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第51回:短くも濃厚な物語たち

こんにちは、あみのです。今回の本は、河出文庫の『5分後に涙が溢れるラスト』というアンソロジーです。アンソロジー作品の感想はnoteでは初めてですね。

この本は、同出版社から単行本で出ている「5分シリーズ」の傑作選とのこと。読者から人気の高い作品を文庫という形で再集録しているそうです。お試し感覚でこのシリーズの面白さと出会えるのが嬉しいですね。

普段は長編を好む私ですが、たまには違う形の小説から刺激が欲しくなり、この本を手にしてみました。

短時間で読めてしまう作品ばかりですが、長編小説を読んだのと同じくらいに濃厚な物語にもたくさん出会えました。最近、ちょっと読書から離れている人にも凄くおすすめしたい1冊です。

作品概要(カバーからの引用)

小説投稿サイト「エブリスタ」に集まった200万作の中から、珠玉の作品をまとめた短編小説集。毎日忙しい今だからこそ、時にはガツンと魂を揺さぶられたいときがある。そのためには5分あれば大丈夫。短い時間でも、人生変わっちゃうぐらいの衝撃がここには詰まってる。最高に感動する作品13作を集めた文庫シリーズスタート!あなたのココロに、5分間のきらめきを――

感想

「泣ける」をテーマにしたアンソロジーだったので、読む前は「人の死を扱った話が多いのかな?」と思っていました。

13個も物語があるので、そういった作品もなくはなかったです。でも、それよりも登場人物たちの「希望」や「絆」を感じる心温まるお話の方が圧倒的に多いなと読んで思いました。

なので、個人的には「涙が溢れる」というよりは、日々を楽しむための元気が貰える物語という印象をこのアンソロジーには持ちました。

収録作品の中には、展開に意外性のある作品もあって、長編小説と同じくらいの内容の濃さを味わえたものもいくつかありました。

『もし最愛のあなたとの約束を守ったとしたら』『彼女の嘘と俺の隠し事』はその代表的な作品だと思います。この2つの作品で描かれていた男女の「愛」に溢れた仕掛けが私はとても好きでした。スターツ出版文庫などの青春系の小説が好きな人には、きっと刺さる作品たちだと思います。

また、個人的に最も刺さったのが、『隣の家のホームレス』という作品です。この作品は、小学生の目線で物語が展開されます。

主人公の家の近所に住むホームレスのおじさんとの温かな交流と、おじさんに偏見を持つ大人たちの物語。物事を先入観で判断するのではなく、真実を知ることも凄く大事だということを簡潔にまとめていた、見事な短編だと思います。まずはこの短編だけでも読んでほしい。

短時間で、日常や記憶の中にある「きらめき」を感じることができる素敵なアンソロジー。きっと読んだ人の心にハマる物語に出会えるはずです。

「感動」以外のテーマの「5分シリーズ」作品も今度読んでみたいと思ったし、河出書房以外の出版社でも似たような短編集をよく見るので、読み比べてみるのも楽しそうだなと思いました。

(猛毒と誰も死なない涙が面白そう…)

今回も感想を読んで頂き、ありがとうございました!

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