せていく優しい心の蒼月さんの姿が私はとても印象に残っています。本当に優しい子なだけあって、呪いのせいで正直な気持ちを伝えられない彼女の苦悩には読めば読むほど辛い気持ちで一杯になりました…。そんな彼女を苦しめていた呪いの存在に気付いた夜船の前で、素直な気持ちを込めた「嫌い」を伝える蒼月さんを見た時の辛い感情は最高潮でした。

また、「好き」という気持ちを伝えられないことで悩んでいたのは蒼月さんだけではありません。実は夜船も前の学校でのトラウマが原因で、オタクである自分を隠していました。作中にて、漫画研究会の男子生徒が描いた絵を夜船が心の中で絶賛するシーンがありました。自分が演じているキャラが邪魔して、男子生徒に絵の感想を言えなかった彼もこれはこれで辛いと思いました。

ここはちょっと本編から離れますが、あとがきでの作者の言葉でとても素敵だなと思った部分がありました。

誰かを救ったことがありますか、と尋ねたら、多くの人は「いいえ」と答える気がします。
だけど、何か作品に対して「好き」とか「面白い」とか言ったことのある人は、それだけでその作者を救っていると、私は思います。

私は面白い本を読んだ時、noteで感想を書いてみたり、時には手書きのファンレターという形で作家さんに感謝の気持ちを伝えたりすることも読書の楽しみのひとつだと思っています。今も今作への「好き」という気持ちを込めてこの記事を書いています。これからも面白かった作品の感想を書いていき、多くの人に「好き」を伝えることを大切にしていきたいです。

さて、本編の感想に戻ります。優しい言葉を求めていた時にこの物語と出会うことができてとても嬉しかったです。厳しい言葉が飛び交うと辛い気持ちになってしまう、一方で優しい言葉が飛び交えば誰もが幸せな気持ちになれることを証明してくれた良作だと思います。

もし続きがでるのであれば、真鈴をメインにしたエピソードが個人的に読んでみたいですね。蒼月さんを面白がっていたひとりでもあり、私も苦手なタイプの子でしたが、真鈴にも蒼月さんと同様いろいろと複雑な事情があるそうで、彼女を取り巻く背景をもっと知れたらまた見方が変わりそうなキャラクターだと思いました。

長い感想をここまで読んで頂き、本当にありがとうございます!これからも今作から得た好意を示す言葉の魅力を思い出しながら、私にとっての「好き」をこの場所で届けていきます。

おまけ

公式の朗読動画も雰囲気が良くておすすめなので、関心を持った方はぜひ聴いて頂きたいです!


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