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バラエティ豊かな謎に出会える『11文字の檻』

青崎有吾さんの短編集『11文字の檻』(創元推理文庫)を読みました!

この短編集は、表題作+いろんな出版社のアンソロジー等収録作で構成されていました。どれもタイプが異なる作品なので、青崎さんの作品をまだ読んだことのない人でも推し作品に出会いやすい短編集となっていました。

以前読んだ短編も何本かあった一方、田中寛崇さんの画集に収録された短編や小学館文庫のショートショートは気になっていたけど未読だったので、この機会に読めて良かったです。

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まず刑務所からの脱出を賭けた暗号探しに挑む男たちの推理が描かれた表題作。ゲームのようなストーリーと縋田すがた&飛井とびいの主要人物2人のコミカルな会話が物語を退屈に感じにくく、短編ではありますが長編のような満足感のある作品でした。

収録作の中で個人的におすすめしたい作品が、実際の出来事をテーマにした『加速してゆく』です。
この短編は『平成ストライク』という平成に起きた出来事を様々な作家さんがえがいたアンソロジーに収録されていたもので、青崎さんはJR福知山線脱線事故をテーマに選んでいました。

「元号が変わることで、平成の闇を風化させたくない」という作者の思いが感じられる短編で、ミステリー要素を交えながら出来事を知らない世代の読者にも事故の概要や社会の闇をわかりやすく説明していました。

私も事故の当時はまだ小さかったので、JR福知山線脱線事故という平成の出来事がどれほど衝撃的だったのか、この短編を読んで初めて知ったこともたくさんありました。
令和を生きる私たちは、平成という時代が残した課題とどう向き合うべきかを考えさせられる傑作短編でした。

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今作はバラエティ豊かな短編だけでなく、青崎さん自身による各作品の解説も見逃せないです。各作品に込めた思いや登場人物にまつわる小ネタを知ると、収録作を何倍も深く味わうことができます。
また、一部の収録作で登場したキャラクターは今後の作品にも登場させたいと考えているそうで、それはそれでいつか読んでみたいものです。

青崎さんは長編・シリーズ作品も魅力的な作品が多いですが、今作に収録されていた短編もまた異なる個性を感じる内容が多く、どの作品もとても良かったです!

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あみの
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